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第29話 寂しがり屋な大型犬
あぁ、もうっ。
悪かったよ、俺が悪いっ。
順位なんて持ち出した俺が悪かったよっ。
あっちこっちに振られる網野の手を放さないように必死な俺。
「俺が1番なのは、わかった。お前が俺を好きなのも、理解したっ」
“お前は俺が好きなんだろう”なんて言う日が来るとは……。
まるで自意識過剰のナルシストじゃねぇか…。
自分の発言に、軽くアッパーを喰らっていた俺の目の前では、網野が頭を横に振るっていた。
あちらこちらへと動かされていた手が膝の上で止まっている。
軽く息を上げながら、疑問符の浮かぶ瞳を向ければ、じとっとした視線を浴びせられる。
「“そのまま”が抜けてますっ。俺は、そのままの鞍崎さんが好きなんですっ」
ふんっと力一杯言い切った網野の顔が、また急激に萎れていく。
「だから、無視とか着拒否……やめてください」
うるうると瞳一杯の涙を溜めた網野は、ダメ押しとでも言うように、言葉を追加した。
「オレ、寂しくて死んじゃいます……」
ウサギかよ……。
いや、犬か?
くぅ~んと、効果音が聞こえてきそうな網野の顔。
まるで、身体はでかいのに、寂しがり屋な大型犬だ。
なんだよ、この罪悪感……。
寂しそうに見詰めてくる網野の瞳に、受ける必要のない罪悪感が、じわじわと攻め入ってくる。
「悪かったよ」
落ち着いたスマートフォン攻防に、そこから手を離し、網野の頭をぽんぽんっと叩いた。
なんで俺が謝ってんだよ…。
腑に落ちないのに折れた自分。
謝るのは網野の方だと思うのに、気づけばいつも俺が謝罪している。
俺が網野に勝てる日なんて、永遠に来ないんだろうな……。
なんだかんだと俺は、いつまで経っても網野に勝てる気がしない。
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