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第7話

 そして実際週末に出かけた結果。 「はしゃいで熱出すとか……」  ベッドで伏せる颯吾を見ながら、俺は苦笑してため息をついた。  颯吾の車で出かけ、それぞれの買い物を済ませてご飯を食べて戻ってきた後、颯吾の顔が赤いのに気づいておでこに手を当てれば思った通りなかなか熱く。仕方なく荷物を置いてから颯吾の家に上がり込んだ。  段ボールだらけの家は必要最低限の荷物だけが開封されていて、まだ片づけが済んでいない状態だった。この様子だと必要なものを見つけるだけで苦労しそうだ。むしろ家から持ってきた方が早いだろう。 「ほら、ちゃんと寝ないと」 「やだ。翠がせっかく俺の家にいるのに」 「やだじゃない。ちゃんと治さないと次は高熱出すんだから」  とにかくいいから寝ておけと言い置いて一度家に帰ろうとする俺の手を掴んで離さない颯吾の熱いおでこを軽く叩く。  実を言うと颯吾は昔からよくこういうことがあって、言うなれば遠足の日の夜に熱を出すタイプなんだ。そしていつも次の日けろっと治るか高熱を出して寝込むかの二択に終わる。大人しく食べて薬を飲んで温かくして寝ればなんてことはないのに、大丈夫と言い張って次の日に寝込んだことが何度あったか。 「子どもじゃないんだからわがまま言わずに安静にしてなさい。それができたらご褒美にアイス買ってあげるから」 「子ども扱いじゃん」  笑う颯吾を布団の中に詰め込んで家に戻り、とりあえず必要そうなものをかき集めてから再び颯吾の家に戻る。  薬を飲ませて冷やして、後はただ寝かせるだけ。それが実は一番面倒で、結局は帰らないからという約束で一晩泊まってついていることになった。とはいえやることはそうない。  様子を見て、ちゃんと冷えているか確かめて、布団をかけてやるくらい。昔から一緒の看病未満の方法だ。  大人になったとはいえ寝顔はそれほど変わらないガキっぽさで、その光景がなんだか懐かしい。あの頃は良かったなと昔を懐かしんで、その寝顔につられるようにうとうとしていたらあっという間に朝になってしまった。  窺い見た颯吾はすやすやと眠っていて熱も下がったようだし、朝ご飯に軽く食べられるものを作って帰ろう。元気になってもまだ颯吾の家にいたら、また面倒なことになりそうだし。  それに今受けている仕事もあらかたできているし締め切りまでまだ余裕があるけれど、次に書くもののために資料集めもしたいし勉強もしたい。そのためには一度ちゃんと寝て体調を整えないと。 「まずいな。ちょっと熱っぽい」  部屋から出るなりふらついて、キッチンまで辿り着かずに途中のソファーによろけるように腰を下ろす。看病している方が次に具合悪くなるなんて、物語の中でよくある展開じゃないんだから。使い古されて忌避したくなるようなあるあるを自分で再現してどうする。  それにしたってだるい。寝不足は慣れているけれど、それとは違う気だるさにおかしいなとひじ掛けに頭を乗せるように体を倒した。本格的に熱でも出てきたのか、だるくて体に力が入らない。 「翠……?」  その時颯吾の声がして、重い頭を上げてそちらを見る。  どうやら熱は引いたらしい颯吾が起きてきて、驚いたように俺を見つめている。傍にいると思っていた俺がここで寝ていて驚いたのかもしれない。 「ごめん、颯吾。ご飯ちょっと作れな……」 「なあ、この匂い」  ちょっと家に帰るねと断ろうとした俺の言葉を遮り、颯吾が熱に浮かされたような足取りでソファーへとやってきた。戸惑うような視線に含まれた熱が、違和感を生む。

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