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第27話 蚊帳の外に放られる
「喜んでた? 何、言ってるんすか!?」
網野は、俺の言葉の意図が掴めず、眉根を寄せる。
「もえちゃんだっけ? その子のおっぱい揉んでたんだろ? 気持ち良さそうな声出してたじゃねぇかっ」
思い出せば出すほどに。
言葉にすればするほどに。
怒りが、どんどんと増していく。
俺には触れようともしないクセに、女の子には喜んで触りやがってっ。
「違いますって! あいつら、俺がゲイだって…、男にしか欲情しないって、知ってますもんっ。おっぱい掴ませて、本当に反応しないんだって、ここ掴んで笑ってたんですからっ」
股間を指差した網野は、くぅっと悔しそうな声を上げた。
「男ならわかるでしょ。急に、掴まれたら、変な声も出ちゃうでしょっ?」
共感を求める網野の言葉に、俺の眉間の皺は、深いままだ。
「確かに、わかんなくねぇよ。でも、おかしいだろ」
イライラした感情のままに言葉を紡ぐ俺に、網野は険しい顔をする。
「もし俺が、同じコトされて、同じようにあんな悩ましい声出してても、お前は何とも思わないのかよ? お前は平気なのかよ?」
うぐぐと唸るような音を立てた網野の瞳には、みるみるうちに涙が溜まった。
「嫌、です……」
ほらな…と、勝ち誇ったような瞳で見やった俺は、言葉を足した。
「俺には聞こえてたんだよ。お前がもえちゃんって子のおっぱい揉んだのも知ってるし、エロい声出してたのも知ってんの。そんなの聞かされたら、男より女の方がいいって思うに決まってんだろ。それが普通なんだからっ」
捨てるように言葉を吐いた。
意図せぬ疎外感が、胸に飛来する。
―― 普通……
自分で放った言葉なのに、俺自身が、茅の外へと放られた気がした。
自分で口走っておき、チクリと感じた胸の痛みに、顔を顰めた。
「普通って何ですか?」
苛ついた声を放ったのは、網野だった。
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