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第43話  安曇家 ❶

安曇登紀子は部屋の掃除を更に念入りに始めた 夫である勝也に「あなた、貴之が妻を連れて参るそうです!」と伝えた すると勝也は『ならば今夜は早く帰ります!』と言った 最近の安曇家は、火の消えた様に静かに静まり返っていた 留学に行ってる貴教はハーバード大を卒業して帰国して来る予定が、何故かオックスフォード大学へ行くと言い出し留学した 烈が半年でスキップしまくったオックスフォード大学に、貴教は留学していた 烈がオックスフォード大学へ留学に行った時には、貴教は既にオックスフォード大学へ移籍していたのだった 最初はハーバード大学へ留学した スキップしまくりで卒業した 有頂天になっていたのかも知れない 自分に出来ない事ない………と思っていたのかも知れない 飛鳥井康太の末っ子がオックスフォード大学へ留学したと聞いたから、貴教は、ならば鼻っ柱をへし折ってやろう!と意地の悪い考えで、オックスフォードへ入学した 貴教が入学して…………半年もしない内に烈はスキップしまくり学位に学位記までもぎ取り卒業した 其処で躓き………モタモタしてる間にロード・ペンバートンの教室に兵藤貴史と三木竜馬が入ったと聞いて……… 何故??輝かしい道へ行く自分ではなく……… 兵藤と竜馬なのか? ロードに何故なのか?聞きに談判しに行った ロードは嗤って「君には教える価値すらない!」と言い放った 何故?? 自分と兵藤と竜馬との違いが解らなかった そんな考えに苛まれている間に…………道を見失った 貴教は留年した そんな頃、貴教のサポートに当たっていた貴也はタチの悪い女に惹かれ食い物にされていた 愛する女に強請られるまま欲しいモノをプレゼントした だがお金は直ぐに底を突き………貴也は家の権利書を奪いに安曇の家へと還った 家の権利書は案外簡単に手に入り、売り飛ばしてやろうと実印と権利書を手に入れ、不動産屋へ向かった 不動産屋は「直ぐに売却されなくても、貴方が望む金額のご融資を致します! なのでお母様を懐柔なさり家の名義人を変えて戴きなさい! でなくば名義人の違う家は売れませんよ!」と謂れた 「母が懐柔出来る存在なんかじゃない!」 と貴也が言うと不動産屋は、これを担保に貸付を致しましょう!と提案を持ちかけ金を融資した そんな頃、飛鳥井康太から貴之が妻を娶ったから、安曇の家で面倒見てやれ!と連絡が入った その時康太から 『貴也は性の悪い女に引っ掛かっているらしいから………家には絶対に入れるなよ! 下手したら家の権利書持って行かれるかも知れないって烈が言っていた』と言われた 慌てて家の権利証を探しに行ったら…………なかった 登紀子は腹を括った どうせ父から受け継いだ家だが、途絶えるならばそれまで…………だと想った この事は安曇が還って話た 安曇は黙ってそれを聞き…………何も言わなかった 貴之が妻となる美しい女性を連れてやって来た 芯の通った美しい子だった 「鳳城葵と申します!以後お見知り置きを!」 と深々と頭を下げられ挨拶された 安曇は「烈の会社の副社長をなさっているとか? 結婚したら住まいはどうする気なんだい?」と貴之に問い掛けた 貴之は「全ての事は宗右衛門が配置されるそうです!そして宗右衛門は仰いました 『そのうち安曇の家がなくなるわよ! 分岐点に来ているからね、腹を括らなきゃ……… 安曇の政治生命も貴之の政治生命も、其処で途切れるわよ! 貴教なんて問題外なのよ! 途切れたらりゅーまのライバルがいなくなるから、一度だけ手助けしてあげるわ! まぁ母しゃんの果てが悉く狂わされてる弊害でもあるからね、軌道修正は飛鳥井宗右衛門が務めだからね!』と仰ってくれてます!」 と伝えた 安曇は静かに目を瞑ると 「どうやらこの安曇の家は………売り払われそうです……まぁ家など、どうなろうと構いはしません! ですが……貴也と貴教の人生が途切れてしまうのは……耐えられません……」と涙を堪え言う 貴之は「貴教もそうらしいけど、竜馬さんが言うにはどうやら三木敦之も、果てが狂ってるとかで宗右衛門が軌道修正を掛ける気だと聞きました 僕は宗右衛門にコッテリ扱かれ地獄を見させられました まぁ貴史が言うには、まだまだ甘いけどな!だそうです! 宗右衛門が齎す地獄はそんなに甘くはない……… 血反吐を吐き藻掻き苦しみ爪が剥がれ苦しむ程の地獄でやっとジャブ程度とか言われましたからね…… 僕はまだ入り口さえ見てないんだと思います それも総ては母を想う為に動いているとの事です 母の歪められた果てを軌道修正掛ける為だけに、あの方は動いている……との事です」と本音を吐露する 「ならば貴也と貴教は宗右衛門殿が動かれると?」 「との事です! 僕も………烈の会社の副社長を妊娠させちゃったから………政治生命絶たれるかもだけど………… 僕は全身全霊を掛けて妻と子を守ると決めたのです!父さん、母さん、御迷惑をお掛けすると想いますが………妻を気遣って遣って下さい!」 と深々と頭を下げた 登紀子は「烈君は優しい子だからね 康太ソックリの子だもの、きっと悪いようにはしないわ!」と言う 安曇は「烈とは連絡が出来ないのですか?」と登紀子に問い掛けた 「2週間近く留守にする予定だって言ってたわ! まぁ何にしろ…………動き出すのは2週間後です」 2週間………… 短いような長い時間の始まりだった

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