5 / 10
第5話
何度それが繰り返されたのか。
時間の感覚などもとよりなく、透がただぼんやりと寝ている時。いつものように雪政が食事を運んできた。
しかし何も言わず黙ったまま、食べさせる事もなく出ていく。パタンとしまったドアをぼんやりと見て、ちりりと透の頭の中のどこかが熱を帯びた。
しばらくして戻ってきたが、雪政はやはり何も言わず、ちらりと手付かずのままの皿を見た。その視線の動きに透はおびえた。食べなかった事を怒られるかもしれないと思ったのだ。しかし無言のまま雪政は透をベッドに押し倒す。
「愛してる」もキスも愛撫も何もないままに、一応受け入れる準備だけさせられて黙って体を貫かれた。それは今までと同じで一方的なものだった。それなのに雪政の声が、指が、息が、己の肌に触れないというだけで、透の胸は焼けるように焦りだした。
「兄さん、キスは……」
乞うように手を伸ばす。今まで一度たりとも自ら望んだことなどなかった。それなのに、ねだるような甘い声を出す自分に吐き気がする。
そのすべてを無視されて、ただ淡々と腰を動かし射精をして雪政は部屋から出て行った。
わけがわからなかった。
重い体を引きずりシャワーで体を流していると、後ろからどろりと雪政の精液が伝い落ちてきてその場で嘔吐した。
ともだちにシェアしよう!