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第46話 唐沢の苦悩

最近忙しかった……… 部下も増えて、責任も重大になって来て……… 仕事が山積して行き……それを只管片付け 難事件が回って来まくり、更に忙しく……… 胃が痛かった ストレスだ……… 自分の能力は知っている そして何より……唐沢は………最近はやたらと飛鳥井関係の仕事が多く……… 飛鳥井康太の子供の六男坊とブッキングする事が多かった あのお子様………飛鳥井の一族の【宗右衛門】を名乗るだけあり、康太と違った緊張感を伴うお子様だった 何より……じぃーっと視られる瞳が怖い…… 何考えてるか?解らない、沈黙も怖い 康太は烈に対して何も言わない……… それは自分と対等な存在だから、口を出せば愚弄した事になる以上は沈黙を貫く 榊原も右に倣えで、宗右衛門に対しては敬語で敬い接する そんな烈に半月、預けられる事が決まった日 魔界へ連れて行かれた 生まれて初めて神の道を通った 髑髏が道を守り立つ姿に………気絶したい程に恐怖を感じていた それを隠して着いて行くと…………何も無い荒廃した世界に出た そして生まれて初めて龍に乗った まぁ龍に乗れる人間なんて滅多といないのだが………… 漆黒の龍の鱗艶が良いわね!と言う烈の台詞に恐怖を感じつつ耐えた そして黒い龍に乗り………初めて目に地獄は……… 絵で見た地獄百景みたいな凄惨な恐怖を秘めていた だが鬼が虎柄パンツで金棒持って立ってるのと違い……… 角はあるけど、やたらとイケメンとかもいて……… 赤鬼青鬼とかの絵空物語じゃなく生々しくて…… 此れが現実なのかと思うと………怖かった 白装束着た亡者は鬼に見張られ生前の行いの分だけ罪を科される まさに地獄絵図だった あんな大きな窯…………どうやって作ったんだよ と思ってる自分が何だか……不思議だった そして何より………地獄に……総理のご子息いたら駄目だろ!と驚いた まだ幼い子も地獄に落とすし………自分が地獄に落とされたらどんな仕事させられるんだろ? と少し思ったりした そしてまた閻魔大魔王と対面しちゃうし……… 唐沢は仕事の方が楽だよ………と思った 地獄から帰っても烈は大変そうで…… ついでに弾道ミサイルまで飛んで来るし…… 飛鳥井の家族ってこんな生活を送っていたの? と、改めて知った そしていざと言う時の為の家と、移動の速さは手慣れていて、唐沢は感心していた そして家を変わっても………何も変わらずに過ごす飛鳥井の家族の凄さを知った…… 夜遅くまで意識改革をされ、朝早く掃除して洗濯して、朝を食べて 翔達は今夏休み中だから、菩提寺へちっこいのを連れて修行へと向かう 烈は会社へ出勤して免震構造を日々、講義して会議して、確かなモノにして行く そして何より会社を歩けば、社員たちからの差し入れが凄かった 社員食堂では奢って貰ってばかりいる 払うよ!と言うけど支払うより早く食券を出して注文しているのだ 食堂のおばちゃんや美しい女性と話す そして掃除のおばちゃんと話す! 社員と話し、相談に乗ってやる 時にはパソコンを駆使して運命を詠んでアドバイスしてやる 多忙な日々を黙々と片付けて行く だがコミュニケーション能力は非常に高く 適材適所、配置するのが己の役目だとばかりに、的確な指示を出す そんな時、烈に「唐ちゃんはさ、部下にやらせても良い仕事でも自分でやってるでしょ?」と言われた 唐沢には自覚はなかった 「そうかな?」 「上からは無理難題、下からは要望多発 此れじゃ詰まるわよ!」 「うっ………」 痛い所を突いて来る 「ボクね唐ちゃんを送り出せるか? 半月経つ前に唐ちゃんの仕事場に顔を出すわ! その時、貴方の仕事ぶり見せてよ! 駄目な時は駄目だしするからさ、貴方は意識を変えて逝かないと駄目よ!」 「解ったよ………」 「心 楽になったでしょ?」 「あぁ………楽に息が出来るよ!」 「あんなに雁字搦めに自分を縛っていたら…… 心に隙間があるならば、フラッと死にたくなるわよ!そうならない為のレイたんの水なんだからね 唐ちゃんの血肉に浸透して、半月経つ頃には闇に囚われない丈夫な心が出来上がるわ! あと一息ね! あ、唐ちゃん、天界へは一緒に来るのよ! 貴方に世界を見せてあげてるわ! この世界は当たり前の世界なんじゃない! 貴方は誰よりもそれを知っているだろうけど……… まだ視てない部分もあるからね!」 「ありがとう烈………俺は………君に柵を断ち切って貰わねば……死んていたかも知れない…… それ程に息をするのも……苦しかったんだよ!」 「部下は貴方の手足となる存在よ! 日々鍛え、日々動ける存在にならねばならない 使えないの飛鳥井へ残したら良いわ! 本当に使えないなら地獄へ落としてやるし!」 「その時は頼むよ!」 唐沢は笑っていた 久しぶりに笑った こんなに気持ちの良い時間は最近過ごしてはいなかった……… 唐沢の意識改革の試練は始まったばかりだった

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