42 / 56

第42話  今世紀最大の喧嘩 帰国したわよ、その後

アメリカで烈は今世紀最大の喧嘩を売りに行った そんな喧嘩は大成功で終わり 雑務に追われつつも何とか倭の国へと帰国した 清家は烈達と共に倭の国へと帰国した 清家は一生が烈の言う事を真摯に聞く事が不思議で堪らなかった あの、康太命の一生が、康太から離れて烈のサポートに単身アメリカに来たのも驚きならば、烈を護ろうと全身全霊かけているのも不思議で堪らなかった お前…………いつの間に……こんなに変わったんだよ と想う 帰国して連れて来られた、飛鳥井の家が何時の間にか変わっていた その経緯は…………ニュースを見てれば何となく理解した 飛鳥井の家に来て夜は宴会へ突入して、榊原に文句言うつもりだったのに……… 文句も言えなくて………… そればかりか泊まっていけよ!と謂れ客間に布団を敷いて眠った 朝方……布団に慣れくて目が醒めて………眠れなくてゴロゴロしていた テレビでも見ようかな?と応接間へ行くと、康太と榊原と兵藤と一生と聡一郎がソファーに座っていた 康太は足を組むと唇の端を吊り上げて嗤った あ!!そのポーズは何時も康太がしていたポーズだった 烈が自然にやるから………あれ?デジャヴ?と思っていたのだ 康太は「お前、伊織に文句言ってやるつもりで飛鳥井の家に来たんだろ?」と言う 清家は「そーだよ!でも何か………割り込めない話になり、その後ゴリ押しで宴会になり、切り出す事も出来なかったんだよ!」とヤケになり言う 康太は「伊織、お前、文句聞いてやれよ!」と言う だが榊原は「もう文句も謂う気なんてないでしょ? サドで冷酷ぶった気質さえ烈に叩きのめされ、ボキボキにへし折られ、砕かれ粉々にされ…… 培った能力や矜持さえへし折られた今 君は前の自分を捨てたんです! 近い内に宗右衛門が許婚を用意される筈です! その前にサドが改善され良かったですね!」とサラッと言い笑った 清家は「…………何か腹立つ!」とボヤいた 一生は「止めとけ!口で伊織に叶わねぇから、謂うだけ無駄だ!」と止めた 兵藤は「レイの生い立ちが気になるそうだぜ!静流は! 俺の口からは次代の真贋の生い立ちなんて恐れ多くて……言えねぇよ」と言う 清家は慌てて 「…………もう良いよ、実際並べば言葉なんて引っ込んだよ………」とボヤいた 康太はそんな清家の言葉なんて無視して 「レイモンド・グランチェスタは兵藤貴史が弄び捨てた女性が生んだ子供だ! 今は飛鳥井レイモンドと言う名で、名実共に飛鳥井の子供だ!そして次代の稀代の真贋を継ぐ子だ!」と口にした 敢えて言われれば………言葉なんてなくすって! 兵藤は何も言わなかった 榊原は「飛鳥井の果てが歪めさせられたのです! で、飛鳥井以外の腹で次代が誕生してしまった それだけの話しです! 器など些末な事だ!と、宗右衛門ならば謂うでしょうね!」とサラッと受け流す 清家は自分はまだ其処までの領域には達してないってば…………と想う そこへレイがやって来て、ニブルヘイムの声で 「私がいない場所で、私の生い立ちを話すのは止めてくれませんか? 私は烈の為だけに存在する! そして炎帝の想いに報いる為だけに転生した それだけの事ですから!」と文句を言った 康太は笑って「まぁ隠そうともしねぇから余計気になるんだろ?」と言った 「私は容姿はアレですが…………隠す事なんて何一つ有りませんから! 容姿はアレですが、別に烈曰く容姿なんて些末な事なんですから!」と言う 兵藤は「容姿はアレですが………って悪かったな! 母親に似れば良かったってお前も謂うのかよ?」とボヤいた 「言いませんよ! 誰に似てようが、ボクは飛鳥井レイモンド! 烈のレイですから! でも私は想うのですよ ………もしも来世………誰かの腹に転生しても………… 私はこの容姿のまま………ですからね 両親にしたら堪らないでしょうね 絶対に離婚案件ですよ! 愛し合い、子を成して出産したとしても………えぇぇぇぇ!外人!!!となりますからね 忌日を遺して置く必要がありますね!」 康太も「だな、愛の結晶が、誰の子?ってなったら大変だもんな!」と同意する 「私は巫女に降ろさせ孕んで貰う形式取らないと、夫婦の愛が冷えた先の子供は悲劇ですからね また虐待の日々は嫌だったりしますよ!」 「それも追々、宗右衛門と相談して決めるとするわ!で、お前、其れだけで此処に来ねぇよな?」 レイはニコッと笑うと 「かじゅとれちゅ なかよちよ!」と言った 一生は「え?俺?あぁ……俺と烈が仲良しだと変だと思ったのか?静流は?」と問い掛けた 清家は「嫌………お前はさ何が何でも康太の為にしか動かない…………イメージが強くてな 少しビックリしただけだ!」と話す! 「烈は飛鳥井宗右衛門の転生者で、飛鳥井では絶対的な存在だ! それは頭では解っていたが…………俺は烈を蔑ろにして来てしまった経緯があるんだよ 烈がどうの………じゃなくて、レイが飛鳥井の家へと来たら貴史は傷付くんじゃねぇかな?って心配し、椋は東矢の転生者だから、それが解ると榮倉は…………どうなるのが?心配して………俺は康太と伊織、そして飛鳥井の家族を怒らせた 下手したら俺は弾かれて……飛鳥井にはいられなくなっていたかも知れねぇ………… 俺は烈が何も期待せず、諦めて過ごした過去を知っていて………何処かで烈を見下していたんだよ それを指摘され………気付いた時には烈は姿を隠して何処にいるかさえ解らなかった 俺は最低の事をした自覚ならあるんだよ! だから今 烈に尽くしている訳じゃねぇよ! 烈は牧場の管理もしてくれてるんだよ 本当に感謝しても足らねぇよ!」 と、一生は本音を吐露する レイは「かじゅ、いっちょにねよ!」と手を出すと、一生はレイと手を繋ぎ立ち上がった 「レイ、寝る前にトイレに行け!ドアの前で待っててやるから大丈夫だ!」 「かじゅ……きえにゃいでね……」 「大丈夫だ!」 レイを抱き上げる一生は昔からは想像する出来ない優しい顔になっていた 応接間から一生が消えると、今度は烈が顔を出した 「兵藤きゅん、寝ないの? りゅーまが部屋で待ってるわよ! 真央たんも何処行った?って心配してるわよ!」 兵藤は立ち上がると「おー!今行く!」と言い烈を抱き上げて応接間を出て行った でも烈だけ引き返して来て 「そーちゃん、早く寝ないとお肌の大敵よ!」と言うのを忘れなかった 聡一郎は「なら僕も寝なくっちゃ!」と応接間を後にする 烈は母に「母しゃん、清家の嫁は僕が見つけるわ! 真央たんの口利きで、文句の付けようのないおなごがいるらしいから、その子を娶る様に尽力するつもりなのよ! そしてついでに国会に行き未熟者を生涯独身の儘、国の為に尽くさねばならないって事を皆の前で告げるパフォーマンスをやらないとね 次代の総理候補が独身だとファーストレディーがいないのは変だ、と囁かれつつある方も片付けちゃうわね、この機会に!」と告げた 康太は自分達は世間ではいい年した大人にカウントされる現実を重く受け止めていた 康太は「宗右衛門が出られますか?」と問い掛けた 宗右衛門は皮肉に口の端を釣り上げて嗤い 「真贋が出られるまでもない! 雑務は儂が片付けるのは前世よりの事じゃろ! この機会に清家の立場を不動なモノにしてやろう!儂の前に現れた時点で、清家の分岐点の道は決まったも同然じゃからな!」 「誰を妻に据えられるのですか?」 敬語で話をする康太の姿に、康太でさえ一目置く存在なのだと理解する 「松川屋円十郎が息女 椿姫は女優をしておる!  おなごで無ければ跡を継げれる才能ある息女じゃ!その娘を清家の家に嫁がせる!」 「え!松川屋、また偉い所をチョイスされるのですね!」 「押しも押されぬ存在になれるじゃろ!」 母に報いる為に尽力したのかと思うと……胸が熱くなる 清家は黙って聞いていたが、自分の妻となるべき存在が凄い所をチョイスされ焦る 松川屋? 冗談だろ? テレビで大人気の女優………あの人が妻になる? 何か言おうとした矢先に宗右衛門に 「清家静流と言う歪な器に入った存在は消し去ってやった! 痛みしか生きている証じゃないとしか感じられない、サド的な性格は圧し折ってやったわい! 主はもう対等に人と接して、対等な存在を愛せるであろう! 多分、出会った瞬間、主等は恋に堕ちる そして清家静流は生涯を賭して妻を愛するじゃろう! またそうして貰わねば母に報いる為に動いた意味がない! 儂と阿賀屋蒼佑が仲人となり、婚姻を完遂してやろう! そして更に精進して、再び儂の前に立つ日を楽しみしておる!」 と言い、烈は応接間から出て行った 康太は烈を見送り 「ソツがねぇよな!んとに宗右衛門は!」とボヤいた 榊原は「そんなお節介な所は君にソックリですよ!」と言う 「何故か皆、オレと烈はコピーの様ににてるって謂うんだよな………血は繋がってねぇのにな!」 「君の魂を与し存在なんですよ! あの子は君に報いる為に雑務をせっせと片付け、完璧な存在へと配置する! 昔から宗右衛門は君の為に骨身を削って来たのですからね! まぁ飛鳥井宗右衛門と阿賀屋蒼佑が仲人になるなんて最強過ぎて文句つける存在なんて誰一人いませんよ! そして、この機会に静流以外も片付けてくれるのですね まぁ宗右衛門が出れば騒いでた連中は黙りますよね! オブライエン家を敵に回す様なモノですものね しかも【R&R】のイベントに足蹴く通うエミリア王女の姿もありましたからね アメリカのイベントも通い詰めていたんでしょ? 彼女は【R&R】のファンだと公言してましたからね………文句言えば海の向こう側から横槍飛んで来るので言いたくても謂えませんよね!」 と楽しげに言う 清家はもう何か言う事を止めた 更に磨きを掛けて怖くなってるよ………… 榊原は妻に「さぁ部屋に戻りダラダラ時間まで過ごしますよ!静流、君も布団に戻りダラダラ過ごしなさい!」と言い応接間を出て行ってしまった 一人になった清家は客間に戻り布団に入った 今の自分は楽に息が吸える 総ての凝り固まった鎧が削ぎ落とされ、粉砕され、丸裸にされたのだ 弱みも本音も矜持までもズタボロにされたのだ そして丸裸にされ、新しい自分に創り変えられた もう人を傷つける愛は欲しがらない 痛みを知った 痛みは何も生まない事を知った そして優しさを知った 仲間の有り難さを今更知った 共に舞台に立つ仲間の存在の有り難さを知る そんな当たり前の事に今更気付かされた そんな今だから…… 人に優しくなれると想う 清家はまだ見ぬ未来を想い 目を瞑った 明日はきっと光り輝く未来に満ちているに違いない 苦しみも悲しみも………共に分かち合える存在と出合えるならば………… まだまだ踏ん張れるに違いないからだ……

ともだちにシェアしよう!