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第7話 年の瀬③
ワンとシナモンのカットとトリミングを済ませて車へと向かい榊原は「この後どうします?」と問い掛けた
「聡一郎に電話するしかねぇやん」
「そうですね」
康太は車の前に立つと「ドア開けてくれよ!伊織」と言った
榊原は解錠してドアを開けた
榊原はワン達を先に乗せてから子供達を後部座席に乗せた
榊原は助手席のドアを開けると康太を乗せてドアを閉めた
後部座席のスライドドアを閉めて、運転席に乗り込んだ
康太は聡一郎へ電話を入れた
「聡一郎、カット終わった
産まれた?」
『一生から連絡が入りました
産まれたそうです!
可愛い女の子だそうです』
「‥‥‥そうか、やっとこさ京香の所へ還ったか‥‥」
『康太は今何処ですか?』
「オレはワンの美容院を出た所だ」
『なら何時ものファミレスに向かって下さい
一生と慎一と‥‥‥‥瑛兄さんがいます』
「聡一郎、聞き間違えか?
あんで妻の元じゃなく瑛兄がいるのよ?」
『それはまぁ弟に逢いたくてでしょうが!
あの方の弟バカは今に始まってません!』
後ろで聡一郎酷い‥‥と瑛太の声がした
「んなら何時ものファミレスに向かうわ」
『では待ってるので来て下さいね!』
聡一郎はそう言い電話を切った
康太は榊原を見て「ワン‥‥どうするよ?」と問い掛けた
「我が家のワンはどの子も躾がちゃんとしているので待てます!」
榊原の言葉通りワン達は子供達の足元に大人しく座っていた
この子達が飛鳥井に来て悪さをされた事はなかった
榊原は車を何時も行くファミレスへまで走らせた
ファミレスの駐車場に逝くと一生が待ち構えていた
榊原が車を停めると一生は近寄り康太に
「京香に良く似た可愛い女の子だ」と教えた
「そうか」
言葉少なに康太は車から下りた
そして後部座席のドアを開けると子供達を下ろした
流生以外は起きていて、母が下ろすと嬉しそうに兄弟を待っていた
康太は寝ている流生を持ち上げて抱っこすると‥‥‥
動きを止めた
「どうしました?康太」
最初に気付いたのは榊原だった
「伊織‥‥黒龍を呼んでくれねぇか」
「今ですか?」
康太は榊原の手を取ると流生に触れさせた
榊原も動きを止め妻を見た
「これはどういう事なんだ?」
流生は魘されていた
榊原は一生に「子供達をお願いします」と店の中へ連れて行けと頼んだ
一生は流生以外の子を店の中へと連れて行った
「伊織‥‥何故流生は始祖の龍の夢を視てるのよ?」
「僕にも解りません‥‥兄さん!黒龍兄さん来て下さい」
榊原は天を仰いで念じた
すると凄まじい雷雨が鳴り響き大雨が振りだした
榊原は妻を庇うように立っていた
その背後に「呼んだか?我が弟青龍よ!」と黒龍の声がした
榊原は兄を確認すると‥‥‥
兄の胸倉を掴んだ
「流生に何かしましたか?
僕の子である時に何かするなれば‥‥生かしてはおきませんよ?」
「俺がお前の幸せを望まぬと想うのか?」
「頭に血が昇ってました‥‥すみませんでした兄さん」
榊原は黒龍の胸倉を離した
康太は黒龍を見て「オレは龍じゃねぇからな解らねぇけど‥‥‥
どう見てもこれは、龍の力が継承されかかってるんだけど?」と告げた
黒龍は流生に近寄り抱き上げた
「何で?‥‥」
黒龍さえも驚き「親父殿!」と呼び寄せるから‥‥
更に天候は悪化の一途を迎え‥‥最強台風到来となった
年末に‥‥台風もないが、龍は天候を左右する
稲光と共に金龍が姿を現した
「黒龍、何があったのじゃ?」
黒龍は呼び寄せてしまった親父殿を見た
「親父殿‥‥」
黒龍が話そうとするよりも先に
「場を移動せねば台風被害が出るではないか!」と怒声が聞こえた
そこにいたのは閻魔だった
閻魔は無理矢理空間を崑崙山へと繋ぎ移動した
八仙が出迎えに出ていた
康太は「流生が龍を継ぐのは人の世が終わってからじゃねぇのかよ?」と怒って話した
榊原も「何故龍の記憶の継承がなされてしまっているのですか?」と人でいられなく現状に苛立ちを隠せなかった
金龍は黒龍が手にしている流生を渡してもらい八仙に見せた
八仙は流生を手に抱いたまま屋敷の中へと入って行った
榊原は近くにあった布を手に取ると濡れた康太を拭きながら
「寒くありませんか?」と世話を焼いていた
康太は「伊織も濡れてるやん拭かねぇと風邪引くぞ!」と心配した
それがイチャイチャして見えて黒龍は
「そこら辺にしときなはれ!」と言った
康太は黒龍を拭きながら
「あんで、流生はあぁなったんだよ!」と問い掛けた
「俺は人になった事がねぇからな‥‥
思い付く事で謂えば‥‥龍で謂えば7つの祝いは力の継承、血の継承式となる」
黒龍は思案してそう言った
流生は来年、小学校入学となる
金龍も「流生は世祝い7つ‥‥龍の継承式と重なる‥‥‥まさかわしも人の世にいる流生が継承式の年に‥‥こんな風になるとは想ってもおらなんだ‥‥許してくれ炎ちゃん‥‥青龍」
と深々と頭を下げた
「謝らないでくれ‥‥金龍」
「炎ちゃん‥‥」
「なぁ金龍‥‥‥流生は人の世に帰れるのか?」
「‥‥‥流生は人だ!‥‥なのに何故‥‥わしには解らぬ
だから八仙の所へ来たのだ」
金龍は苦しそうにそう言い堪えるように目を瞑った
閻魔は「流生の如意宝珠は?」と尋ねた
金龍は「我が家の宝物庫に保管してあります」と答えた
「如意宝珠は本人が呼べば来ますか?」
それに答えたのは榊原だった
「来ません
僕は人の世に10000年如意宝珠なしで暮らしていました
呼んだからと謂って都合良く来るモノではない筈‥‥
まぁ僕は自分で置いて行ったので呼んではいませんが‥‥」
「なら解らないですね」
「ですが、流生が如意宝珠を持てば‥‥僕に解らない訳がないのです!
如意宝珠は龍の力の根元、それを手にした龍は一族と魂も共有したと同然ですから‥‥」
榊原が謂うと黒龍も
「流生は如意宝珠は持ってないと俺も想う
だけどな龍と女神の力を併せ持つ人間ってのは‥‥人の世でかなり生き難いだろうと想う‥‥
だが、俺は人の世の炎帝の子が龍になれとは想ってないぞ!
流生は何にしろ強いんだよ力が‥‥」
と流生を想い言葉にした
閻魔は「どのみち待つしかないでしょう!」と謂った
流生の無事を祈って皆は静かに待っていた
そこへ一生が姿を現した
「何処かへ行っちまったから探したやんか!」と相当あっちこっち探したのか息を切らしていた
「流生に何があった?」
一生は康太に問い掛けた
「流生を抱っこして車から下ろそうとした時、流生の意識が流れ込んできた
流生は龍の継承式の時に視る始祖の龍から、龍の成り立ちを聞いている風で、意識はなかった」
「‥‥‥なっ‥‥そんな!‥‥」
一生は言葉をなくした
龍なれば必ず一度は眼にする始祖の龍の教え
それは血となり力となり龍に息づく
人の流生が受けていい教えではなかった
康太は一生に「瑛兄には?」と問い掛けた
「緊急事態だと言っといた
子供達は慎一が面倒見ると想う
慎一はベルファイアのスペア持っているんだろ?
ならワン込みで連れ帰ってくれるだろ?」
「‥‥そうか‥‥やっと大掃除終わったのにな‥‥」
榊原は妻をギューッと強く抱き締めた
八仙の一人が奥から姿を現した
「八仙、どんな状況よ?」と康太は問い掛けた
「流生は今眠っておる
八仙の一人が流生の意識に入り始祖の龍と対話した
流生の力は強い、そして頑なで頑固
そんな流生が知らず力を発してしまったら、人の世は愚か魔界にも影響を及ぼす事となる
龍の成り立ちや力を教えておく必要があったと申しておる」
八仙が謂うと康太は果てへと見て
「アイツは昔から馬鹿正直で融通がきかなかった‥‥己を見てるみてぇだったのかな?」と呟いた
金龍は予想もしない言葉に
「始祖の龍をご存知か?」と問い掛けた
「オレは金龍同様知らねぇが、赤い髪した皇帝の着く方は知ってたりする‥‥‥
真面目に生きた蛇に先を与えたのはアイツだしな
だけどオレを年寄り呼ばわりしようものなら蹴り上げるぞ金龍」
金龍は笑って「そんな事は申さんよ!」と康太の頭を撫でた
八仙が流生を連れてやって来ると、流生は泣きそうな顔をしていた
そして母を見つけると走って抱き着いた
「流生、大丈夫か?」
「かぁちゃ りゅーちゃ どうしたにょ?」
康太はどう説明して良いか悩んだ
榊原は流生を抱き上げると自分の膝の上に乗せた
「流生、大丈夫です」
「とぅちゃ‥」
流生は泣き出した
康太は「八仙‥‥人の世に還って大丈夫か?」と尋ねた
「それは本人次第ですな」
八仙は流生を立たせると
「人の子、流生よ!
お主は始祖の龍の言葉を覚えておるか?」と尋ねた
「おぼえてりゅ!」
「お前が人の世で力を解き放てば、人の世は壊滅的なダメージを受けるであろう
お主はそうならぬ為に日々鍛練し過ごさねばならぬ
解るか?」
「あい!わかりまちた!」
流生は背筋を正してそう答えた
八仙は「流石は炎帝の御子じゃな」と流生の頭を撫でた
滅多と表に出て来ぬ八仙は康太の前に姿を現すと
「よゐこじゃ、ならこの石を肌身離さず持っておるがよい
その石は冥府の奥深くに存在した闇から皇帝閻魔が創られたモノだ」
康太は八仙の言葉を聞いて
「親父殿が?」と呟いた
「その石は莫大な力を吸収する様に創ってあるそうじゃ!
流生が力を爆発させたとしても、その石が力を吸い取ってくれるそうじゃ
だがこれは本当にピンチの時しか発しはせぬ
だからお主は日々己をセーブして生きねばなりませぬぞ!」
八仙は流生に聞かせた
流生は八仙の言葉を聞いていた
八仙の一人は流生を撫でると奥へと引っ込んだ
そして何時もの八仙が出て来ると
「この子は賢い
分別の着く子じゃ人の世に還ってよいぞ!
炎帝はその石を肌身離さず持たせる工夫をしてやるとよい」
「解った、悪かった八仙
親父殿にも礼を謂っておいてくれ!」
「解り申した」
康太は立ち上がろうとすると閻魔に向き直り
「兄者まで呼び出して申し訳なかった」
閻魔は康太を抱き締め
「ちょうど今後の対策を話し合っておった所、金龍が呼び出されたのだ」
「助かった」
「ここ最近の炎帝の気が乱れておる
と心配した輩が煩くてな
転輪聖王は勿論、釈迦や十二支天やら他の神々も入れ替わり立ち替わり『お主の弟であろうが!何とかしろ!』と来るから‥‥自分の目で確かめに逝くつもりだったのです
転輪聖王なんか傍にいて覇道も結んであるなら、自分で逝けばよいものを、わざわざ魔界に来て謂うのですよ?」
閻魔がボヤくと弥勒は
『閻魔‥‥そんな内情は黙っておればよいものを!』と文句を謂った
閻魔は「黙っていたら、どれだけの者を心配させているか解らないではないか」と屁理屈を謂った
『閻魔、それは屁理屈と申すぞ!』
「百も承知!」
閻魔は笑い飛ばした
康太は閻魔に
「兄者心配させてすまねぇ」と謝った
「兄はお前が青龍殿と仲良くいてくれるのならば、何も案じてなどおらぬ
だが‥‥青龍殿がいるのに‥‥不安定に気が乱れておるからな‥‥心配しておったのじゃ」
榊原は閻魔に深々と頭を下げた
「みすません‥‥僕が傍にいるのに‥‥炎帝を不安がらせてしまっていました‥‥
僕も‥‥康太同様不安定な時もあり、共に行く覚悟を決めたばかりです」
「青龍殿、炎帝を宜しく頼みますよ!」
「はい。解りました」
閻魔は康太の頭を撫でると
「外へ出るがよい
ほんの数時間しか変わらぬ時間に送ってやろう」
と申し出た
康太は榊原に手を差し出した
榊原は康太の手取ると手の甲に口吻けを落とし
「逝きますか奥さん!」と確認した
「おー!共に逝こうぜ!」
この命賭したとしても共に‥‥それだけしか望まない
榊原は流生を抱っこし
「帰りますよ」と告げた
八仙の屋敷の外に出ると榊原と康太と流生は閻魔の前に出た
一生も慌てて康太の横に並んだ
閻魔が呪文を唱えると時空がグニャッと歪んだ
榊原は流生の頭を抱き抱えると時空の歪みを感じさせない様に庇った
康太は閻魔と金龍と黒龍に手を振っていた
「またな兄者、黒龍、金龍!」
歪んだ空間は康太達を飲み込むと‥‥‥何もなかったかの様に閉じた
黒龍は「やはり夫婦して不安定だったな」と閻魔に声をかけた
「仕方ないでしょう
人の世の炎帝は我が子に自分は本当の親ではない!と子に告げる気なのですから」
金龍は言葉もなかった
黒龍も「なんでアイツは‥‥何時も何時も辛い道ばかり逝こうとするんだよ!」と腹立ちを感じて言い捨てた
やるせない
辛い‥‥‥‥辛すぎる
だから青龍も不安定だったのか‥‥
お前、炎帝を想って‥‥‥どうしたら良いのか解らずにいたのか?
黒龍は弟の行く道が光り輝く明日へ繋がります様に‥‥と祈らずにはいられなかった
人の世のそんなに時間の立っていない時に還った康太は榊原を見た
「伊織、兄者は元いた場所の数時間後に送ってやると謂ったけど‥‥瑛兄達いる?」
榊原のベルファイアは停まっていた
一生は走ってファミレスに顔を出した
一生に気付いた瑛太は「康太はいましたか?」と問い掛けた
「今来ます!」と言い一生は榊原を呼びに逝った
「旦那、康太、瑛兄さんいる」一生が謂うと
「そうか、なら逝くか」と康太達はファミレスに入って行った
瑛太は心配した顔で「何かありましたか?」と問い掛けた
「もう大丈夫だ!瑛兄」
何があったかは伝えずに、もう終わったと暗に匂わせて幕引きにしたい康太はそう言った
「そうですか‥‥ならば食べなさい」
「瑛兄、腹ペコなんだよ!」
仕出し弁当二個‥‥‥食べてませんでした?
榊原はそう想ったが、メニューを康太に渡した
「君の好きなプリンは後にして何を食べますか?」
「オレはイタリアンとサラダで良いわ」
「全部食べれます?」
「‥‥‥時空に少しやられたから気持ち悪い」
「なら二人で食べましょうか」
榊原はパスタとサラダを注文するとジュースを入れに行った
康太の好きなメロンソーダを入れて来ると康太に渡した
榊原は流生を康太の横に座らせると、母と同じメロンソーダを渡した
「流生は気持ち悪くありませんか?」
「ちゅこち‥‥くりゃーっとする」
「無理してはいけませんよ?」
「あい!」
流生はお返事をしてジュースを少しずつ飲み始めた
兄弟達は流生を気にしていた
だが‥‥流生の瞳が‥‥少しだけ金色に光って見えたから‥‥何と謂って良いか解らずにいた
康太は子供達が何故流生を気にしてチラチラ見ているのか?
気になって視線を追った
そしてジュースを飲んでる流生の両目を塞いだ
「うわぁ!」
流生は驚いて叫んだ
榊原は慌てて流生の手のジュースを押さえた
「康太、急にどうしました?」
榊原は妻をめっ!と怒った
康太は榊原の耳に唇を近付けるとペロッと耳を舐めて「瞳が変化してるんだよ」と謂った
耳を舐められあまりの驚きに‥‥‥榊原はドキドキしていた
「本当に君は悪戯っ子なんですから」
榊原がボヤくと康太は笑っていた
榊原は流生を膝の上に乗せて、顔を抱き締めていた
目が元に戻るのはもう少し掛かるからだ‥‥
康太は一生に「グラサン貸せよ」と謂った
「俺、持ってなーず」
「お前は何時もグラサンしてアロハの雰囲気なのに?」
それ、どんな雰囲気よ?
一生は想った
その場にいた者は大爆笑となった
聡一郎は「そんな感じする!一時期何時も胸ポケットにグラサン入れてたし、ちょいワルって感じでしたね」と懐かしそうに笑った
慎一も「何か何時もグラサンしてましたね昔は‥‥それを想うと落ち着きましたね君」と至極真面目に返され‥‥‥
一生は唇を尖らせ「うるせぇ!」と文句を謂った
皆が笑っていた
榊原は流生の顔を上げさせると瞳を確認
元に戻っているのを確認して兄弟と一緒に座らせた
パスタとサラダが運ばれ、榊原は康太に甲斐甲斐しく取り分けて食べさせていた
「気持ち悪くないですか?」
「もう大丈夫だ伊織」
「君の好きなプリン頼みますか?」
「おー!子供達の分も頼んでくれ」
「解りました」
妻と子の世話を焼く榊原を、瑛太は微笑んで見ていた
音弥は椅子から下りると、テーブルの下をぬって康太の膝に抱き着くと
「かぁちゃ らいじょうび?」
と母の心配をした
康太は音弥を抱き上げる
「大丈夫だ音弥」と安心させてやった
「かぁちゃ」
音弥は母に抱き着いて甘えた
他の子も甘えたくてうずうずしていた
康太は音弥を榊原に渡すと他の子らにも
「家に還ったら一杯甘えて良いぞ!
今はプリンが来るからな!」
子供達は運ばれて来たプリンを美味しそうに食べていた
康太の所に運ばれて来たプリンは‥‥‥
生クリームで彩られフルーツが乗ったヤツだった
子供達はそれを見て
「「「「「じゅるい!」」」」」と怒った
烈は熱いお茶をずずっと啜って‥‥‥お口をあけた
康太は仕方なく生クリームとフルーツを烈の口に放り込んでやった
烈は親指を立ててニカッと笑った
榊原は何処までも甘く妻の心配をしていた
「康太、気持ち悪くなったら謂って下さいね!」
悪阻の妻かよ!
と皆は想ったが言わなかった
康太は瑛太に「妻の傍にいなくても良いのかよ?」と問い掛けた
「京香が傍に着いていてくれと頼んだのです
最近の康太は何かを悩んでいるのか、不安げな顔をする
だから瑛太、康太に着いていてやってくれ!
そしてこの子の名前を着けて貰ってくれ!‥‥とね」
瑛太は康太命の妻を誇らしげに伝えた
康太は「名前は慎一に預けてあるぞ?」と謂った
慎一は「帰宅したら応接間に持って参ります!主が墨にも端正を込めた命名の書を御見せ致します!」と執事として伝えた
康太は瑛太に「京香に似てた?」と問い掛けた
「やはりあの子なんですね
‥‥‥笙と明日菜の子の筈なのに‥‥‥
最期に抱いたあの子と同じ顔をしていたので‥‥私も京香も泣けました
父さんも母さんも泣いていました」
「やっと還れたな」
今度はちゃんと父と母の腕に抱かれ痛い事はない日々を送ると良い‥‥
康太は「何か今日は疲れたから寝てぇな」と呟いた
瑛太は「食べ終わったら帰りましょうか?」と伝えた
康太と榊原はパスタとサラダを二人で仲良く完食し
残りのプリンアラモードはお口を開ける烈にポイポイ放り込み完食となった
子供達もプリンを食べ終えて還る事となった
飛鳥井の家に還り子供達は慎一に預けて康太と榊原は寝室へと向かった
寝室に入り服をポイポイ脱いで逝く康太に榊原は
「本当に眠いのですか?」と問い掛けた
「徴収すんだろ?伊織」
「疲れてませんか?」
「疲れていると言ったら寝かせてくれるのかよ?」
「ええ。寝かせてあげます!
その代わり起きたら美味しく戴きますけどね」
康太は榊原らしくて笑った
「伊織、目が醒めるまで深い眠りに堕ちようぜ!」
「ええ。君となら何処へでも共に逝きますとも!」
榊原も服を脱いで下着も脱ぎ捨ててベッドに入った
抱き合う互いの熱が愛しくて‥‥二人走らぬ間に眠りに堕ちていた
年末と言う事もあって忙しかった
やらねばならない事が山積していた
だがそんな事は毎年の事だし、そんなのは日常だった
ならば何がこんなにも康太と榊原を弱らせているかとすれば‥‥‥
我が子に告げると謂う現実のカウントダウンがなされたからだ
平気な顔をしていても‥‥不安がない訳ではない
康太と榊原は神経を削って過ごして来たツケが回ったのか?
睡眠不足で回ったのか?
定かではないが‥‥眠りに堕ちた
優しい帳が二人を包んでいた
次に意識が覚醒したのは‥‥胸と股間にどうしょうもない快感を感じてだった
パチッと目を開けて快感の先を目で追うと‥‥
榊原が康太の股間に顔を埋めていた
まだ元気のない性器の先っぽを舐めながら
「必ず聴取すると約束したでしょ?」と笑って謂った
「目覚めるなり‥‥刺激強いって‥‥」
「もう目が醒めたでしょ?
ならば、君も協力的になってくれると有難いです」
「オレに何をしろと?」
「君の下のお口に挿れる指でも舐めて僕を興奮させて下さい」
不敵に笑う顔には二人の愛の構築が必要だとでも謂う意図が含まれていた
愛を確かめ合わせねば‥‥
嵐が来ても、大型台風が来たって揺るがない愛を確かめ合わせねば‥‥
何も不安に感じすとも互いがいれば良い
そんな愛の確認と再構築が必要だと謂わんばかりの榊原の想いを受け入れ康太は不敵に笑った
康太は榊原の手を取ると指をペローッと舐めた
榊原から目を離さず舌が淫靡に榊原の指を口に含んだ
ネットリと舐められ吸われ‥‥榊原の下肢は‥‥臨戦態勢に突入した
「なぁ、どうして欲しいよ?」
上目遣いで誘われ‥‥榊原の理性も風前の灯となる
「君が欲しいです
僕に君を下さい」
康太は榊原の指を口から出すと‥‥唾液がネバッーと滴り糸を引っ張っていた
「食べてやるから、お前を味見させろよ」
「なら僕も味見させて下さい」
「仕方ねぇな」
康太はニカッと笑った
康太は榊原を押し倒すと榊原に股がり‥‥股間に顔を埋めた
そして叢に聳え立つ肉棒に唇を寄せた
茎をネットリと舐めあげ亀頭のお口を舐める
榊原も負けずと康太の双丘を開くと、慎ましく綴じてる蕾に唇を寄せた
舌で皺をなぞるとヒクヒク蠢き
指を差し込むと美味しそうに食べ始めた
腸壁を掻き回すと歓喜した腸壁が畝って煽動した
康太は榊原の亀頭の頭を吸った
お口が開いた鈴口をペロペロ舐めて舌を差し込んだ
指は雁首にそってなぞられ‥‥イボを逆撫でした
舌は陰嚢を掻き分けて奥へ奥へと進む
これ以上やられたらイクしかない榊原は、康太の体躯を起こした
「もっと‥‥」
と謂う康太の唇を接吻で塞いで滾る肉棒を‥‥
下のお口に挿し込んだ
「あっ‥‥あぁっ‥‥伊織のケチっ‥‥」
康太はまた舐め足りないとばかりに文句を謂った
康太の中へ入り込んだ榊原は動かなかった
「ケチなので動くのは止める事にします」
それは困る康太は‥‥腸壁を畝らせた
決定的な刺激が欲しい‥‥‥
なのに与えてくれない榊原に焦れて康太は腰を動かそうとした
それを押さえ付けられ康太は「意地悪すんなっ‥‥」と甘えるしか出来なかった
「康太」
榊原は康太の名を呼び口吻けた
「伊織‥‥愛してる」
康太からも榊原に口吻け
二人は強く抱き合った
「僕達は何も怖がる必要などなかったのです
僕は君さえいてくれるなら‥‥どんな事でも耐えられるし立ち向かう勇気が出るのですから‥‥」
「伊織‥‥‥お前がいてくれるのに‥‥
オレは何を怖がっていたのかな?
お前をなくさなくても良いのならオレは‥‥何だって出来るって誓ったのにな‥‥」
榊原は康太を抱き締めた
「愛してます炎帝
僕は君の為にだけ生きているのです」
「愛してる青龍
オレもお前の為にだけ生きているんだもんな」
互いを失くさなくて良いのなら生きていけるのに‥‥
不安に足を掬われて‥‥互いを見失う所だった
榊原は少しずつ腰を動かし腸壁を肉棒で擦り上げた
甘い康太の喘ぎが部屋に充満する
互いに必要な時間だった
貪り尽くすまで榊原は康太を求め
康太も榊原を求めた‥‥‥
情事が終わり浴室で体躯を洗って貰う時の康太はヘロヘロになっていた
「伊織、今日は大掃除しねぇのかよ?」
「‥‥‥応接間とキッチンと自分達の部屋はします‥‥
子供部屋は子供達に頑張って貰いますかね?」
榊原らしくない物言いに康太は笑った
「今年はそれで良いのかよ?」
「良いんですよ」
「お前が良いならオレもそれで良いや!」
康太は榊原にチュッと口吻けた
榊原の体躯は康太がゴシゴシ洗い、泡を落として湯船で暖まった
榊原は康太に「もう大丈夫ですか?」と問い掛けた
「おー!大丈夫だ!
オレはどうあってもオレにしかなれねぇんだからな!」
ならば、それで良いと康太は答えた
榊原は優しく康太を抱き締めて
「ならば僕も僕らしく有らねばなりませんね!」と笑った
もう揺るがない瞳の榊原だった
蒼い正義と秩序の鎧に身を包んでいた頃の青龍みたいに、意思の強さを感じさせる瞳をしていた
「オレの蒼い龍だ‥‥」
「愛してますよ奥さん」
「愛してる青龍」
康太は榊原の首に腕を回して抱き着いた
「出ますか?」
「おー!飯を食おうぜ!伊織」
「そしたらやはり飛鳥井の大掃除に突入します!」
「やっぱやるのか?」
「やはりね、僕と謂ったら綺麗好きじゃないですか!」
「だな!」
「ならばとことん、君の好きな僕でいたいじゃないですか!」
「どの伊織も大好きだ」
「だから僕は強くて厳しい母のサポートをする存在として君と共に生きて逝きます!」
「ならオレは‥‥この先も厳しい母で良いな」
「ええ。君は君の想いのままに‥‥」
榊原はそう言い康太の手の甲に口吻けを落とした
そしてそのまま立ち上がるとシャワーで体躯を流して浴室を出て行った
体躯を拭いて髪を乾かすと榊原は康太に服を着せた
榊原も髪を乾かすと、掃除しやすい服に着替えた
二人して手を繋ぎキッチンへと向かう
途中、子供部屋に顔を出すと‥‥‥
子供達は桜林の体操服に着構えて臨戦態勢バッチしとなっていた
流生は康太を見るとニコッと笑ってハタキを手にした
「よち!やるじょー!」と気合い入りまくりな我が子を見て
康太は「あんで体操服なんだよ?」と問い掛けた
それに答えたのは翔だった
「とぅちゃがいちゅも、そうじはよごれてもいいふくにしなさいといってるから‥」と答えた
榊原は「準備は万端ですね!では食事の後、掃除に突入しますよ?」と問い掛けた
「「「「「「おー!」」」」」」
6人は気合いの返事をした
キッチンへと向かいと、既に食事を取っていた瑛太と清隆もadidasのスポーツウエアを着ていた
想わず榊原は「どうなさったのですか?」と問い掛ける程だった
瑛太は「会社の掃除が終われば次は飛鳥井の家の掃除が恒例行事なのではないですか?」と何を聞く!とはかりに謂われた
玲香もジャージを着ていた
聡一郎や隼人、一生に慎一もジャージを着ていた
音弥は「たべたらそうじなにょ!」と気合いを入れた
玲香は「桜林の幼稚舎の体操服とは、可愛いではないか!」と孫にデレッとしてそう言った
康太は慎一が用意してくれた朝食を黙々と食べていた
「康太、体調が宜しくないのですか?」
慎一は心配して問い掛けた
「何かさ‥‥未だに‥‥伊織が挟まってる感じがするんだよ」
と康太は怠そうに謂った
一生は飲んでるお茶を吹き出した
「一生!」と聡一郎に飛ばして怒られたが‥‥
「悪い聡一郎‥‥旦那!‥‥」
文句を謂おうにも‥‥
榊原は艶々で上機嫌だった
「何ですか?一生?」
「掃除の前に‥‥んな体力消費せんでも‥‥」
「康太に使う体力は別腹ですから!」
榊原はそう言い笑った
揺るぎない笑顔だった
もう不安も根こそぎ彼方へやっつけたかの様に‥‥自信に満ち溢れていた
一生はケッと吐き出して
「旦那、スィーツ好きの女子みたいな言い分‥‥」とボヤいた
家族は笑っていた
年末最大のイベント【大掃除】の火蓋が切って落とされた
今年の掃除も‥‥榊原が手を抜かず家族はかなり綺麗に磨きあげさせられたのは‥‥謂うまでもない
【追記】
京香の娘は紬(つむぎ)と謂う名前になった
飛鳥井 紬
京香に良く似た女の子の誕生だった
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