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第25話 俺の落ち度
「俺は、そのままがいいですっ!」
驚きのあまりに固まったままの俺は、近寄ってきた網野に、ぎゅっと両の二の腕を掴まれた。
しっかりしてくださいとでも言いたげに、網野の両手が、俺を全力で揺さぶってくる。
「俺、女になんて興味ないですっ。知ってますよね?」
何を言い出すんですか? と、責めるような網野の瞳が、降ってくる。
興味が、なくなったから。
俺のコトが、どうでもよくなったから。
切れた電話にも何の返信もしなかったんだろう?
「なんで連絡、寄越さなかったんだよ?」
いじけ拗ねた言葉を放つ俺に、網野はきゅっと眉根を寄せた。
「たしかに、なんの用事もなかった。勝手に電話を切ったのは、俺が悪い。でも、あんな変な切り方したんだから、怒るなり、謝るなり、なんかの行動は起こすもんだろ?」
喋れば喋るほどに、放っておかれたコトへと苛々が、じわじわと心を侵食していく。
「放置ってなんだよっ」
ぼそりと放った最後の言葉に、網野は、心外だと言わんばかりに、反撃の狼煙を上げた。
「着信拒否したの、鞍崎さんじゃないっすかっ」
むすっと頬でも膨らませそうな勢いで、網野が怒鳴った。
……ぁ。
鳴らない電話にやきもきするのが嫌で、網野の番号を着信拒否に設定した。
完全なる勢いで、だ。
……解除すんの、忘れてた。
いや、でもっ。
「夜中までは、してなかったんだ。鳴らない電話気にしてやきもきしたくなかったんだよっ」
ふいっと顔を逸らせる俺に、腕を掴んでいた網野の手から、ゆるりと力が抜けた。
「あいつらも居たし、うるさいの嫌だと思って……」
“あいつら”の単語が、心に引っ掛かる。
凪いできていた感情が、じわじわと波風を立て始めた。
「あいつらも居たしってことは、…友達の前では、俺に電話するコトも憚れるってことだろ?」
ふっと逃げていった呼吸に、拗ねた言葉が口を衝く。
「そうだよな。俺の順位なんて、友達よりも下だよなっ」
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