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第9話 なんでオレが悪者に?
女の子に手を上げるのは、男として最悪。
そう父に教え込まれ、強制的に排除するコトを躊躇っていたオレに、森野が萌を引き剥がす。
「触って欲しいなら、俺が触ってやるっ」
引き剥がした萌の身体を跨いだ森野は、むにゅりとその豊満な胸を掴んだ。
「別に触ってほしかった訳じゃないよぉ~」
ゲラゲラと笑う萌と、ふんっと鼻息を荒くする森野。
オレを蚊帳の外に放り、イチャつき出す2人に、溜め息が漏れる。
ふと逸らせた瞳に、森野が放ったスマートフォンが映り込んだ。
あっ!!!
焦り手にしたスマートフォンを耳に当て、声を放った。
「すいませんっ、鞍さ……」
オレの耳には、何の音も返ってこない。
耳許から離し見やった先は、ロック画面。
鞍崎さんとの通話は、途切れていた。
「もおー。お前らのせいで、電話切れてるじゃねぇかよっ」
苛立ちのままに吠えるオレに、萌も森野も動きを止め、きょとんとした瞳を向けた。
「どうせ毎日、会社でイチャついてんだろ?」
首を傾げながら立ち上がった森野は、オレの肩を、ぽんっと叩いた。
「電話くらいで、ごちゃごちゃ言うな」
まるでオレが悪いかのように、我儘を窘めるかのように紡がれる森野の声。
え?
なんで、オレが悪いみたいになってんの?
納得のいかない顔をするオレに、萌が口を開いた。
「ごめぇん。だって、育ちゃんがあんまりにも幸せそうでさぁ……腹立つじゃん?」
ねぇ?と萌は、森野を見やり、首を傾げた。
森野は尤もだと、首を縦に振る。
「腹立つってなんだよ……」
呆れるように声を放つオレに、萌の後ろに回り込んだ森野は、その身体を抱き締めるように腕を回し、ぽよんぽよんと胸を揺らす。
「こんな魅惑のおっぱいを前にして、平然としていられるお前を俺は信じられんっ」
未知の生物にでも出会ったかのような顔でオレを見やる森野に、萌は、くるりと180℃身体を回した。
森野の首に腕を回し、俺に尻を突き出して見せる。
「森野は、お尻も好きだけどねぇ」
ふりふりと誘惑するように腰を振る萌に、頭を抱えた。
「オレは、ぽよぽよした尻より、きゅっと上がってる方がいいんだよっ」
言ったそばから、疲れが襲う。
なに言わせんだよっ……。
結局、森野と萌が帰ったのは、日付を跨いだ頃だった。
鞍崎さんに折り返しの電話をしようかと考えたが、寝ていたら申し訳無い。
明日になれば、会社で話もできるだろう。
オレはいつも通り、鞍崎さんと2人きりの時間が過ごせるように、朝イチで会社に出社した。
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