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第12話 胤剤(R18)
「さて、我はどちらでも良いが、希望はおありかな?」
剤は言うと、勃起を促す丸薬の方を指で遊ばせる。
そういえば、剤は胤に相手を、とは言ったが、胤に抱かれたいとも、胤を抱きたいとも言わなかった。
剤は経験豊富そうであるのに対して、胤は20歳を越えても、抜き身の双剣、それも切っ先のような性分だった故に、誰とも関係を持ったことがなかった。
「貴殿が手で弄んでいる方をいただこう」
胤は剤に告げると、剤は丸薬を胤の口の中へと入れる。
苦いような、何とも呼べない味が胤の口の中を通りすぎると、程なく下半身の方へ血液が黙っていくような感覚に襲われる。
「その反応だと我に入れなさるということかな? 今からなら遅くない。知り合いの遊女を呼んで、ここで契るのでも良い」
などと言うので、胤は剤の寝巻きをまるで剥ぐように荒々しく取り去った。
「この後に及んで、貴殿も人が悪い」
これから、どのようにすれば良い、と胤は剤に問う。
思えば、この世界に来る前から胤は憎き薬師である剤の虜になっていたのかも知れない。
奥方や絢の字を名に持つ三美女も美しいが、目の前に横たわる男の方が抗いがたい程、美しく、胤としては抱きたかった。
「では、張り型を、濡らして、我に、挿れてくださらぬか?」
いつの間にか、服用していた丸薬によって、吐く息も絶え絶えになった剤は股を開いて、尻たぶを左右に引っ張り広げる。
すると、胤は張り型を口に含み、唾液が滴る張り型を剤へと挿れた。
「うぅっ……」
胤の指先は初めて巻子を扱った時よりも丁寧にゆっくりと剤の腸内へ張り型を進めていく。
「ああぁ!」
「へ、平気か?」
と、胤は聞いてみたが、平気な訳はないと思い、そろりと引き抜いてみる。
「ああ、少し、優しすぎるくらい、よ」
もっと激しく、と言わんばかりに、剤は爛れた腰を揺らす。爛れた痕がちょうど羽を広げた蝶のような形をしていて、胤の目にはさらに煽情的に映った。
「貴殿の身には蝶が棲んでいるのだな」
胤はらしくない表現をすると、剤もらしくなく照れる。
「ほんに、変わった、御人よ。かように、焼けた、我を美しい、とか。蝶が棲む、とか」
そんな甘言はそれこそ見目の美しいおなごへ告げれば良いのに、と剤は思うが、じくじくと快楽に落とされていき、剤は会話らしい会話ができなくなっていた。
しかも、
「全て本心だ」
と、きっぱりと言い切っているところが、また剤には堪らなかった。
「も、もう、よ、快い」
剤が張り型を抜くように言うと、胤はまた酷く優しく剤の腸内から引き抜いた。余程、わざとやっている方が罵倒の1つもできるのに、悪気がないだけ剤は胤を責めることができなかった。
穿つように張り型を咥え込んでいた剤の内臓の奥の奥まで見えそうな、拡がった穴を見るやいなや、胤は自身の張りに張り詰めた陽物を挿れた。
「……っ、ああぁ……」
久し振りに行う交わりに剤は重みと熱さのようなものを感じる。
胤の陽物も、飛び出すような子種も、甘やかな言葉も何もかもがずっしりと響いて、熱を帯びていた。
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