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第52話 久遠の苦悩

久遠は慎一と一生に連れられ、ホテルの部屋へと来ていた 一生は部屋に入るなり 「流石 烈!良い部屋取ってるじゃねぇかよ!」と言った 慎一はせっせとテーブルの上にツマミと酒を用意した そしてソファーに座ると慎一は久遠を真摯に見つめ 「何故 烈が俺と一生に貴方を託したか? 解りますか?」と問い掛けた 「俺が愛人の子だからか?」 久遠が言うと一生は皮肉に嗤い 「俺も愛人の子だぜ!久遠!」と言った 慎一は「俺と一生の父親はクソな奴でした! 妻がいながら………愛人を作り……同時期に妻を孕ませた!そして桜林の幼稚舎に本妻と愛人の子を通わせたクズです!」と吐き捨てた 久遠は言葉もなかった……… 一生は「俺の母親は愛人として俺を産んだ! クソ親父が妻と別れ……慎一は施設に入った 母はそれを知って苦悩して我が子を愛す事を放棄した………俺は初等科から桜林の寮に放り込まれ、親とは暮らしてなんないねぇよ!」と吐き捨てた 慎一は「俺の母は弱い人でした、愛人を作った父を詰り責めて………疲れ果て離婚した 父親に似ている俺の顔を見るたび泣いて、暴力を奮った 俺の存在はより母を傷口を広げ……… 母は俺と一緒にいる事を拒み、飲んだくれ挙句、命を絶った……… クソ親父は責任を感じで一緒に暮らそうと言ったが………… 親父は新しい家庭を持っていた そんな家に行けるかよ! 俺は施設へ行きました 新婚してるクソ親父の所へは、意地でも行きたくなかった! だけど想像は………もっと地獄で………弟はちっとも幸せじゃなかった………」と呟く 一生は「母は何処まで行っても罪を感じ、慎一の事を想い詫びて暮らしていた………… 俺はそんな母を見るのが嫌だった だから目を背けた………目を背けていたから親父が癌だとも知らなかった 知らされた時には…………痩せ細り……見た事もない程窶れていた そして……親父は帰らぬ人だった 遣る瀬無くて悲しくて悔しくて………殺してやりたかったのに………死んじまって………先の人生が真っ暗になった…………」と呟く そして二人は謂うのだ 慎一は「まぁな憎しみも哀しみも総て俺等は昇華した 康太が支えてくれて乗り越えたからな……… そして今は烈がいてくれる 昔の康太は何時だって張り詰めていたのが、今は自然体で笑っていてくれる それも総て烈と謂う存在が有ればこそ! だから俺等は全力で久遠先生の柵を壊します 貴方の意固地な考えをぶっ壊します!」と謂う 一生も「俺は烈の事………軽視しちまった事かあるのに………烈は許してくれた そればかりか……俺等の歪んだ関係も直してくれた そんな烈の願いならば、俺は何でも聞くと決めているんだよ! 愚かな俺を許してくれ、それて馬関係を万全にして力添えしてくれている! 事務関係は切り離してくれただけでも仕事が楽になったし、俺は北斗に託せる牧場が残っていて感謝してるんだ! だから久遠、おめぇとはとことん話をする気でいる!」と謂う 久遠は「……俺は………妻からも子供からも逃げた自覚はあるからな………どうして良いか解らないんだよ!」と本音を吐露した 慎一は「俺も妻と離れ離れになり………乳飲み子を抱えて…途方に暮れるしかなかった 病院の勧めで施設に入れた……… そして迎え入れた時には既に幼稚舎に入ってて………俺は親でいて良いのか? 悩みましたとも! 親子の距離さえ解らなくて……そして今はかなり口も達者になり………反抗期もありましたからね 俺だって康太がいなければ…どうしようもない親でした! そして今は我が子は菩提寺へ通い心身ともにきたえあげられています! 頭でっかちな人間にはなるな!が、宗右衛門の教えだと心技体を守って勉強に励んでますよ そんな我が子を………俺は愛してますが………引け目も負い目も感じているのは確かです! だけど………そんなの総て捨てて、心から我が子を愛せば良いのよ!と烈が言ってくれて楽になりました! 俺は親でいて良いんだ! そして我が子を愛して、主に仕えて生きていけば良い……そう思えたので楽になりました!」 と清々しい笑みを浮かべて笑った 一生は「俺も流生との距離が取れなくて……悩んだ時期もある そんな時、俺は烈の眼が怖く感じて直視出来なくて………無視を決め込んだ 康太とは違う眼に、俺はどう映っているのか? 怖くて怖くて……烈を無視した わざとじゃねぇけど………それで飛鳥井の家にいられなくなる程に拗れた時期がある…… 白馬で散々北斗を苦しめ、そして飛鳥井で烈を軽視して………俺は自己嫌悪に苛まれた そんな俺を救ってくれたのは烈だ! 切り捨てられても仕方ない事したのに……助けてくれたんだよ! それ以来、俺は烈の謂う事は最優先で聞いて来た 別にそれは烈に対しての負い目とかじゃねぇよ 負い目なんて持ってたら……烈は俺の傍には来ねぇじゃねぇかよ…… アイツは康太と同じで、避けるならば徹底的に気配すら感じさせずに消えるんだよ だから烈の為に………と思っているんだけどな…… 俺は人を説得したりするのは苦手だから、最悪久遠を殴るしかねぇって………想っていた」 と本音を吐露する 久遠は「憎くはなかったのか?」と尋ねた 一生は「憎いさ!この手でトドメを刺せれるならば刺していた程に憎いさ! 俺達兄弟を振り回し不幸にしやがって! 俺の名前は慎一と繋がってるらしいんだよ 【慎一】【一生】二人は兄弟だから………助け合い生きて欲しい………そんな願いを込めた そう聞いたけど、俺等を不幸にしてるのはお前じゃねぇか!と俺は言いたい!」と辛辣な言葉を連ねる 慎一も「俺は法スレスレ……嫌、結構OUTな事やって生きて来たから、弟の姿を目にしたら死ぬ気でいたんだよ! こんな兄なんか弟に必要ない………そう思って だけど、俺は康太に生かされた! 康太の為に飛鳥井の家の事は総てまかなってやってると自負していたんですがね 烈が初等科に上がって直ぐの頃 九州に行って危篤状態になった事かあったじゃないですか あの時、烈は俺には何も言わずに外に出ました きっと俺に言っても後で良いですか!と流されると踏んで家を出たのです 俺はショックでした! 俺はこんなにも烈を蔑ろにしていたのか?と飛行機の中で自己嫌悪になりました! 以来 烈の依頼は康太よりも先に聞くようにしています!」と兵の発言をする こうなったら久遠はお手上げだった…… 慎一は「で、此れからが本題です! 今のはジャブ程度ですから!」とサラッと謂う イヤイヤ………今のでかなりボコボコ状態ですかな………と久遠は想った 慎一は「貴方の子は宗右衛門に喧嘩を売った! 飛鳥井の一族は宗右衛門には傅き平伏す存在! 俺だって宗右衛門には喧嘩は売りませんよ! 何万倍返しにされるか、解りませんからね……… それを気軽に喧嘩を売っちゃいましたからね 教育がなってませんでした!と、志津子は宗右衛門に謝罪されたそうですよ!」と現実を叩き付ける 一生も「俺も良くもまぁ宗右衛門に喧嘩売ったな…と背筋に冷や汗が流れたぜ! まぁ仕方がねぇよ!宗右衛門に喧嘩を売ったんだ!命があるだけマシだと思え! 少し前に交通事故で消し炭になった事故あったやんか?アレ烈を付け狙っていたヤツの成れの果てだ!アイツは態々手を下さなくても、呪文一つ唱えれば人は消せる それさえも面倒ならば、指示を出せば明日にはソイツは消えるんだよ! 良くもまぁ、そんな奴に喧嘩売るよな? んとに、チャレンジャーだわ、お前の息子!」と身震いしながら謂う そしてラインを操作して 「ほらよ、これ、烈から送られて来てる! 久遠に見せてね!って!」 と言い一生はラインを久遠に渡した 久遠は一生の携帯を受け取り画面を見る 画面には烈が綺麗な女性と笑ってピース出してる写真が添付されていた 慎一は覗き込み「その女優 柘植の事務所の森 紅緒じゃないですか?」と謂う 一生は「あ~、ここ最近烈の茶飲み友達やんか! 俺も何度お茶した事あるぞ! かなり壮絶な過去を持つ女優だと柘植に聞いた事あるぜ! ワンオペで育児ノイローゼになり我が子を奪われ、何度も何度も自殺未遂したお騒がせ女優だった過去があったって! 絶望の中で暮らしていたが、烈がプロデュースして今や榊原真矢に並ぶ大女優となった人だって!」と謂う 久遠は「………俺の………妻だった人だ………」と謂う 慎一と一生は「「ええぇぇぇぇ!!!!嘘ぉ〜!」」と叫んだ 慎一は眉を顰めて「ならば、拓美と拓人はこの人がロクデナシの母親だと言っていたのですね 苦しみも哀しみも………何一つ知る事なく、母親だけ悪者にして生きて来てしまったのですね……」と謂う 一生も「そうか………俺が烈と一緒に茶をする様になって、この人………ずっと笑っていたんだよ! 慎一と茶に誘われて、一緒に過ごした事あるやんか!そうか………ならば宗右衛門は動くしかねぇよな!喧嘩売られて何も知らずに母親だけ悪者にしてるんだから!」と呟いた 慎一は「ええ、何度お茶しましたよ!納得です! 烈の茶飲み友達愚弄したのです! 相当扱かれますよ!」と謂う 久遠は「あの人は………今、幸せなのか?」と問い掛けた 「それは俺では答えられない!」と一生は言った 慎一も「そうですね、人の幸せは千差万別! 井筒屋の羊羹食べて幸せ感じる人もいれば、大金はあっても不幸な人はいますからね!」と謂う 久遠は笑って「その羊羹、烈しかいねぇだろ!」と文句を言う 慎一は「いいえ!飛鳥井のちっこいの、特に凛は羊羹で喜びますよ!」と謂う 「アイツは煎餅の食い過ぎで翔と同じ血糖値気にしねぇとならねぇからだろ!」 「まぁまぁ、人の幸せなんて解りませんよ 気になるなら一度話しされてはどうです? 逃げてばかりの人生に終止符を打って終わらせなさい!そして新たな想いで歩き出せばどうです?」 「多分………向こうが会ってはくれないさ!」 「それは解らねぇからな! 烈に予定立てさせやんよ! もう歩き出せ!久遠! ずっとその場に留まるのは…辛くねぇか?」 「…………辛いさ………だけど俺は逃げたんだ! 俺がいない方が上手くいく!と現実から目を背け………逃げたんだ!」 「烈がさ、追い詰められたヤツってのは、視野が狭くなるのよ!って何時も言ってる お前はあの時、狭い視野で藻掻き苦しんでいた だからもう良いやんか! 自分を許してやれよ!  でねぇと俺等がこの場に来た意味がなくなる!」 一生がボヤくと慎一も 「そうです!成果なしで帰れますか! 俺は我が子にも飛鳥井の子達にも、ちっこいのにも烈にも誇れる自分でいたいですからね!」と謂う 後は………酔って騒いで………憑き物が落ちた そんな感じだった 烈…………俺………動き出そうかな……… 久遠は心に誓った その時 一生の携帯がブーブーと通知を知らせた 取り出してみると「あ〜!もぉ~!焦れったい!にゃんでサクサクいかないかにゃー!」と叫んでる烈の姿が動画で映されていた 兄達が烈をドウドウと鎮めていた 送信者は康太だった 「烈が何だかキレてっぞ!」 一生は携帯を慎一に放った 慎一はその動画を再生して見て笑っていた 「まぁ久遠が頑張るしかないな………」と呟くと一生はうんうん!と頷いていた 久遠は笑っていた 雁字搦めにした心を解き放って貰った様に、晴れ晴れと笑っていた

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