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第53話 世紀の挙式 本番

鳳城葵は朝早くから、白無垢を着せられ、めちゃくそ重くて脱ぎたい衝動に駆られていた が、明治神宮の奉賽殿まで婚礼行列が歩く 神主や巫女が前を歩き、新郎新婦は赤い番傘を差し掛けて貰い歩く 文金高島田に身を包んだ花嫁は、とても美しかった 安曇貴之は自分の妻に見惚れる程に美しかった 古式ゆかしい神前での婚姻は真っ赤な絨毯が敷かれ神主の前に新郎新婦が立ち、参列者は左右に分かれて座ってそれを見守る 烈は見届人として婚礼の儀には出席していた そして明治神宮での挙式が終わると次は帝国ホテル 鳳凰の間で行われる披露宴へと移動する マスコミは新郎新婦のお姿、そしてご両親の姿、そして烈、阿賀屋、鷹司の姿も撮れたら………とチャンスを狙っていた が、報道記者の前には、阿賀屋と鷹司の前には御簾で隠されており……… 撮るのは不可能だった そして夜から始まる披露宴 今度は純白のウェディングドレスを着た新婦と、純白のタキシードを着た新郎が姿を現した 政財界から沢山の方々が披露宴へ参加されていた 烈は最初の一時間位いて、後はお子様の時間は終わりだとばかりに、場を離れた 烈は披露宴の後のお疲れ様の慰労の為に、帝国ホテルの近くの旅館の離れを貸し切った 大広間で宴会をし、個室もあるから、寝たい奴は其処で寝る 烈は兄達やちっこいのや北斗達の為に二階の部屋を、早々に確保してお布団を敷いた 「にーに、此処で寝るからね!」と謂う 酔っ払いに付き合っていたら何時まで経っても寝れたものじゃないからだ 既に、旅館の離れには飛鳥井の家族や飲兵衛達が集まって来ていた どうせなら家族も楽しく飲みたいだろうから、と誘ったのだ 花嫁は披露宴では薄黄色のドレスを着て、新郎はパステルグリーンのタキシードを着る トンプソンが誇るエリックが娘の為にデザインして作らせたドレスとタキシードだった まぁお色直しのドサクサに紛れて出てきちゃったのだけど……… 長かったわ……… 結婚式の準備もだけど………朝から始まった明治神宮の挙式も……… だけど、やっと終わったのだ…… 世紀の挙式と名付けられた結婚式は連日ワイドショーを騒がした その前からテレビや取材を受けて騒がれていた 安曇の妻 登紀子はファーストレディーとして夫の外遊に付き添っていて顔はしれているが、今回テレビや取材を受けた時は雰囲気が違い、それも質問されていた 華やかなのに、上品で気品を兼ね備えた洋服に、少し明るめのメイク 「登紀子さんは総理とご一緒されている時と違い雰囲気が変わられましたね?」 なんて質問されている程に若返り美しくなっていた 登紀子は「葵のお母様の由香里さんがプロデュースして下さり服とかメイクとかして下さっているのです!」と謂うから由香里が注目を集めたりした 烈は連日の過密スケジュールに熱を出して、ドクターストップが掛かった程に、ミッチリとスケジュールが入っていた そんな大変な思いをして迎えた当日 世紀の挙式と言われた結婚式は大成功したのだった 安曇勝也の人気は鰻登りに急上昇して、任期を終えて総理を退任なさる事を惜しまれた程だった 派閥の枠を超え、政治家は与野党全員出席した そして政財界、殆どの会社の役員が出席したのだった 飛鳥井は宗右衛門が出ているから、副社長の飛鳥井志津子が出席していた 康太と榊原と家族は早々に近くの旅館の離れにお酒を買い込み、ツマミを買い込み、阿賀屋の屋敷から来た者達とで宴会の準備をしていたのだった 今 この不景気な社会に、久しぶりに華やかな婚礼のニュースを齎してくれた話題は尽きなかった 和装の花嫁の美しさに、和装での挙式を!と申し込む者達も出て社会現象を起こした程だった 鳳城と貴之はその夜は帝国ホテルで宿泊した 貴之は「美しかったよ葵!」と妻となった人に賛辞を述べる 鳳城は「貴之も凛々しくて、私はまた貴方に惚れてしまった!」と言った 最近の鳳城は想った事はちゃんと謂う様に心掛けていた 何せ、犬猿の仲だった相手なのだ 何かに付け、合わない………と啀み合っていた相手なのだ 今思えば何で………愛し合っちゃったんだろう…… 恋とは理不尽も何もかも超越して逝っしまうのだろう……… 鳳城は「貴之は………後悔してない?私と結婚して………」と気になり問いかける 貴之は「後悔なんてしてないよ!でもまぁ出逢った時は互いに何!コイツ!だったけどね! でも僕はちゃんと葵を好きだと想い、恋したんだよ!だから君を抱いた! 君が妊娠しても、僕は責任とるつもりで避妊はしなかった! だから君が妊娠したと言ってくれた時、僕は嬉しくて堪らなかったよ だけど………君は全てを捨てて僕と来てくれるのか?不安だった………」と本音で返す 「そうだな、お互いにコイツだけは仲良くなれない!と想ったからな………だけど一度大きな喧嘩をしてからは、お前は本音で接してくれるようになった………そんなお前が好きだと想った だから今こうして結婚出来て……本当に幸せだ 私は………政治家になるお前とは結婚は出来ないと想っていた…………絶対に家族に反対されると想っていた…………」 「え?そんな事を思っていたの? 僕は君を捨てると思っていたの?」 鳳城はコクっと頷いた 「捨てる訳ないじゃないか! 僕の方こそ、君はバリバリ働く副社長まで成り詰めた人だから………愛しちゃダメだと想った でも君を抱いたら止まらなかった 欲しくて欲しくて堪らなかった もう離したくないと思ったんだよ だからプロポーズした、そんな時に君の妊娠が発覚した 僕は凄く嬉しかったよ だって君のお腹の中には、僕たちの愛の結晶が宿ってるんだから……… 君こそ、妊娠しても副社長の座を捨てるとは思わなかったよ……… 僕は政治家になる! それは僕の夢で………両親への贖罪だから…… 傲慢な自分が……両親を蔑ろにして、真贋に牙剥いた最低な事した話はしたじゃない……… 本当に愚かな僕はあの日あの時、命を奪われても仕方がない事をした……… だから政治家になりたかった………… でも僕ら兄弟は…………何処かで道を違えてしまったんだ………… 兄さんは………行方が解らず、愚かな弟も今は何処にいるかさえ解らない 多分両親も知りはしない 知っているのは………宗右衛門だけ 宗右衛門には飛鳥井家真贋でさえ、口は挟めない存在なのだから………… どうなっとゃうんだろ?と不安はあるんだよ」 「貴之…………」 「でも僕には君がいる そして我が子が出来て家族が増える 今まで一杯親不孝したから、此れからは親孝行したいと思っている 手伝ってくれる?葵?」 「無論だ!沢山孝行せねばならないな! 私も両親に孝行したい……我が子を母さんに抱かせたい………義父さんにも抱かせたい そして父さんの墓前にも知らせたい そして安曇の両親にも愛して貰いたい 私はもっと強くなるよ! 貴方を全力でサポートして支えるわ!」 「葵!」 貴之は鳳城を抱き締めた 大きなお腹が苦しいよ!とばかりにモコモコと動き、2人は顔を見合わせ笑った 幸せは日々の始まりだった そして激戦の政治家としての幕が切って落とされた始まりだった

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