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第11話(R18)

「よとぎ……」  一瞬、胤は剤に何を言われたのか、理解できなかったが、すぐに気持ちを切り替えて、「分かった」と答える。  すると、今度は剤の方が慌てた。 「分かったって……そなた……」 「夜伽ということであれば、まだ日が高い故、また夜に出直そう。今宵にこの庵で良いか?」  胤は店の方へは行かず、剤の庵の裏口の方へ足を向ける。  夜伽の相手を希望する。  という何ともふざけた願いに、「分かった」と返す胤の美しい声と美しい姿。  それに対して、「戯言だ」と言うことも、剤にはできた。  だが、剤の唇から零れたのは 「待て、今宵は月が満ちる。朔の日に来てはくれぬか?」  という別日への提案だった。  そして、半月が経ち、夜伽を所望した朔の日が来る。  朔の日。つまり、満月から徐々に月が欠け、月明かりの乏しい新月の日。  剤の庵には六角錐の行燈を携えた胤がやって来た。 「行燈はそこへ置いて、火を落としてくれぬか」  剤は胤へ裏口近くにある台へと載せ、火を消すように指示をした。  灯りが1つだけついている暗めの庵には行燈の灯りでさえも明るく、剤の姿がはっきりと見えてしまう。どうやらいつも纏っている黒いローブではなく、白い寝巻きではあるようだが、黒い頭巾と包帯はそのままだった。 「寝巻きと、それと、頭巾と包帯も解いても?」 「あまり注視してくれぬならな」 剤はそう言うと、自分の身の一切を胤に委ねる。 胤の指先はいつもの苛烈さはなく、店で並べる商品を扱う以上に、繊細に剤の頭巾と包帯を解いていった。 「随分と醜かろう? まぁ、これでも、薬師の端くれ。独自にこしらえた薬で、ここまでは治した」 「薬で?」 「ふふ、だが、焼かれる前はなかなか色男で町娘や若い衆の間では通っていたからまだまだ元通りとはいかぬがな……」  剤は胤に笑いかけて見せる。  高い鼻に薄い唇はどことなく品があることから焼け爛れているとは言え、美丈夫と称しても差し支えない胤と比べても、引けを取らない美しい男だった。 「確かに美しい……」 「戯言を……」  胤の呟きに冷ややかに笑うと、剤は寝所に用意していた漆塗りの箱を開く。一対の丸薬と張り型が箱から覗き、胤はそれらの詳細を聞いた。 「この薬を飲めば、どちらもおなごでなくとも、交じることができてな」  老廃物を洗浄し、腸壁を濡らす丸薬と、勃起を促す丸薬と、腸壁を濡らした方の入口をこじ開け、拡げるために張り型を使うらしい。

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