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第2話 双子の兄
先月、三度目のゴミ掃除に参加したときのことだ。
「お疲れさま、志郎君。司君を最近見ないけど、どこか旅行でも行ってるの?」
ご近所同士で片付けていたとき、詮索好きな隣人に、それとなく探りを入れられた。
「ええ、そんなところです」
当たり障りのない返答をしたが、司の失踪をいつまでも隠し通せるはずもない。頭が痛くなった。
志郎は、両親とできる限りのことをした。司の親しい友人に聞いてみたり、『探しています』という貼り紙を作ったり、ネットで呼びかけてみたり。最終的には捜索願いを警察に提出した。
それでも、司の行方は掴めなかった。
(どこに行ったんだよ、司)
雑草が立ち枯れ、ひとけのない空き家が目に入る。もしかして、この家に潜んでいるのではと何度も家の中を覗いたが、だれも住んでいる気配はなかった。
司の部屋は、母が綺麗に整頓して、いつでも持ち主が帰って来るのを待っている。二人で過ごした勉強部屋に一人きりで座っていると、今まで一緒に笑いあったことがすべて幻のように思えた。
司が自主的に家を出たとして、なぜ志郎に「一緒に家を出よう」と言ってくれなかったのだろうか。
(俺の存在は、司にとって大切じゃなかったのかもな)
その結論に至ったとき。
「志郎」
自分を呼ぶ、聞き慣れた声がした。自分の声を録音したような違和感を覚える。
顔を上げると、空き家と逆方向の道から志郎の片割れが現れた。夕暮れの逆光のせいで顔に陰がかかり、表情までは読み取れない。
志郎は大きく息を吐いた。
「司……。帰ってきたのか。今までどこにいたんだ?」
「二つ先の駅そば。バイトで忙しくて。もっと驚いてくれるかと思った」
同時に、司が段差のある場所から空き家側の地面に飛んで来て、着地した。いったい、いつから居たのだろう。
「さんざん探させておいて、なに言ってるんだ。それに、自分と同じ顔を間違えるはずないじゃないか」
「そうだな。ただいま、志郎」
トンと肩を押され、耳元に息を吹き込まれる。
「久しぶりに会えたのに、冷たいな。俺はお前のことを思って何度も抜いたっていうのに」
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