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第7話
雪政の態度が豹変してから、それでも何度も抱かれ、透は次第にふさぎ込んでいった。ぶつぶつと何事かをつぶやき続け、涙を流し、頭を掻きむしり、突然暴れだしたり大声で泣き叫んだりした。ぎりぎりのところで届かないドアノブに手を伸ばして床に倒れこむ。ドアの下を爪でひっかいて何度も雪政を呼んだ。
涙にくれて唇を強くかみしめた時、かちゃりと小さな音を立ててドアが開いた。
はっと顔を上げると以前のような感情をたたえた表情で雪政が透を見下ろしている。足に縋り付き「兄さん」と何度も呼ぶと雪政はしゃがみ込み透の頭をそっと撫でた。
「透」
優しく微笑んだ雪政の表情を見て透は号泣した。
部屋に入ってきた兄の首にしがみつき離すものかと力をこめる。そっと背中に手を回されると、体の力が抜けるような幸せな気分が透を満たした。
「愛してるよ、透」
その言葉にもう透はおびえることはなかった。それどころか欲してやまなかった言葉を与えられたように感極まった。泣き続ける透をあやすように雪政は抱きしめて背中を優しく撫でる。
その日のセックスはとろけるように甘い蜜で満たされるような濃く深いものだった。
自ら唇を寄せてキスをねだり、ため息で声を震わせながら雪政の耳元でささやいた。
「兄さん、愛してる」
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