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第14話 小さな希望は塵となる
昼時。
あと2時間ほど走らないと、目的地には着かない。
サービスエリアに寄り、昼食を取った後、車の中から会社に電話を掛けた。
販促マーケへの直通電話だ。
売り込みを行う地域のマーケティング結果を聞くという大義名分を掲げ、鞍崎さんの声を聞こうと思った。
直通電話であっても、ナンバーディスプレイには、会社支給のオレの携帯番号が表示される。
朝に比べれば鞍崎さんの忙しさも緩和されたのではないかと、昼休憩中なら構ってもらえるかもとの期待を乗せ、電話を掛けた。
「はい。販促、山南です」
電話口から聞こえたその声は、鞍崎さんのものじゃなかった。
期待した声が聞けなくて、思わず落胆する。
「網野です。…鞍崎さん、居ないんすか?」
残念そうな音にならないように注意しつつも放った言葉に、電話の向こうからは、少し不思議そうな声色が返ってくる。
「居るよ。なんで? オレじゃ不満?」
山南さんは、冗談混じりに、揶揄うように言葉を放つ。
「そんなこと言ってないじゃないっすか。マーケティング結果知りたかったんですけど…」
用意しておいた理由を、平静を装い伝えるオレに、山南さんからは、納得するような音が返ってくる。
「あー、その辺なら鞍崎の担当だもんな。代わろうか? って、ちょ、鞍崎、……ったく」
電話向こうから聞こえた山南さんの言葉に、無意識に溜め息が漏れてしまった。
確定だ。
忙しいからじゃない。
オレ、鞍崎さんに完全に避けられてる……。
「北? 南?」
山南さんの予想外の問い掛けに、瞬間的に戸惑う。
今から行く場所は、地域単位でざっくりとした結果が戻ってくると思っていたが、予想以上に細分化されているようだ。
「あ、え、北っす」
「ここまで、まとまってんなら数分だろうが。 話してから行きゃあ良いじゃねぇか……」
カラカラとマウスで画面をスクロールしているであろう音と共に、山南さんの文句が届く。
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