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第3話 LUST CHRISTMAS ②

クリスマス当日 子供達は飛鳥井の玄関にいた 康太は何故か烈と手を繋いでいた 烈はふんふん!と鼻息荒く康太の手をギューギュー握っていた 榊原が「井筒屋に行きますよ!」と謂うと音弥はスキップして外に出た 翔は一生と手を繋いでいた 一生は「痛くねぇかよ?」と問い掛けた 「らいじょうび!」 寒いと痛むけど、翔は弱音は吐かなかった 太陽と大空は音弥と共に翔を護る様に歩いていた 榊原はそんな子供達と歩調を合わせて歩いていた あれから何人か井筒屋に働いても良いと謂う人間が現れた だが上手く調整が取れなくて未だに決まってはいなかった 今年が最後の井筒屋になるかも知れなかった 康太は烈と歩いて井筒屋に向かっていた 「烈、おめぇの好きなお肉だぜ!」 「おにく」 ふんふん!と烈は大好きなお肉を買いに行く 榊原は康太に「今年も走れませんね」と笑って声を掛けた 「んとにな、最近はうちの子は手強いかんな!」 「僕と君の子が手強くない訳ないじゃないですか!」 榊原は笑う 嬉しそうな顔をして笑っていた 井筒屋に到着すると子供達はお店の中へと走った 「「「「「「おばたーん!」」」」」」 6人の子がおばちゃんを呼ぶ 店の奥からおばちゃん達が顔を出した 「康太ちゃん いらっしゃい! 翔君達もいらっしゃい!」 おばちゃんは嬉しそうに康太と子供達に声を掛けた 「皆も本当に良く来てくれたわね」 おばちゃんはそう言い子供達にコロッケを手渡した 子供達はコロッケを貰って美味しそうに食べ始めた 榊原はまるごとチキンを4個と骨付きチキンを50本、唐揚げを3バーレル袋に詰めて貰いお金を払った おばちゃんは榊原にも「ほら、伊織ちゃんも」と言いコロッケを渡した 一生や慎一もコロッケを貰い食べていた 井筒屋は年内で閉店の張り紙は外してはいなかった 榊原はおばちゃんに 「調整を着けてます、何らかのカタチを取れる様にします!」と約束した おばちゃんはそんな榊原達の気持ちが嬉しかった お店をやっていて本当に良かった‥‥と想っていた 「ありがとうね康太ちゃん伊織ちゃん」 クリスマスと謂う事もあって店は混み始めて、康太達は邪魔にならない様に店を後にした 買い物を済ませ飛鳥井の家に還って逝く 烈はチキンを榊原に一本買って貰い食べながら歩いていた 烈は康太に「かえっちゃら しゃんぽ」と犬の散歩に出ると告げた 榊原は「コオとイオリは出るけどシナモンは出ますかね?」と寒がりな猫を思い浮かべた 「どうだろ?寒いと痛いのか最近は散歩に行かなくなったしな‥‥」 「雪が降りそうなので今日は近場にしますか?」 「だな、急に寒くなって来たかんな!」 飛鳥井の家に還り、榊原と慎一はキッチンにお肉を置きに向かった 康太はワン達に散歩用の靴を履かせた ガルはご機嫌で飛び回っていた コオは寒いから散歩には行きたくない様子だった 康太は一生に「コオは行きたくねぇみてぇだな」とボヤいた 「寒いからな骨身にしみるんだろ? 年なのは否めねぇからな‥‥」 「長生きしねぇと後追いしやがる奴いるやんか!」 「‥‥‥なら散歩に連れて逝って健康管理はしねぇとな!」 康太はニヤッと笑って 「コオ、年取っても艶々で元気でいねぇとイオリが哀しむぜ!」と謂った コオはキューンと鳴いて立ち上がった イオリは尻尾をブンブン振って嬉しがっていた ガルはシナモンに背中を向けたが‥‥ シナモンは丸くなってガルの背中には乗らなかった ガルは寂しそうに歩き出した 康太はコオとイオリとガルを連れて近くの公園へ散歩に出掛けた 雪がちらつく寒さに‥‥流石と早目に散歩を切り上げて還ると早目に食事を取り みなとみらい毎年恒例の全館ライトアップへと出向く準備をした 今年は清四郎と真矢は‥‥‥一緒に逝くのを辞退した 去年騒ぎになったのを気にしての辞退だった 康太はそんな二人の想いを知っているから 「義父さん、義母さん、マスクして歩けば解りませんよ?」 と提案した 真矢は「マスクで誤魔化せるかしら?」を不安を口にした 「だがら普通の格好でマスクして歩けば、そんなに気になりません 芸能人丸出しでマスクしてサングラスとかだと‥‥見て下さい!って謂ってるようなモノですが‥‥地味にしていれば解りません と謂う事で地味な服を用意しました!」 康太がそう言うと慎一が真矢と清四郎に服を差し出した ついでに清隆と玲香にも用意されていた 玲香は「‥‥我は芸能人ではないぞ?」と訴えた 「母ちゃんは目立つんだよ! だから地味にマスクしておばちゃんっぽくお願いしたい」 「我は清隆に何時も綺麗だね玲香と申されたいから常日頃から努力は惜しまぬのに‥‥目立つと申すのか‥‥‥‥」 がっくし肩を落とす玲香き清隆は 「私はどんな玲香だって愛してます」と熱烈な告白をした 未だに新婚は飛鳥井の血筋か? 清四郎も「真矢もどんな姿でも愛すべき真矢です」と愛を囁く 一生はやってられるか!とラブラブ光線を撥ね飛ばし 「早く逝かねぇとライト消えちまうぞ!」と怒った 玲香は「怒るでない一生、お主も可愛い我の子じゃ愛しておるぞ!」と返した 「義母さん‥‥」 「では支度をして参るとするか!」 玲香は一生の頭を撫でて清隆と共に着替えを持って応接間を出て行った 真矢も「一生、拗ねないの!良い子だからね」と撫でて清四郎と共に着替えを持って応接間を出て行った 康太はツムツムのトレーナーとコートを着てマフラーを首に巻かれてぬくぬくだった 子供達もぬくぬくの上着を着るとお出掛けの準備をした 聡一郎、隼人、一生、慎一もお出掛けの準備をし 慎一の子や聡一郎の子もお出掛けの準備をしていた 慎一は「バスをチャーターしました」と大人数で出掛ける足の確保を告げた 「今年は運転手付きで頼んだんだよな?」 「はい、駐車場のなさに去年は辟易でしたから‥‥」 「今年は皆で楽しもうぜ!」 慎一は頷くと我が子と北斗を部屋まで迎えに行った 「支度は出来たか?」 慎一が尋ねると和真は「バッチリだよ!父さん」と大人びた風に笑って答えた 「流生達を頼みますよ」 和希は「解ってるよ父さん!」と謂い部屋を出て行った 寒くて傷が痛むのか北斗は黙って笑っていた 慎一は「北斗、逝けますか?」と尋ねた 「大丈夫だよ慎一さん」 北斗はニコッと笑って答えた 一生が北斗を迎えに来て、やはり慎一と同じ事を聞くから北斗は更に笑えて仕方がなかった 「北斗、大丈夫か?逝けるか?」 寒さで痛み出すのを知っている一生は心配して問い掛けた 「大丈夫だよ父さん 力哉君とゆっくり逝くから大丈夫」 「そうか、無理そうなら謂うんだぞ」 「はい!」 慎一と一生は子供達を連れて外へと向かった 外に出ると康太の子供達は‥‥‥めちゃくそ薄着だった 康太も毎年に比べたら‥‥格段に薄着だった 一生は「何か薄着じゃねぇかよ?風邪ひいたりしねぇ?」と問い掛けた 榊原は「ヒートテックを着てますからね!ぬくぬくです」と答えた ヒートテックかぁ‥‥それはぬくいだろ‥‥と一生は想った でもヒートテックって子供用もあったっけ? 「子供もヒートテックかよ?」 「子供達は裏起毛のトレーナーですからね あまり着込ませると汗をかいて風邪をひいてしまいます」 裏起毛かぁ‥‥それはぬくいだろ 準備が整うと皆バスに乗り全館ライトアップを見る為に桜木町へと向かった バスには下ろした後、三時間後に迎えに来てくれる様に言ってあった 桜木町で下りると川沿い歩いて赤レンガまで向かう 康太は携帯でパシャパシャライトアップの風景を写していた そして愛する榊原にカメラを向けると榊原は男前な顔をした 真矢と清四郎は何処にでもいる感じで地味にオーラが消されていた 服は野暮ったく髪も結わずにといただけだった マスクをすると榊原真矢とはとても解らなかった 玲香も何処にでもいるおばちゃんと化していた 清四郎は何処にでもいるオジサン風に地味なジャンバーを着てマスクをしていた 清隆はマスクはしてないが地味な服に、とてもじゃないが飛鳥井建設の会長だなんて解らない風体だった 玲香は「何とも地味な出来上がりだわいのぉ~」とおしゃれ好きな玲香にとっては手抜き中の手抜き キングオブ手抜きだった だが普通に歩いていてもモブになりきれる様子に満足はしていた 真矢もそれは同じだった こんな事ならもっと早くにやっとけば良かった、とさえ想う程だった 流生は真矢と手を繋ぎ 「ちれーねぇ、ばぁたん」と瞳を輝かせて謂った 「そうね、綺麗ね」 音弥は瑛太と手を繋ぎご機嫌だった 「えーちゃ ちれーねぇ」 「そうですね、音弥」 「えーちゃ ありがちょーね」 「何がですか?」 「いちゅも ちんぱいしてくれて ありがちょー!えーちゃ」 「止めて下さい音弥 家族を心配するのさ当たり前でしょ?」 「うん!れも、ありがちょう」 「もぉ抱っこしてしまいますよ!」 瑛太は笑って音弥を抱き上げた 「重くなりましたね」 「おとたん しょだってる」 「ええ、日々育ってますね」 じじむさく歩く瑛太と音弥の後ろを康太は歩いていた 「じじぃかよ?」 想わず呟いた 流生が「かぁちゃ ぎゃまんよ!」と母を宥めた 「おめぇもよぉ、うちの子は皆、じじむさいよな?」 「かぁちゃ りゅーちゃ つやつや!」 だからじじむさくないと流生は謂った 良く見れば流生は艶々だった 「あんでおめぇは艶々なのよ?」 「りゅーちゃ こにょまえ、えしゅてにいった」 「エステ!‥‥‥誰と行ったのよ?」 康太は驚いていた エステに行ったのは知らなかったからだ‥‥ それに答えたのは真矢だった 「私とよ康太!」 「義母さんとでしたか? 何故に‥‥エステですか?」 「この前ね年末だしエステに行こうと想っていたのよ エステに行く前に飛鳥井に顔を出したら流生がいてね ばぁたんどこいきゅにょ?と聞いてきたからエステに逝くのよ!って言ったらね りゅーちゃもいくにょ!と謂ったから皆を連れて行ったのよ」 真矢は楽しそうにそう謂った 流生は「ちゅるちゅる!」と嬉しそうに謂った 音弥も太陽も大空も翔もツルツルアピールをした 烈はプンッとそっぽを向いた 「烈は行けなかったのか?」 康太が謂うと真矢は「そうなのよ、烈は熱があったからお留守番だったのよ でも還りに大きな熊のぬいぐるみの『所沢君』を買って還って来たのよ」と経緯を話した あの大きな熊‥‥‥ 突然、応接間に座ってる大きな熊‥‥ そんな経緯があったのか‥‥と今更ながらに解った ワイワイと楽しくライトアップと夜景を堪能する 赤レンガへ向かいドイツのソーセージとビールを味わい 子供達はホットチョコとチュロスを堪能した スケートリンクで少しだけ滑って三時間経って迎えのバスに乗り込んで帰宅の途に着く予定になっていた 真矢は初めてスケートリンクのスベスベ滑る怖さを体感して 「楽しかったわ!年甲斐もなくスケートしちゃったし」と興奮して話していた 玲香も「あの鉄の包丁みたいなので滑れる訳などないのだわいな‥‥」と滑れない雪辱を口にした 康太と榊原は滑らず 慎一と一生は子供達のサポートでリンクに入った 聡一郎と隼人はドイツビールを堪能しすぎて‥‥‥酔っぱらいと化していた 真矢は玲香と共にリンクに入り‥‥‥ギャーギャー少女の様に騒いでいた 清隆と清四郎は遠巻きに‥‥‥妻を見ていた 明日菜は笙に「滑って来るのだ!」と美智瑠を渡した 「奥さん‥‥君は?」 明日菜はバイバイと匠と手を振って答えた 美智瑠にスケート靴を履かせてリンクに出る スケート選手の役をやっていた笙は人並みを縫うように滑っていた 慎一は美智瑠を子供達と一緒にすると、笙はスイスイ滑って‥‥‥4回転トゥループを決めた リンクから拍手が贈られた 調子に乗った笙は更にスイスイ滑って目立っていると‥‥‥家族はスーッとスケートリンクから離れた 真矢は「あのバカ!」と怒っていた 明日菜も「あんなに滑れば榊原笙です!と謂ってるようなものではないか!」と夫の軽率さを口にした 赤レンガから少し離れた所にバスは停まっていた 康太と家族は早々にバスに向かった 笙は家族がリンクから消えて慌てて人混みを掻き分けて走って来た バスに乗るなり笙は「ゴメン!」と謝った 真矢は笙に「あの一瞬で私達の地味な戦略はパーになったわ」とプンプンと怒っていた 翔が「しょーたん あうと!」と年末に良く見る番組のあの台詞を口にした 笙はがっくし肩を落とした 着けられてないかバスはグルグルと街並みを走り、大丈夫だと確認した後に‥‥ 飛鳥井から少し離れた所で停まった バスから下りると飛鳥井まで歩いて向かった 笙は「本当にごめん!」と終始謝りっぱなしだった 康太はそんな笙に「良いよ!気にすんな!」と取り成した 飛鳥井の家に還り、クリスマスパーティーを始める 今年のサンタは隼人で、子供達は青い鼻のトナカイのコスプレをしていた 隼人は翔にもお揃いのサンタのコスプレを用意して、翔に着せた 「翔、サンタは暗い夜道を走って待ってる子供達にプレゼントを配らねばばならないのだ 厳しく険しい道を走って向かわねばならないのだ!」 「そうらね、こわいね」 「翔も今、暗い夜道を走っているのだ」 「え?‥‥‥」 「飛鳥井家真贋と謂う厳しく険しい道を走っているのだ だけど翔には道を照らしてくれる光が沢山あるのだ!」 「はやちょ‥」 子供達は皆、青い鼻を着けたトナカイの格好をしていた 「翔の道を照らしてくれるのは、兄弟達だ! お前らは一人でも欠けたら、道は照らせないのだ!忘れたらダメなのだ!」 翔は泣きながら隼人を見た 隼人は胸を張り 「オレ様は母に照らされて歩いているのだ! だからお前達はオレ様の弟だからな、オレ様はお前達を曲がらない様に照らすと決めているのだ!」と長男は弟たちの頼もしい兄としていようと決めていた 「ありがとーはやちょ」 「だからお前は立ち止まるな!」 「あい!」 「前を見て進め! オレ様はお前の道を照らしてやろう! お前の兄弟は後ろから援護してお前を照らしてくれるだろう! どんなに暗い道だってお前は進める!」 翔は包帯が巻かれた手で涙を拭った 康太は隼人を抱き締めた 頼もしい長男を抱き締めた 康太は翔を抱き寄せて 「次はきっと成功する! 誰よりも己を信じて進め!」と言葉を投げ掛けた 「あい!かぁちゃ‥‥」 「オレはあの修行で足を折った」 「‥‥え‥‥」 「情けなくてな‥‥瑛兄に八つ当たりして泣いた」 「かぁちゃ‥‥」 「だから翔も失敗して当たり前なんだよ だけど、立ち上がったなら、同じ失敗は2度とするな!」 「わかってまちゅ!」 「それだけ解ったらお前は逝ける! 照らしてくれる光がお前の背を押してくれるからな!」 「かけゆ‥‥らめじゃにゃい?」 康太は翔の頭を撫でた 「ダメな訳ねぇだろ? おめぇは母ちゃんの自慢の息子だ!」 翔は母に抱き着いて静かに泣いていた 「おめぇには兄弟がいる 隼人はおめぇの兄だ! 兄に甘えて我が儘言っても良いんだぜ? オレなんて未だに瑛兄に甘えて我が儘謂ってるかんな!」 翔は何度も頷いた 康太は翔の顔を上げると涙を拭いた 「今夜は楽しいクリスマスだぜ?」 「あい!」 翔は康太から離れると兄弟の傍へ向かった 兵藤が飛鳥井の家にやって来るとサンタとトナカイ軍団に出迎えられた 「お!トナカイ沢山いるやん」 兵藤は笑っていた 真矢と玲香は着替えに逝って、何時も通りのキラキラオーラ全開に戻っていた 清隆と清四郎も着替えに行き、何時ものダンディーに戻った ワン達は犬用クリスマスケーキを貰って食べていた シナモンには猫用のクリスマスケーキをあげたが‥‥丸くなり見向きもしなかった 流生はシナモンに近寄ると体躯を撫でてやった 「かぁちゃ‥‥ちなもん ねちゅありゅのよね きじゅもいたい いっちぇるにょ!」 傷も痛い‥‥‥謂ってるのって‥‥ 康太と榊原は顔を見合わせた 康太は「赤いのの‥‥力か?」と愛と平和を司る神は生きるモノ総ての声を聞くと謂う‥‥ 榊原はあまり龍には詳しくなかった 龍だけど、龍の事や一族の仕事は黒龍任せでその力さえ把握はしていなかった‥‥ 「どうなんでしょう‥‥取り敢えず明日病院に連れて逝きましょう! 熱があるなら診て貰わねぇとな‥‥」 「そうですね」 問題は目白押しだった‥‥‥ だが今夜はクリスマスイブ 恋人達や 愛する家族と迎える夜 幸せな時間が皆様の元に降り注ぎます様に‥‥ 康太は夜空を見上げて祈った ケーキを食べてチキンを食べて オードブルにサンドイッチやピザ 食べ物が所狭しと置かれていた 清隆と玲香は清四郎と真矢と共にお酒を飲んでいた 兵藤美緒も加わり楽しい時間は幕を開けた 音弥は歌を歌っていた 「もういくちゅねると」 烈が音弥の歌に合いの手を入れる 「おもち」 「おちょーがちゅー」 「じょーに」 「おちょーがちゅには」 「みかん おもち おにく」 「たきょあげて、きょまをまわちて」 「たべまちょう!」 「はやきゅこいこい」 「おとしらま!」 見事な音弥と烈の歌だった 笙は「この歌って二人で打ち合わせとかしてるの?」と問い掛けた 康太は「適当だろ?」と答えた だが適当だとしたら最後はぴったし『おとしらま!』で終わるか?と笙は思っていた 烈はポケットから通帳を取り出すと 「おとしらま たまりゅ」と喜んでいた 明日菜は「幾ら位貯めたのだ?」と烈に問い掛けた 烈は、ふんふん!と息も荒く明日菜に通帳を渡した 明日菜は通帳をみると‥‥ 「‥‥‥え?嘘‥‥‥」と呟いた 笙が明日菜の手にしてる通帳を覗き込み 「‥‥‥君さぁ‥‥本当に幾つよ?」と問い掛けた 烈はお茶をズズッと啜ると指を3本立てた 康太は「飛鳥井の一族にお年玉貰ってるからな‥‥」と説明してやった 「飛鳥井の一族が烈にお年玉くれたって事?」 「そうだ、飛鳥井の一族は真贋から恩恵を受けているからな、景気はんなに悪くはねぇって事だ! そして真贋のお子に年始の顔見せでお年玉を渡してくれてるって事だ」 ならば烈の通帳に十万円近くあっても不思議ではないか 烈は通帳を母に渡した そして大きな熊に抱き着いてゴロゴロしていた 康太は慎一に「スイッチを買って来てやってくれ!」と通帳を慎一に渡した 「スイッチですか?烈には早くないですか?」 「兄達がスイッチを持ってるからな、一緒に遊べないのは嫌なんだろ?」 兄達のスイッチは自分のお年玉で買ったモノだった だから烈も頑張ってお年玉を貰いまくったのだった 「烈の場合、母と遊びたいんでしょうね」 康太は笑って 「烈が一番お年玉沢山貰ってやがるかんな!」とボヤいた 烈の場合、一族にも菩提寺の住職や巫女達からも人気があった 「オレもお年玉欲しい」 康太は羨ましくてついつい本音が出た 瑛太は「兄が毎年あげてるだけでは足りませんか?」と寂しそうに謂った 榊原は「義兄さん、康太にお年玉あげてるのですか?」と尋ねた 「ええ、今もずーっとあげてます」 康太はまずい!っと苦笑した 真矢は「なら私も康太にお年玉あげますよ」と笑ってそう言った 収集がつかなくなりそうで康太は 「‥‥‥嫌‥オレはもうお年玉って年でないので‥オレの子にあげて下さい オレは瑛兄にだけたかります!」と謂った 皆、笑っていた 榊原は「なら僕も君にお年玉あげますよ」と囁いた 愛する男は優しい 妻をこよなく愛して尽くしてくれるのだ 慎一は「スイッチを買った後、この通帳は誰が管理するのですか?」と問い掛けた 「慎一が管理してやってくれ!」 「解りました」 「烈は年が明けたらオレが仕事に連れて逝くから、もっと貯まるかも知れねぇけどな」 「烈を連れ歩くのですか?」 「烈には状況を視る眼があるかんな! 此より烈は色んな所へ連れ出して色んな体験をせねばならねぇんだよ 人を視るのが烈の定めだかんな」 烈には既に飛鳥井で生きる道が決まっているも当然の言葉だった 康太は清四郎と真矢に 「義父さんと義母さんも烈を現場に連れて逝って下さいませんか? まぁ子役とかで仕事させれば良いんでしょうが、烈は飛鳥井以外では生きれぬ存在故に、出す事は出来ません なので眼を養う為に連れ出して下さったら助かるのですが‥‥」 清四郎は「それが烈の生きる道なのですか?」と尋ねた 「烈の飛鳥井でのポジションはオレの駒の陣内です アイツは人を視て配置する存在 烈は陣内よりも確かな眼を持つ存在です 此からの烈は視て養う時間となります」 清四郎は康太の重い言葉を聞いていた 康太は清四郎の想いが解るから、子供達の道を口にした 「翔は次代の真贋 流生は飛鳥井建設の顔として生きて逝きます ポジションは父ちゃんの会長席に座る事となる 飛鳥井建設の社長は瑛智ですが、流生は瑛兄から飛鳥井家の総代の座も譲り受けますから、名実ともに飛鳥井の顔です 太陽と大空は流生のサポートをする存在として生きて逝きます 太陽と大空は二人で副社長の座に座り盛り立てて逝く ポジションで謂うならば、オレの駒の蒼兄と栗田だ! 音弥は桜林学園の理事長として神楽に養子に逝きますが、兄弟の為ならば、どんな協力も惜しまないでしょう! それが我が子が飛鳥井で生きて逝く果ての道です」 康太の配置された駒の座を、康太の子が継ぐと謂うのか‥‥‥ 康太は果てを視て 「飛鳥井はどんな激戦にも生き残り先へと逝く! それは守り継がれ受け継がれて逝く果てとなる!」 清四郎は「烈は眼を持っているのですか?」と尋ねた 康太はこの会話から良く気づいたなと想った 「烈は人を視る眼を持つ 念写はその眼が残像を焼き付ける力として発揮しているらしい だから超能力とかの類いの力ではない、と謂ってた 飛鳥井は今世、二つの眼を女神から授かった事となる」 あぁ、そうか‥‥‥と清四郎は想った 烈は既に明日の飛鳥井で生きる道が用意されているのだ‥‥‥ 清四郎はそれが嬉しくて‥‥やるせなかった 烈が誕生した日 清四郎はこの子は飛鳥井で生きさせて良いのだろうか?と想った 流生や翔、音弥や太陽と大空には明日の飛鳥井で生きる道が用意されていた だけど烈にはあるのだろうか?と不安を覚えた 烈は飛鳥井で自由で育つ子なのだろうと想っていた だけどそうではないと謂われて‥‥ 烈の中に飛鳥井の血がこうして流れている事に嬉しく想う 太陽と大空、そして烈の中に間違いなく源右衛門の血が流れていた 「烈の行く末も‥‥険しいのですね」 「あぁ、だが烈だかんな 豪胆と豪気を兼ね備えた飛鳥井の血を受け継ぐ存在だかんな 笑い飛ばして生きて逝くさ 源右衛門がそうだった様にな」 あぁ‥‥‥源右衛門はそうして生きて来た どんな困難も苦しみも‥‥‥ 源右衛門は撥ね飛ばし豪気に笑い飛ばして生きていた 清隆は烈を抱き上げると 「誠‥‥‥源右衛門の豪胆さを受け継がれています」と言葉にした 烈を見ていると源右衛門を感じさせずにはいられない 烈は清隆を撫でた 清隆は烈の中に父を感じて‥‥烈を抱き締めた 翔は井筒屋の羊羮を食べていた ケーキがあるのに井筒屋の羊羮を食べていた 烈はそれを目敏く見付け清隆の腕からスルッとと抜け出した 「にーにー じゅるい」 烈が謂うと慎一が烈の前に羊羮と渋茶を出してやった 兵藤は「ケーキに目もくれず羊羮かよ?どんだけじじむさいのよ?」とボヤいた 縁側でじじい二人が茶をすすり羊羮を食べている光景にしか映らない 烈はマカロンを手にして兵藤に「はいきゃらにゃにょ!」と謂った 「ハイカラって何時の世の奴だよ‥‥」 「きにちゅんにゃ!」 ズズッと茶を啜り目敏く瑛太の井筒屋の沢庵を目にするとパクっと食べた ポリポリ沢庵の音が部屋に響く 真矢は「‥‥井筒屋の存続をかけて動かねばね‥」 と井筒屋がなくなった後の子供達と康太が怖かった 清四郎も「誰かいませんかね?」と井筒屋のこれからを想った 康太は「義父さんも義母さんも今宵はクリスマスです、総て忘れて今は飲みましょう!」と謂った ワイワイ ガヤガヤと騒がしいクリスマス だがこれが飛鳥井の定番となっていた 清四郎や真矢、そして笙と明日菜にとってもこれがクリスマスになっていた メリークリスマス 皆様の元に幸せな時間が降り注ぎます様に‥‥

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