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第21話 傷口に塩

 しょんぼりと肩を落としながら、ゆるりと頭を上げた。 「何したの?」  呆れたような声を放ちながら、ユリさんはオレにビールを差し出した。 「わかりません……」  愚図(ぐず)る子供のような声を放つオレに、ユリさんは、困惑気味に言葉を紡ぐ。 「何したかもわかんないなら、私にも何もできないよ?」  首を傾げるユリさんに、コトの顛末を掻い摘まんで説明する。  日曜の夜に掛かってきた電話がいつの間にか切れていたコト。  翌日に用件を確認しようとしたら、避けられ始めたコト。  日曜の電話が、騒がしくて嫌だったんだとは思うけど、そんなコトで、こんなにキレたりしないだろう。  何がそんなに鞍崎さんの怒りを買ってしまったのか、俺には全く見当がつかない。 「それ、マジで寂しかっただけなんじゃない?」  ユリさんの言葉に、瞳を向け、首を傾げる。 「たぶんだけど、用事なんかなくて、純粋に育ちゃんの声、聞きたかっただけかもよ?」  衝撃の発言に、オレは、きょとんとユリさんを見上げてしまう。 「見栄っ張りな大希が、素直に『声を聞きたかった』なんて言えると思えないし」  ふふっとユリさんは、可笑しそうに笑った。 「恥ずかしくて怒っちゃったんじゃないの? 大希、普段は素っ気ないけど、実は結構、寂しがり屋だから」  ユリさんのクスクス笑いが止まらない。  マジで?  オレの声が聞きたかっただけとか…、可愛すぎない?  鞍崎さんの可愛さに、ぶわっと頬が熱くなる。  思わず、瞳を開き、片手で口許を覆った。  冷めていそうな見た目に反し、意外と甘えたな鞍崎さんが可愛く思えて堪らない。  ん? 待てよ?  そうなるとオレ、傷口に塩塗った感じなんじゃね?  何回も『用件は、なんですか?』なんて聞かれたら、ウザくもなる…。  そりゃ、怒るよな……。

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