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第27話 烈風狂瀾 ②

翌日の昼頃まで眠り、夕方近くはお酒は抜けて元に戻り 早目に夕飯を食べてから天照大御神と建御雷神を始め、金龍達は魔界へ還って逝った 康太と榊原は翔と烈を連れて横浜へと還って逝った 途中まで戸浪と一緒だった 戸浪は幸せな顔で家族を乗せて運転していた その姿を見て、康太は胸を撫で下ろした 沙羅も仲の良い海と煌星を見て、幸せそうに笑って還って逝った 飛鳥井の家に還る頃にはすっかり夜も更けていた 地下の駐車場に車を停めて、応接間を覗くと子供達が待っていた 父と母に飛び付き「寂しかった!」と留守番に拗ねて謂った 康太は「ごめんな!」と謝った 榊原も「仕事みたいなモノでしたからね」と連れて逝けない理由を口にした 流生は「ぼくたち‥‥みじゅくらから?」と問い掛けた 「違うよ!適材適所、配置するのがオレの役目だかんな! 今回は翔と烈を連れて逝ったんだよ!」 「れもね‥‥さみしかったのね」 康太は流生を抱き締めた 榊原は「今夜は母さんの寝相が怖くないなら、客間で一緒に寝ましょう!」と提案した 「「「「「「やった!」」」」」」 と子供達は飛び上がり喜んだ その日は子供達と客間で雑魚寝した 朝方‥‥康太の寝相の悪さで泣きながら目を醒ます子供達だったが、それでも両親といられて嬉しそうだった 康太の寝相の悪さにびくともせずに眠る烈は‥‥反撃だとばかりに康太に烈キックをお見舞いされて目を醒ました 目を醒ますと目の前に烈の足があり、康太は烈の足を掴んで足の裏をくすぐった 烈は「らめらめら!」と飛び起きた 榊原は烈を自分の方に抱き上げると 「母さん蹴ったらダメですよ!」と注意した 烈は顔の痛い部分を榊原に見せて 「かぁちゃ どすっやった!」と訴えた 榊原はあちゃーっと顔を覆った かなりの犠牲を出して起きると一生が笑って顔を出した 布団を慎一と共に畳みながら 「昨夜は眠れたか?」と問い掛けた すると音弥が「れつとかあさんのぱんちがさくれちゅした!」と訴えた 太陽も「ボコッドスッとたいへんらった」と訴えた 大空は口から血を流し、一生は慌てて抱き上げた 「あーんしてみろ!」 ティシュを手に口を開かせると、唇が切れていた 一生はティシュで口を押さえて 「慎一、唇の端切れてるわ!」と訴えた 慎一が消毒してバンドエイドをペタンとはる 一生は怪我してる子はないかと確かめた 聡一郎がやって来て「どうしたのよ?」と聞いてきた 一生は烈と康太のダブルパンチの寝相の悪さに怪我したと伝えた 聡一郎は爆笑した 隼人が「朝飯を食いに逝くのだ!」と誘いに逝くと、子供達は隼人と共にキッチンに走って逝った 聡一郎は「真矢さんの退院が決まりました!」と伝えた 「そうか、なら動き出すな」 「主演女優は仕事を下りると言い出して、収集が着かないみたいですよ?」 「宗右衛門が火種を巻き散らかして来たからな、あぁなって当然と謂えば当然なんだよ!」 「烈、毎日毎日お花を一輪流生に貰って、真矢さんのお見舞いに行ってますよ」 「義母さんも喜んだろうな!」 「真矢さんって何らかの力を持った人なの? 烈だけじゃない、太陽と大空を見る限り、飛鳥井の血だけじゃないよね?」 「おぉっ!鋭いな聡一郎」 「子供達を見てるとね、力が在るのが解るんだよね」 「これは真矢さんも知らない事だと想うが、真矢さんは御子柴一族の血が入っているんだよ 真矢さんの母親が御子柴一族の者なんだよ 若くして真矢の母親は亡くなった 父親も肺を患って若くして他界している 真矢さんは父方の親戚に盥回しにされ挙げ句に施設に放り込まれた 真矢さんは人を惹き付けて止まないかんな‥‥引き取られた家の親父や兄貴は真矢さんに夢中になり‥‥殺傷沙汰でまた他の場所へ‥‥とかなり大変な目に遭って来た 真矢さんの母親は夫と駆け落ちした 御子柴一族は里の外に出た真矢さんの母親を一族の者とは認めなかった‥‥‥ 血は随分薄くはなってるが、やはり御子柴の血も出ているのは確かだ」 「御子柴一族って謂うと東北の奥地に今も棲む潮来の系列の家ですよね?」 「あぁ死人を憑依させ声を聞く、潮来よりも制度は上の力を持つ一族だ あの一族は他者の介入を一切受け入れない閉鎖的な一族として今も存在している」 「霊媒師的な体質ですか? って事は太陽も大空も烈も‥‥視えているのですか?」 「どうだろ?あの二人はかなり食えねぇ性格してるかんな‥‥ 今は解らねぇが、この先顕著に出たらそれは御子柴の血だと謂う事だ 烈は飛鳥井の血が濃く出ている まさかオレは真矢さんが宗右衛門を生むとは想ってはいなかった‥‥ 始祖返りの子を産み出すには、潜在的な力を要するからな‥‥ オレは宗右衛門は一族の何処かに生まれるんだろうって思っていた まさか真矢さんが宗右衛門を産み落とすとは‥信じられなかったからな 少しだけ真矢さんの血筋を追ったんだよ」 だから御子柴一族の者だと判明したと謂う事なのか 「まぁ閉鎖的な世界は何時か終焉を迎える‥‥‥あの一族もな、遅かれ早かれその日は迎える その時‥‥真矢さんの母親の消息を追われたら、少し厄介な事になるだろうと、踏んではいる」 「血が廃れると言う事ですか?」 「外の血を入れれば血は薄まり、能力者を望めなくなる 中の血を濃くすれば、人ではなくなる‥‥ 人は紙一重の存在だからな‥‥狂気を孕めば朽ち果てるしかない 強い血を辿れば自ずと飛鳥井に辿り着くだろうからな」 「身勝手な‥‥そんな事は許せませんよ!」 「あぁ、許す気はねぇよ!」 康太はそう言い嗤った 真矢は一週間入院して、退院した 退院した翌日には撮影所に戻った だが撮影所は‥‥‥撮影処ではない有り様となっていた 監督は大切な時期に入院した真矢を責めた やるせない想いの矛先が真矢に向いていた 真矢は黙ってやり過ごしていた そこへ村松監督がやって来て、黙って真矢を見ていた 真矢は監督に気付くと「松村さんどうなさったの?」と声をかけた 「相賀さんが白日の元に撮影所の停滞を訴えました 大手の代理店は仕事を引き受けて多額のピンハネをしていたとの事です 代理店は倒産しました で、今後の撮影は私がメガフォンを取る事になりました 今いるスタッフは総て排除して取り直しをする事になりました そのご報告に来てのです!」 村松が謂うとADが監督の所へと走った 監督は聞かされていなかったのか?寝耳に水だった 「村松監督、貴方がショボいドラマの監督になると謂うのは本当ですか?」 嫌み臭く謂う 「本当です、スポンサーもそれに伴い変更となりました」 「スポンサーも? ナイロンの後にどの企業が来るのですか?」 「飛鳥井建設、白馬馬主協会、戸浪海運が加わります!」 飛鳥井建設と聞き監督は黙った 「あー!そうですね真矢さんは真贋のお母上に有らせられましたね!」 クックックッと監督は嗤った 村松は「どう謂おうとお好きにと真贋は謂われるでしょう! 要は無能な貴方達は解雇と謂う事です! 立ち去りなさい! 無論、損害賠償請求は致しております! テレビ局側の方としても、既に貴方達にも送付されたそうです!」 「俺は関係ないだろ? 飛鳥井家真贋が出られるなら、其方で対象なされば良いだけの事じゃないですか?」 皮肉に口を歪めて吐き捨てる 村松は‥‥‥あまりの胸糞悪さに黙った これ以上話をしても水掛け論にしかならないからだ‥‥ 何処からか「己に責任は皆無だと申されるか?それは笑える!」と声が響いた 振り返るとそこには飛鳥井康太が立っていた 母を護る様に烈が仁王立ちで監督を睨み付けていた その後ろに榊原が立っていた 「責任転嫁しておかないと撮影の遅れを問われるからな、無能な奴の考える事だよな?」 康太は更に挑発する 監督は「お前等がどんな作品を作るか楽しみにしてます! 精々頑張って遅れを取り戻して下さい!」と馬鹿にする様に謂った 「お前が作る作品よりは上を逝くだろ?」 その言葉に監督は「謂ってろ!クソガキ!」と毒を吐き出した 「そんな風に謂ってられるのも今のうちだけだ!なら謂わせておいてやるさ!」も康太は嗤った 其処へ所轄の刑事が捜査員と共に書類を携えてやって来た 監督は自分は知らない!上を調べろ!との一点張りだった 刑事に連行されて嫌々連れられて逝く時、烈が監督の歩く先に足を出した 監督は烈の足に転けてよろけて転んだ 監督は「このクソガキが!」と怒って烈の胸倉を掴んだ 烈は嗤っていた 祖母を傷付けた輩を許しておく気はなかったからだ! 胸倉を掴み上げられ、首が絞まる それでも烈は嗤っていた 慌てて刑事が烈を引き剥がしに逝くと、烈は泣いていた 刑事は「傷害で引っ張られたいのか!」と怒った 「アイツが足を引っ掻けて俺を怪我させようとしたんじゃないか! アイツは許されるのか?」 刑事は「お前、3、4才の子に目くじらを立てるな!子供のやる事だ許せないのか?」と呆れて謂った わーわー喚き散らす監督の姿に真矢は脅えた すると烈が真矢の手を握り締めた 「烈‥‥」 「らいじょうびよ! ぼきゅ、まもりゅきゃら!」 「ありがとうね、烈」 真矢は烈の横にしゃがんで烈を抱き締めた 刑事は祖母を護ろうとする烈の姿に感動していた まだこんなに小さな子なのに‥‥ 祖母を護る為に必死の行動に出たのだろう 刑事は監督をその場から連れ出した 監督が連れられて逝くと、スタッフ達もその場から去って行った その場に村松と康太と榊原と真矢と烈だけ残された 真矢は「こんなんで‥‥撮影は間に合うの?」と心配そうに呟いた 村松は「間に合わせる為に急ピッチで取り掛かります 脚本は伊織君が名乗りを挙げてくれたので、脚本が出来次第、急ピッチで取り掛かります 主演の女優はもう使えない程の精神的苦痛があったみたいで、相賀さんと加賀さんと神野さんとで配役を出して下さると謂うので、今調整しています 真矢さん、今日は撮影にはなりません なので、明日からお願いします」 「解りました‥‥ならば明日から頑張ります」 真矢の手は震えていた 烈は真矢の手を握り締めた 村松は「烈君、子役の役、君が穴埋めお願いしますね! 康太とはもう話は着いてますから!」 とニコッと嗤って謂った 烈は「え!‥‥ぼきゅ‥‥」と謂い母を見上げた 康太は「直ぐに台詞を覚えられる子役がいねぇんだよ!」と決まった事だと謂った 「いちろ‥‥らけらよ?」 「解ってんよ! お前は飛鳥井の人間だ! 他にはもうなれねぇんだよ! でもばぁちゃんが困ってるんだ! そこは助けてやらねぇとな!」 「わきゃった‥‥」 烈は子役として真矢と同じ土俵の上に立つ事となった 榊原伊織が急ピッチで脚本を仕上げると 撮影が始まった 朝、真矢は飛鳥井に来て烈と朝食を取り一緒に撮影所に逝く様になっていた 真矢は嬉しそうに笑っていた お子様な烈は夕方5時には栗栖がお迎えに来て、還る事になっていた 真矢は松村の指示の元、生き生きと撮影に挑んでいた 撮影は想った以上に順調に仕上がり、反響を呼んだ 監督を始めとする人間は経費の横領やスポンサーとの間の癒着を指摘され、裁判へと突入した テレビでは連日、監督達のずさんな撮影風景が語られ皆を驚かせた そんな事もあり、取り直しされた作品には人々の注目が集まった 前評判を呼んだ作品は、榊原真矢の『孫』との共演と謂う事もあり涙を誘った 烈は子役以上の仕事ぶりを披露して、相賀はすっかり烈に惚れてスカウトしまくりの日々となった 烈は「あと、いっかいにゃらいいよ!」と謂った 「一回?一回しかダメなのですか?」 「そうにゃにょよ! ぼきゅはあしゅかいのにんげんらから、それいぎゃいには、なれにゃい!」 と謂われれば相賀は引くしかなかった 「で、一回と謂うのは?」 「じぃたんとばぁたんがきょうえんしゅるにゃら、まごででたいにょね!」 「孫ですか、それは良い、色んな所に声を掛けて絶対に実現させて見せますとも!」 相賀は烈に約束した 烈は黙って笑っていた 榊 清四郎に酷似した幼き子は、己のルーツを知っているかの様に‥‥‥ 最後に一度だけ、祖父母との共演がしたいと謂ったのだ 相賀は須賀と神野に話をして絶対に実現させて見せると心に誓った ドラマは予定通りの放送となり、撮っては編集して放送させると謂う荒業を繰り返していた 最終回前には一回だけ間に合いそうもなくて総集編を入れたが、遅れたのはそれだけで最高の最終回となった 真矢の演技が際立ち 烈の存在感に視聴者は心を打たれた 榊 清四郎を彷彿させる顔に、子役である烈が注目を集めた 烈は榊原真矢の孫とだけ公表した そうして迎えた最終回のクランクアップを迎えた日 真矢は烈を抱き締めて泣いていた 烈は真矢の背中をポンポンしながら、慰めていた スタッフ達は、烈が真矢の生んだ子だと‥‥‥何処からか聞き、知っていた 祖母として孫の前で総てを出して演技する それに応えて烈も役者ではないのに、総てを出しきり役に成りきった 村松は撮っていて、泣いていた 最高の時間だと感謝したい位に胸が熱くなっていた 熱き想いの撮影もラストは泣きながら撮影していた 今回は女優榊原真矢の女優魂を見せつけられ、感動していた 総てを取り終えると「此れを持って撮影は総て終了となります!」と声が響き渡った 真矢はその場に崩れ落ちる様に、しゃがみ込んだ 烈が真矢に抱き着くと、真矢は烈を抱き締めた 「ばぁたん、らいじょうび?」 「大丈夫よ!烈」 真矢は烈の存在が嬉しかった そこへ康太と榊原がやって来て 「お疲れさまでした!」と労う声をかけた 村松は大きな花束を渡して貰い、それを受け取り泣いた その場にいた者達は、この撮影に立ち会えて本当に良かったと想った それ程の出来と反響を呼んだ作品となったからだ! 康太は真矢と烈に花束を渡した 烈は嬉しそうに少しだけ小さな花束を受け取り笑っていた 「かぁちゃ ぎゃんびゃったよ!」 「うし!烈は本当に良い子だ! お前の頑張りはちゃんと見届けたからな!」 康太が謂うと烈は頷いた 母に甘える姿は年相応のお子様に見えた 「義母さんも頑張りましたね!」 「康太、ありがとう 烈がいてくれたからね、私は頑張れたのよ!」 「烈の中にはお二人の熱き魂が受け継がれていますからね!」 「康太‥‥‥」 「でも烈はオレの子ですから!」 誰にも渡しません!と笑って謂った 真矢は「当たり前じゃないの!」と康太を抱き締めた 榊原は村松と話をしていた 真矢は「あら、どうしたの?」と康太に問い掛けた 「テレビ局の方から早々と続編の打診があったらしくてね それで村松監督は伊織と話をしているんだよ」 「続編?気が早いわね しかも烈は後一回しか出られないからね 続編でそれを使うのは嫌だわね 清四郎も烈と一度だけで良いから共演したいみたいなのよ 羨ましそうに謂うのよ、あの人 だからね、私も‥‥‥孫との最期の共演をさせてあげたいのよ」 「一度だけって烈が?」 「そうよ、あの子は飛鳥井の中で生きていく覚悟をしてるわ あの子は飛鳥井の中でしか生きられないのも知っているのよ なのに、一度だけ共演をしても良いと謂ってくれたの‥‥」 「そうですか、烈はそう言いましたか‥‥」 「ありがとうね、康太 本当にありがとう‥‥」 「止めて下さい! これは烈の願いでもあり、考えでもあるんですから!」 真矢は幸せそうに笑った 撮影を終えると後日、烈を退かした者達で打ち上げを約束して、その日は解散となった スタッフや監督はこの後、怒濤の編集をして最終回を間に合わせねばならないからだ 連続ドラマの撮影は終わりを告げた 仕事を終えた真矢は榊原の車に乗り、康太と烈と共に飛鳥井の家に還って来た クタクタに疲れて応接間へ向かい、ソファーに座った 烈もソファーに座ると、何処から現れたのか虎の様な模様の猫が烈に飛び付いた 「あちゅい‥‥」 烈は外から還って来たばかりで、まだ涼んでないのに‥‥と想い呟いた 流生が烈にベタッと引っ付いている猫を剥がす 「とらのすけ!ラメらよ!」 怒られると猫はクシュンとして項垂れた 真矢は虎の様な模様の生き物に 「ベンガル虎?‥‥‥何故虎が‥‥‥烈、大丈夫ですか?」と心配そうに問い掛けた 「流生も虎なんか触ったら危ないわよ!」 真矢が謂うと流生は「ねこらよ、ばぁたん」と謂った 猫? この猫のどこら辺が猫?????? 真矢は猫と謂われたのをマジマジ見た そこへ康太がやって来てソファーに座った とらのすけと謂われた猫は、康太の膝の上に飛び乗った 「この猫はトイガーと謂う種類の猫です 虎じゃありません!だから安心して下さい」 虎之介は康太の膝の上から、烈に飛び乗り当然の顔をして寄り添っていた 「この猫は烈の猫なんです」 「え?烈の?‥‥‥でも高そうよ?この猫‥‥」 「ええ、高いです 60万から80万相当の猫で、しかも人気の種類で生まれる前から予約をしないと手に入らない猫だそうです!」 「え?そんな猫がどうして烈に?」 「兵藤さんちの貴史が‥‥‥新しく飼い始めた猫を飛鳥井にお披露目に来たんだよ Toy(おもちゃ、可愛がる) Tiger(虎)の2つの単語による合成語でトイガーと謂う猫なんだけどな‥‥ どうやら、その猫‥‥烈が気に入ったらしくて、烈から離れなかったんだよ 家に還る時も逃げ回って捕まえるのに苦労した でもって家に連れ帰った日から飯を食わなくなったらしくて‥‥痩せて死にそうになっても飯を食わなかったらしいんだよ 貴史はもう飛鳥井には連れては行かねぇ!とヘソを曲げて、烈にその猫をプレゼントしてくれたんだよ で、虎之介は飛鳥井に居着いて、烈の猫になったんだよ」 と経緯を話した 真矢は兵藤のやるせなさを想い‥‥‥ 「近いうちに私が貴史に猫をプレゼントしましょう!」と約束した しかし‥‥‥兵藤んちの動物はハンスとして死にそうになり飛鳥井に来るのが好きなのね‥‥ と、真矢は想った 虎之介は烈の膝の上にいた その場が自分の指定席だと謂いたげに、離れるのを拒否っていた 「トイガーって猫は甘えたり、じゃれたりする猫じゃないらしいんですがね、烈には逢った瞬間、惚れたらしくて傍を離れないんですよ」 「貴史は‥‥納得したのですか?」 「‥‥‥死にそうな猫を見たら諦めて折れるしかなかったとボヤいてました‥‥」 「まぁ‥‥康太、私が貴史の猫は貰って来るわ ちょうど私の友人の猫が赤ちゃんを生んだらしくて、声を掛けられた所なのよ! ピクシーボブと謂う種類の猫なんですがね、烈の戴いた猫よりは安いですが、丸々のフォルムがにゃんこ先生みたいで可愛いそうよ! どう?貰っちゃいましょうかね?」 「貴史も喜びます 猫は値段じゃないですから! 貴史は虎之介の値段ではなく、柄が気に入って3年待って買ったみたいですし、アイツは長年飼ってた猫と犬がこの世を去ったので、寂しさを埋めるみたいに飼っているんですよ なので懐いて可愛いヤツなら大喜びですよ」 「前は何を飼っていたの?」 「ロシアンブルーの猫です」 「まぁやはり血統書つきよね?」 「今飼ってる犬はコオの母さん犬の血を引くコーギーですから、血統書なんてないですよ アイツは別に血統書とか選んで飼ってる訳じゃありませんですから!」 「そうなの、なら聞いてみるわね」 真矢は嬉しそうに呟いた 烈は虎之介を背に敷いて、栗栖が出した宿題をやっていた 栗栖がせっせとその子に合った課題をやらせる 康太の子は勉強タイムに突入して、課題を片付けていた 瑛太が帰宅すると、応接間の真矢を見付け玲香に「清四郎さんも呼んで下さい」と謂った 玲香は清四郎に電話を入れた すると清四郎は家にいて、直ぐに逝くと約束した 玲香は慎一に後を頼んで着替えに向かった 清四郎が飛鳥井にやって来ると、やはり虎之介にビックリしていた 真矢は元は兵藤の猫だったと話した そして兵藤に猫をあげる事を夫に告げた 清四郎は大賛成して、友人の俳 木瀬大輔優の犬が子を生んだのを思い出し電話をかけた 話はトントン拍子に進み、清四郎の友人の俳優の木瀬大輔は子犬を譲る事を約束してくれた 兵藤は大変だなと想い康太は笑った 後日清四郎はベドリントン・テリアを兵藤に譲り渡す事となった 烈が巻き起こした台風は兵藤を巻き込み 吹き荒れる ワンとにゃんが手に届いた翌日、飛鳥井に呼ばれた兵藤は清四郎と真矢から 「うちの烈が君の猫を盗ってしまって済まなかったね!」と謝罪された 兵藤は「飛鳥井に連れて行った俺がいけなかったのですから‥‥ 美緒にもお前が悪いと謂われました」と困り顔で答えた 真矢は「ピクシーボブと謂う猫なのよ」と謂い 兵藤に子猫を渡した 兵藤は子猫を受け取り、嬉しそうに 「え?貰っても良いのですか?」と問い掛けた 「ええ、是非受け取ってね! 烈の猫よりは安いけど‥‥可愛い子なのよ」 「本当に可愛いですね 別に値段でペットを選んでませんから‥‥ 子猫なら尚更嬉しいです」 そう言い兵藤は笑顔で猫を撫でていた 清四郎も「なら私も君の為に友人から貰い受けて来たよ!どうぞ!」と謂いベドリントン・テリアを渡した 「ぬいぐるみ‥‥‥ですか?」 兵藤は動かないモコモコを見て呟いた 「違うよ、生きてる子だよ 緊張してるのかな?」 清四郎はワンを兵藤に渡して、不安そうに呟いた 「ありがとうございます この犬種は珍しいのに、貰っても大丈夫なのですか?」 「俳優の木瀬大輔って謂うのがいるだろ? 彼は無類の犬好きで、自分の犬の子供が欲しいと生ませたばかりなんだ 『清四郎さん一匹どうですか?』と声をかけられていたんだがね、その時は返事をしなかったんだよ うちはワンの世話が出来る人間はいないからね、貰っても可哀想だからね‥‥」 兵藤はワンも受け取り苦笑した 木瀬大輔って‥‥30逝くか逝かないかの俳優で、新進気鋭の若手俳優として有名な人だ そんな人の犬だなんて‥‥ 兵藤はワンも撫でながら想った ワンもにゃんも兵藤を気に入り、飼い主として認めたのか、懐いて傍にいた 清四郎は兵藤に 「木瀬君がね、ワンの成長を定期的に確かめに来ると謂っているから、その時は協力してくれないかな? 彼は無類の犬好きなんで、譲渡した先の犬がちゃんと飼育されているか‥‥‥まで心配するヤツなんだ 私は彼のそんな実直さに惚れて友人にして貰ったんだが‥‥嫌なら私から謂っておくので写真でも定期的に撮らせてくれるだけで良いから‥‥」 と困った感じで口にした 兵藤は「構いませんよ!何時だって御見せすると伝えて下さい!」と約束した 清四郎はニコニコと笑っていた だが兵藤はまだ知らなかった 木瀬大輔が兵藤んちの桃太郎に惚れて暇さえあれば会いに来る様になるなんて‥‥‥ 想像が出来たろうか? それはまた後日、別のお話で‥‥ 兵藤のにゃんはモコモコのマダラ模様でマンチカンとは違う毛触りで模様が特徴の猫だった フォルムはにゃんこ先生風に育つと謂う事で兵藤は楽しみにしていた 真っ白な毛並みのワンはぬいぐるみみたいに可愛くモフモフな毛並みだった 兵藤は猫を「れつ」ワンを「りゅー」と名付けた 康太の名以外のペットを自分で着けた事に美緒は驚いていた 桃太郎は突然のライバル出現に‥‥ 『負けないもん!』と頑張るのだった

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