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第28話 なんでそうなるんだよ!?

 歪んだ顔のままに見やった網野の表情は、何のつもりだとでも言いたげな不服顔だ。 「そりゃ異性を好きになるのが多数派ですけど、同性への好意だって好きって気持ちは一緒です。多数派じゃなきゃいけないなんて決まりはどこにもないです。恋する気持ちは、一緒でしょ」  何を馬鹿げたコトをいっているんだと呆れるような声を放ち、網野は俺の顔を覗き込む。  俺の概念を、世間の目を、網野は鼻であしらう。  怖いもの知らずの、自信しかない網野の態度に、胸に刺さったトゲが、じわりと溶ける。  俺の隣に腰を下ろした網野は、俺の手を取り、きゅっと握った。 「オレは、鞍崎さんが男だろうが女だろうが性別不明だろうが…、たとえ、地球外生命体だったとしても、好きなんですっ。誰よりも何よりも鞍崎さんがいいんですっ」  熱弁を振るう網野に、怒っている意味がわからなくなってくる。  握られる手から、じわじわと安心感が広がっていく。 「あーっ!」  二の句を継げず黙っている俺に、唐突に網野が吠えた。  驚き見やる網野の顔は、苛立ちを溢れさせる。 「俺、あいつらと縁切りますっ。友達やめるっ」  叫んだ網野が、突如、縁切り宣言を放った。 「待て待てっ。なんでそうなんだよっ」  急に放たれた言葉に、俺は狼狽える。 「だって、鞍崎さんと拗れたのだって、(もと)を正せば、あいつらの悪ふざけが原因じゃないっすか」  俺の手を放った網野は、ジャケットのポケットからスマートフォンを取り出した。  俺は慌て、その手を掴む。 「そんなコト言ってねぇっ。ほんと、お前はっ。なんでそんなに端的なんだよ?!」  焦りながら放つ言葉に、網野は、唸り声でも上げそうな顔で、俺を睨む。  なんで俺が睨まれてんだよっ。  俺、悪くないだろっ。  スマートフォンを掴む網野の手を握る俺の手。  ぎゃあぎゃあと喚きながら、俺の手を引き剥がそうと、網野は暴れる。 「鞍崎さんが1位だからですっ。2位以下なんて、ドングリの背比べですからっ。どうでもいいからですっ」

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