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第24話 似たもの同士? < Side鞍崎

「育ちゃんと喧嘩したんだって?」  ――ゴッ  ユリさんの言葉に思わず、額をカウンターに打ち付けた。 「喧嘩……」  引くに引けなくなっただけだ。  あの甘い匂いが、女のものではないとわかった。  でも、あれから何の連絡もしてこない網野に、愛想が尽かされたのかもと感じていた。  こちらからアクションを起こし、やっぱり女の子の方が可愛いし、…なんて言われたら、俺は立ち直れない。  ……フラれるのが怖くて仕方ない俺は、前にも後ろにも進めない。 「変なところ似た者同士よね……」  ぼそりと放たれたユリさんの言葉は、俺の耳には届いていない。  ユリさんの手が、オレの頭をよしよしと撫でる。  その手の感触に頭を上げた俺に、ユリさんは、困り顔で首を傾げる。  俺の頭の中は、答えの無い問題で、もやもやだ。 「だって、どうしろってんだよ。性別なんて変えようがねぇじゃねぇか」  拗ねるように吐いた言葉に、ユリさんは、不思議そうに首を捻った。 「性別? 見掛けだけなら、いくらでも変えられるけど?」  何を言い出したの? と言わんばかりに、ユリさんは瞳を瞬く。  両手を開き、こんな感じに変えられますけど? と、自分をアピールする。 「俺は女になりたい訳じゃねぇし……」  俺はたぶん、揶揄われただけで。  網野は、男になんて興味なくて。 「あいつ、……実はノンケなんじゃねぇの?」  ぐるぐる回る迷子の思考は、網野のノンケ説に辿り着く。  ――バンっ  トイレの扉が壊れそうなほどに荒い音を立て開かれた。  音に驚いた俺は、真ん丸な瞳を扉へと向けた。  トイレから飛び出してきたのは、額を赤くした網野だった。

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