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第16話 自粛なGW

新型肺炎なる病気が倭の国に蔓延し、人々に病を撒き散らし、人は外出を避け‥‥‥ 人との距離を2メートル以上取らねばならなくなった コロナ離婚なる言葉も流行りだし‥‥ 人々の心は‥‥闇に染まった そんな今年のGWは‥‥自粛するしかなかった 子供達は学校にも行けず‥‥ 淋しい日々を送っていた 塾や教室も感染を危惧して閉鎖が相次いだ それでも飛鳥井の子は日々、前向きに日々を過ごしていた 翔は暇な時間を使って鍛練していた 流生や音弥、太陽、大空、烈は通っている教室が閉鎖され兄弟全員で菩提寺へ行き修行に明け暮れた 学校が休みでも勉強は子供達の専属の人間が見ていた 子供が初等科に入学して、子供達専用に動いてくれる人間を飛鳥井の家に入れた 子供達に同行するのは、護衛のケント・マクガイヤーと運転手兼世話係をする有栖院栗栖 年齢は28歳、色素が薄いからか、全体的にハーフの様な容姿を持つ青年だった 彼は合気道の段持ちで、顔に似合わず腕の立つ男だった 無論、呪術に長けて、子供達を護るのにうってつけの人材だった 彼は飛鳥井の家に住み込み生活を始めていた 最初は彼の持つ容姿に榊原も警戒していたが、彼は康太の親友だと謂われれば‥‥警戒を解くしかなかった 何故、今まで知らなかったのか? 榊原は不思議に想った 親友なれば何故、自分が知らないのか? 一生に「彼の事知ってますか?」と問い掛けると 「アイツは飛鳥井の道場の師範代を務める男だ!」と答えた 聡一郎に「彼の事知ってますか?」と尋ねると 「彼は裏で生きるものだとばかり想ってました‥‥表に引っ張り出して‥‥何する気ですかね?康太は‥‥」 と意味深に呟かれ‥‥ 榊原の苦悩は深まるばかりだった 隼人に「彼の事知ってますか?」と問い掛けると 「栗栖は栗田の事務所を手伝っているのだ!」 と謂れ‥‥‥更に疑問は深まるばかりだった 瑛太に「彼の事知ってますか?」と問うと 「ええ、無論!知らない輩を飛鳥井の家に入れるのは皆無ですし、家族が反対しますからね!彼の父親が飛鳥井の家の者なのですよ」 と更に疑問を深めた モヤモヤの疑問を康太に問うと 「栗栖の父親はお前も知っている綺麗の兄だ 飛鳥井 暦也と謂う 栗栖が何故、有栖院の名を名乗っているかと謂うと、それは両親が離婚しからだ! 栗栖の父親の暦也は‥‥‥破天荒な性格で一つの所にじっとしていない風来坊だ もう何年も‥‥行方不明となっててな、亜莉愛は暦也の仕事仲間って奴を通して、戻らないなら離婚すると脅したんがだな‥‥ 連絡一つ寄越さず、顔も見せなかったからブチキレて離婚したんだよ だから今の姓は母方の姓で、有栖院を名乗っている‥‥‥栗栖に親父の話はNGだ‥‥」 「苦労したのですか?」 「生活面の苦労はねぇよ! 何たって栗栖の母親は元華族 有栖院家の令嬢だ だが父親が‥‥音信不通になる前は‥‥かなりやらかしててな‥‥顔を見るのも話をするのも嫌だと‥‥‥なってるんだよ」 「‥‥‥何をやらかしたのですか?」 「まぁ上げたらキリがねぇ‥‥でも最大のやらかしは‥‥‥隠し子を‥‥栗栖に押し付けた事か‥‥ まぁ世界各国、出向いた先で手当たり次第土産だと送り付けられたり苦労したからな‥‥」 「隠し子‥‥‥それは‥‥何と答えてよいのやら‥‥」 「暦也の子じゃねぇよ! なのに暦也は栗栖に託した だから暦也の妻だった亜莉愛も育てているし、仲は悪くはない‥‥‥がな、もう7年も音信不通に亜莉愛がブチキレて‥‥実家に戻ったんだよ 今度はとことんやってやる!と栗栖が母を焚き付けてな‥‥離婚となった まぁ暦也もな‥‥放置しすぎだ、仕方がねぇ事だとオレは賛成した で、その栗栖の弟は有栖院有栖として大切に育てられてる」 「複雑なのか簡単なのか‥‥理解できかねる案件です」 「‥‥‥複雑な要素は一つもないやんか‥‥ 家族の仲は良いが‥‥親父の送り付ける土産と称するモノがな‥‥栗栖を歪ませた まぁ腕は確かだ、うちの道場の師範代だかんな! 陣内辺りに聞けば、腕が立つ男だと保証はくれるぞ!」 「彼の容姿は目立ちませんか?」 まるで貴公子の様に気高く可憐な立ち振舞いは貴族の様に洗練された社会の人間なのだとだと伺えられる 「だから護衛には持ってこいじゃねぇかよ? 子供達に目が行かねぇって事は最大の防御じゃねぇかよ?」 「成る程、聡一郎は、彼は‥‥表に出て来るべき存在ではないと謂ってました」 「あぁ、諜報員として閣下のお墨付き貰ってる存在だからな、秘密裏に隠密行動をさせて来たけど、此れからは裏には行かせねぇ だから表にだしたんだよ!」 何か考えがあっての事なのだと解る 榊原はもう何かを問い掛ける事は止めた 康太が決めた事なれば、何らかの目的があるのだろうから‥‥ 子供達は栗栖の事を気に入っていた 子供達はGWなのに遊びに行けずにいた 「まいにち‥‥‥じしゅく‥‥」 流生が呟くと大空も 「りゅー それはだめだよ いうだけ‥‥むなしくなるからね」と止めた 「かな、からだがなまりゅ」 流生が呟くと栗栖が「そうですね、運動しないと太る原因になりますからね!」と謂いやる気を出していた 「聡一郎、この家に地下の空いてるスペースは在りますか?」 栗栖が問い掛けると聡一郎は 「地下駐車場がかなりスペースあるよ 康太に聞いてみたら?」と謂うと、栗栖は康太の所へ走った 「コーちゃん!コーちゃん! 地下駐車場にトレーニングルーム作って良い?」 思い立ったら吉日、有言実行の男 有栖院栗栖だった 「おー!良いぞ! 慎一と打ち合わせて作ると良い」 「コーちゃん、請求書は何処へ飛ばしたら良い?」 「伊織に話を通しておくから、伊織に飛ばせ」 「了解!慎一!ねぇ、慎一ってば!」 栗栖は慎一の所へ走って逝った 応接間のソファーに座ってた聡一郎は 「彼って本当にギャップあるよね」と謂い笑った 黙ってれば人形の様な容姿なのに‥‥話せば幼さが抜けない純真さを持っていた 「ギャップあるのか、ねぇのか?解らねぇけどな‥‥‥言い出したらとことんやるから‥ スポーツジムよりもすげぇの出来るかもな‥‥ って事で伊織、工事費と器具代頼むな」 「解りました、500万見積もりで足りますか?」 「ちょい出るかもな、何たって‥‥こだわりの男 有栖院栗栖だかんな‥‥ 」 康太が呟くと、一生も聡一郎も隼人も頷いた 榊原は「彼は‥‥金銭感覚がないのですか?」と問い掛けた 何たって実家が元華族の血を引く金持ちだと謂うし‥‥ 「栗栖はな、本物思考の持ち主なんだよ! 紛い物を見抜く眼を持ってるんだよ! だからやるからにはとことんやる! 子供達の言葉にも嘘偽りなく応える それが栗栖だ だからジムばりの器具を揃えるだろうし 伊織も栗栖にトレーニング着けて貰えば良いさ! 栗栖はトレーナーの資格も持ってるからな ちなみに白馬の幼稚園の体操の道具は総て栗栖が出向いて決めてるんだぜ?」 「そうなんですか? 彼は師範代の資格も持っているのですよね?」 「あぁ、陣内と共に師範代の資格を持ってて稽古を着けている」 「凄い‥‥人ですね、子供達の面倒をさせるのが忍びないです‥‥」 「アイツは手当たり次第に資格を取らせたからな‥‥かなりの資格を所持してるぜ」 「彼の父親は君の駒ですか?」 「アイツの父親がオレの駒に収まるかよ‥‥ 飛鳥井暦也は‥‥‥何者にも囚われねぇ自由人だ‥‥ オレも音信不通になる暦也を駒にはしたくはねぇわな」 「逢った事がないので‥‥想像が着きません」 「逢ったらぶっ飛び過ぎたヤツだからな、相当驚くんじゃねぇか? 亜莉愛もな‥‥何で暦也なんかと結婚したのか‥‥飛鳥井の七不思議になってるぜ! ちなみに七不思議の中の一つが綺麗の結婚だ 絶対に結婚は無理だとされた綺麗が、結婚したのは今も七不思議の一つにされてる まぁそれも去年までだけどな‥‥‥ 今年の正月の一族詣出で、近々、離婚して再び飛鳥井に戻ると宣言したからな‥‥‥ 皆はやっぱり‥‥‥と納得したほどだからな‥‥」 「その七不思議、残る5つは、何なのですか?」 「それは秘密!」 康太はそう言い笑った 榊原は「何時か話して下さいね」とチュッと康太の頬に口吻けた 康太は幸せそうに笑って頷いた 綺麗は飛鳥井綺麗としての再出発を歩み出した どう謂った心境の変化なのか? 東青との婚姻は意味がないと終わらせたのだ 恋慕も未練もなくなった‥‥ならは踏み出すしかないじゃない! それが綺麗の出した答えだった 10代で愛する男に総てをかけて子を孕み‥‥‥愛する男とは結ばれる事なく東青の妻として子を産んだ 後はもう‥‥意地だけ通して生きて来た様なモノだった 研究に没頭して愛する男との子を東青に渡した‥‥‥ そして‥‥‥フッと気付いたら何もない‥‥ そんな自分に気付いて綺麗は東青と離婚した 結婚も唐突だったが、離婚も唐突だった 東青は最後まで離婚はしたくないと謂った そして償える事ならば‥‥綺麗をサポートし続けると約束した そんな東青の申し出を綺麗は笑い飛ばして撥ね付けた 綺麗は輝いて美しかった 晴れて独り身に戻った綺麗は、今度こそ自分だけの我が子を産みたいと、慎一を口説いていた 康太は榊原に「そろそろ還って来るかもな‥‥」と謂った 「誰がですか?」 「話の流れは栗栖やったやんか」 「栗栖の父親がですか?」 「そう、嵐が来るかもな‥‥」 飛鳥井暦也と言う男は常に嵐の中心にいた それが還るとなれば‥‥‥穏やかな水面も波立つと謂う事だ 榊原は康太の手を握り締めて 「僕は何があっても君を護ります」と誓った 「伊織」 「奥さん」 二人が良い雰囲気になろうとする時、流生が母に抱き着いた 榊原の膝には烈がドスンッと座った 榊原は笑って烈を抱き締めた 康太は「どうしたよ?流生」と声をかけた 「ばーたんたちこないね」 「仕方がねぇよコロナが流行ってるからな‥‥ 移さねぇ様に自粛しねぇとならねぇんだよ」 「‥‥‥わかってるけど‥‥さみしい」 「今年は何処へも行けねぇからな‥‥」 康太は榊原を見た 榊原は「今年はがまん週間ですからね‥‥下手な事出来ないですよね?」と困った顔をした 康太は「んなに淋しいならLINEすれば良いやんか!何の為に携帯を持たせてあるんだよ!」と笑った 「そうなのよね‥‥‥でもね‥‥」 出来ないと流生は謂った 康太は流生の頭をパシッと叩くと 「流生の薔薇が満開だから見に来て!とメールすれば良いやんか! そしたら逢いに来てくれるさ! 逢いたいと想ったら、こっちも動かねぇと逢えねぇんだぜ! 謂ってても届かねぇぜ流生」 と発破を掛けた 流生は携帯を取り出してLINEを開くと文字を打ち始めた 「ばぁたん じぃたん りゅうせいのばらがまんかいです みにきてください、さみしいれす」 と送信した すると流生の携帯が鳴り響いた 「もしもし」 流生が電話に出ると真矢の声が響いた 『流生、ばぁたんも淋しい想いをしてるのよ 今は‥‥厄介な病気が流行ってるからね‥‥逢いたいと想っても‥‥どうして良いか解らなかったのよ』 「ばぁたん‥‥ぎめん‥‥」 『謝らなくて良いのよ流生 逢いに行くから待ってて! そうよねGWなのに何処へも行けずに家にいるのよね ならば美味しいの沢山持って行くから待っててね』 「ばぁたん」 流生は泣き出した 我が儘なのは解っている だけど毎年楽しく過ごして来ただけに、今年は淋しすぎるのだ 『泣かないの流生 お外に出られないならば、家の中で楽しい時間を過ごせば良いのよ 明日はじぃたんちにお泊まりなさい! 今日は飛鳥井に逝くからね!待っててね』 真矢はそう言い電話を切った 暫くすると飛鳥井の家のドアフォンが鳴り響いた 慎一は玄関に向かいドアを開けた すると真矢と清四郎と何故か兵藤が玄関に立っていた 慎一は「珍しい顔ぶれですね」と笑って皆を応接間へと招いた 兵藤は「俺が来た時、清四郎さん達がもういた」と笑って康太の横のソファーにドサッと座った 康太は「久しぶりやん貴史」と声を掛けた 「おー!ロックダウンの憂き目にあってな‥‥出られなかったからな‥‥でもやっとこさ正義が専用機を出してくれたから還れたんだよ」 「ロックダウン‥ニューヨークか?」 「イギリスだ」 「それは‥‥‥偶然か‥‥必然か‥‥」 康太は苦笑して呟いた 兵藤は「必然だな」と謂いニャッと嗤った 康太はそれ以上は聞かず 「今日はもうお呼びはなしか?」と問い掛けた 「今まで働いていたんだぜ? お呼びが来たとしても俺は無視するさ!」 「なら子供達と遊んでくれ‥‥と謂いたいけど‥変な菌、持ち込むのは御免なんだけど?」 康太はそう言い我が子を兵藤から隠した 兵藤は「検疫受けねぇと空港から出られねぇじゃねぇかよ! 人を黴菌扱いしやがって!」と怒った 「でもさ、あの菌は二週間位潜伏するって謂うし‥‥」 「俺は秘密裏だからあんまし人と逢ってねぇんだよ! 空港には防護服着て顔が解らない様にして乗ってるからな! しかも向こうを出る時と、国に入る時に検査は受けたし‥‥ んなに厭なら還るけどさ‥‥‥」 康太は兵藤を抱き締めて 「悪かった貴史! 子供達とまだ遊んでくれ! お前が還ると子供達が悲しむ‥‥」 そう言った 子供達は大好きな兵藤君とばぁたん達が来てくれて、どっちに飛び付こうかと迷っていた 烈が真矢に抱き付くと、流生は兵藤に抱き付いた 「あいたかったにょ!ひょうどうくん」 「流生、ごめんな 兵藤君、日本にいなかったからな‥‥」 兵藤はそう言い流生を撫でた 太陽と大空は兵藤に抱き着いた 翔と音弥は清四郎と真矢に抱き着いた 音弥は「ばぁたん、じぃたん‥‥うれしい」と言い泣いていた 真矢は音弥と烈を抱き締めた 翔は「じぃたん、さみしかった‥‥」と清四郎に甘えた 清四郎は翔を抱き締めて 「移したら‥‥と考えると‥‥足が遠退いてました‥‥もっと早く逢いにくれば良かった‥‥」と淋しかった時間を埋めるように呟いた 慎一が清隆や玲香、瑛太や京香を呼びに逝くと、嬉しそうに家族は顔を出した その夜は久し振りに楽しい時間を過ごした 自粛ムードに包まれる倭の国は‥‥ 人に日常の大切さを思い出させた 自粛はまだまだ続くが、家族を思いやる心があれば大丈夫 きっと乗り越えられると想っていた 楽しい時間を送る その夜、飛鳥井の玄関の前に一人の男が立っていた 嵐が巻き起こる前兆の様に‥‥‥ 久し振りの楽しい夜は過ぎて逝った

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