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第15話 ボキボキに折れた心

「北側は、保守的な顧客が多くて、定番の方が売れるって。新作を売り込むには不向きだってよ」 「そうっすか。ありがとうございます」  何となく予想はできていた。  でも、そのマーケティング結果で、確信を得る。 「礼なら鞍崎に言え。まとめたのあいつだから。…ま、伝えとくわ」  よろしくお願いしますと、山南さんとの通話を切った。  平気なつもりだったが、避けられている事実に、胸の奥がずぎりと痛む。 「はぁーっ」  思わず、車の天井を見上げ、大きく溜め息を放った。 「何したんだよ~、オレぇ~っ」  原因のわからない鞍崎さんの怒りに、昨日の夜から今朝までのオレに問い掛ける。  答えなど、返ってくるはずもない。  悶々としたままに、なんとか仕事をこなし、宿泊するホテルへと辿り着いた。  人の見かけの小さな変化には気付けても、鞍崎さんの苛立ちの原因に気付けない。  …ダメダメじゃん。  考えていても、鞍崎さんが怒っている理由は掴めそうもない。  予想したって、考えたって、その理由を見つけられないなら、直接聞いた方がいい。  全力で謝ろう! よし!  自分に非はないかもしれないなんて微塵も思わない。  鞍崎さんがオレを無視するに値する何かをやらかしたのだとしか考えられない。  プライベートのスマートフォンに鞍崎さんの番号を表示し、発信をタップする。 『お客様のご都合でお繋ぎすることが出来ません』  耳に当てた瞬間に、流れ込んできたアナウンスの声に、動きを止めた。  う、わ……。  これ、着信拒否じゃん。  心がボキボキに折れ、立ち直れないオレは、そのままホテルのベッドに沈んだ。

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