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第62話 春の嵐 前哨戦 ❶

烈は4月で初等科5年に進級する 世界会議を無事閉廷させ、大変な日々に終止符を打ち、日常へ戻った が、世の中は桜も満開で、烈の春休みはもう終わりを迎える一歩手前だった 忙しかったなぁ〜 今も相変わらず忙しいけど……… 烈も4月から5年生になる ふふふ………5年生、少し大人に感じる5年生 最近 ちっこいの達は成長の一途を迎え、大きくなりつつあった それもその筈 三人は初等科に入学する年になっていた 兄達は中等部2年に進級する年になっていた 最近の兄達の成長は目まぐるしい……… 既に母の身長と並んだ兄達だった それに比べて烈はちまっとしていた 全体的にちまっと可愛い 少女の様な細い感じではないが、全体的にちまっとした感じは否めない 兄達はモデルばりに………手足は長く高身長 しかもイケメン要素たっぷりだった そんな中でちまっとした自分がめちゃくそ嫌だった 「母しゃんの想い……解るわ!」 瑛太 蒼太 恵太 康太 悠太  5人兄弟の中で母だけが小さいのだ 弟にまで負けている母はきっと………複雑な思いだったんだろうな………と想う だけど!だけど!…………思春期なお子様には……… 悔しい思いはあるのだ このモヤモヤした想いは夜の海に叫んで吐き出そう! 昔 見た青春映画の様に………叫んでやる! 春休みも終わりを告げる週末の朝  烈は「少し家出します! 烈 」と書いて家出をした その紙を見付けたのは、中々起きて来ない弟を心配して起こしに来た流生だった 流生はその紙を手にして大慌てで 「母さん!大変よ!烈が家出しちゃった!!」と泣きながら訴えて来た 康太はキッチンに行こうとしていた所だった 目線が同じ高さの息子に目をやる 「烈?家にいねぇのかよ?」と聞くと流生は紙を渡した 康太はその紙を受け取り 「あ~、最近の烈は特に身長の事気にしてたからな………」とボヤいた エレベーターに乗る時、縮んでしまえ!と叫んでいたし……… 複雑な思いがあるたろうと察する 康太は仕方がないから「リビングに皆を集めろよ!」と言った 流生は走って皆をリビングに集めた リビングに全員集まると康太は 「最近の烈は身長を気にしていた で、凛にも負けそうだから常にボヤいていたな しかもイケメンに育ちやがって!と更にボヤいてたからな、現実逃避したんだろ? 少し放っておいてやれ!」と告げた 瑛太はぷるぷると笑って「それ康太と同じじゃないですか!」と謂う 康太は兄を睨み付けた 翔は「え?それは何です?話してください!」と訴えた 「康太は5人兄弟の4番目の弟です! まぁ私と悠太を見れば、康太の身長は解るでしょ?それに君達は会社に顔を出してるならば蒼太と恵太とも面識は有りますよね? 彼等も……言うまでもなく高身長です! なので、こんな兄弟の中にいられるかよ!と康太はある朝 家出をしたのです! まぁ源右衛門が存命でしたので、捕獲して連れ戻されました! 烈も土曜の朝に家出したならば、月曜には戻るでしょ?」 瑛太が謂うと康太は 「おめぇらには………ちっこいオレ等の気持ちなんて解らねぇよ!」と拗ねて言う 榊原も「宗右衛門は源右衛門よりも偉丈夫な方でしたからね、今世のちっこさに耐えられないのかもしれませんね!」と現実を口にした 兄達は泣いていた 身長なんてどうも出来ない事ならば、何とも出来ないじゃないか!と泣いていた 康太は「仕事は放っておけないから戻るだろ? それにクーはいねぇが、ルーとスーはいるやんか!」とボヤく ルーは「まぁ僕等は一大事にならねば、基本隠密行動ですから!」と謂う スーは「せやな、クーが呼べば即座に姿を消すさかい心配せんでもええで! それよりも腹ヘリさんや、朝を食べたたいんやけど!」と早く朝食を作れ!と催促する 清隆は「少し様子を見ましょう!私は一人っ子故に……兄弟とかの想いは理解は出来ません……… ですが、どんな烈でも私は愛していますからね!」と優しく口にする 玲香も「そうてあるな!我は弟はおるが、無関心だった故に兄弟としての付き合いはない…… 飛鳥井へ嫁いで来た時に、家族は捨てたも同然として来た故………烈の抱く兄弟間のコンプレックスは解らぬが………最近の翔達の成長は目を見張るモノがあるわいな!」と言葉にした 一生は「あぁ〜烈は何時も縮めば良いのに!と言ってるからな……月曜に帰らねぇなら迎えに行くから心配すんな!」と謂う 流生は「烈が何処にいるか?解ってるの?」と問い掛けた 「解らねぇよ、そして知らねぇよ! でも烈探知機のレイが朝を待って淀を垂らしてるって事は危険はねぇんだよ!」 一生が謂うと兄弟はレイを見た レイは「あしゃぁ〜」とホークを握って朝を待っていた それで兄弟は納得した 家族の心配をよそに烈は銀座にいた 何故か烈の横には阿賀屋がいた 「何で真央たんいるのよ?」と烈がボヤく 「そう言うおめぇは何故に銀座にいるのよ?」 「ボクは今 家出中なのよ! だから放っておいてよ! 何で家出中なのに真央たんに遭うかなぁボク!」 「歌舞伎座の横を通るから、阿賀屋の家の者に見られたんじゃねぇかよ!」 「ボクは此れから珈琲飲みに行くのよ!」 「あ、悪いな烈の奢りか、なら獅童も呼んでやるな!」 「何で家出中に腐れ縁といなきゃいけないのよ!」 「お付きの者も付けずに歩いてるお前が悪い!」 阿賀屋が謂うとクーが烈のポッケから顔を出して 「ニックはいねぇが俺がいる!」と謂う 阿賀屋は「そりゃそうか!お前がいれば他の奴等も直ぐに来れるってものか!」と笑う 烈は歌舞伎座近くの珈琲屋へ入ると、奥のボックス席に向かった 其処は静か雰囲気の珈琲屋だった まぁ今の時代カフェと謂うが、珈琲屋と呼ぶに相応しい老舗の店だった 阿賀屋は珈琲を頼むと烈はカフェオレを頼んだ 「何で家出してるのよ?」と携帯をポチポチして阿賀屋は問い掛けた 「…………にーに達は最近親のDNA宜しく高身長でイケメンで、学園じゃ人気者なのよ」 「……お前……それで僻んで家出したのか?」 「ならさ真央たん……ずっとその中でいてみなさいよ!」 「まぁ………親のいいとこ取りした容姿引き継いでるなぁって想うけどな………」 「ボク………中々大きくなれないのよね……… 【R&R】のメンバーも皆デカいし……ボクさ………デカい奴等の中でちまっとしてるの嫌になる時あるのよ! で、気晴らしに家出して来たのよ!」 「なら今日はお前の気晴らしに付き合ってやんよ!」 「嫌よ、何で家出してまで、イケメンのデカいのといなきゃいけないのよ!」 「まぁまぁ、そんな事言うな! 可愛いだろうが!」 「スケコマシの台詞が一番殺意わくのよね!」 「恐ろしい事言うなよ! 俺とお前の仲やんか!」 「そんな腐れ縁は要らないわよ!」 美味しいカフェオレを満喫していると、珈琲屋に鷹司がやって来た 鷹司は阿賀屋と烈を見ると、早足で席にやって来た 鷹司は「烈、家出中だって?」と笑って聞く 「煩いわね!獅童!」 「うし!今日は儂の家に来い!」 「嫌よ!ボクは今日は気儘に過ごすのよ!」 「んな事言うなよ!哀しいじゃねぇかよ!」 鷹司がそう言うと阿賀屋が 「なら俺の家に来い!」と謂う 烈は「どっちも嫌よ!」と断る 鷹司は珈琲を頼むとマスターは静かに珈琲を淹れ始めた 烈はこの珈琲屋が大好きだった 初老のマスターが淹れてくれる珈琲が大好きだった 今は小さくてカフェオレしか飲めないが、それでもたまに此処に来て特別な時間を満喫するのだった 鷹司が「儂はこの近くで祓い屋の仕事をしておったのじゃよ!」と言い、運ばれた珈琲に口を着けた 烈は「規模は?小さいの?」と問い掛けた 「霞ヶ浦程ではないが、そこそこの規模の建物なんじゃよ?」 「え………銀座よ?此処?」 「人の集う場は【怨】が溜まりやすい 【怨】が溜まれば【霊】が居心地良いと棲み着く 悪循環な場を確かめに来て参ったのじゃよ! あ、烈、お前霊が見えるのじゃろ? ならば見て兄に状況を伝えてくれ!」 「嫌よ、何で家出中に霊見なきゃ駄目なのよ!」 「まぁよいではないか!ついでじゃ!」 「一千万請求するわよ!」 「まぁ対価にあええば払ってやるさ! お前には骨董品の倉庫譲って貰ったし!」 「あぁ、あれはタイミングが良かったのよ! 凛太郎が妹の為に古民家購入するって言ってたの聞いたのよ! でも購入した土地じゃカフェにしても客は来ないわよ! しかも百年モノの古民家じゃ、カフェにするにしてもリフォーム代は凄い事になるわよ! だから古民家持て余してる凛太郎に、持ってる方が金食い虫よ?それ?と現実突き付けて、引き受けてやるから、とかなり値切って古民家引き受けてやったのよ! モノは凄く良い創りだったから蔵に最適だったから、リフォームして蔵にしたのよ それを獅童にあげただけよ!」 「対価を取らぬプレゼントじゃったから、少し焦ったわい! 主は対価を絶対に取るからな………」 「取ったじゃない、骨董品と調度品用意して貰ったじゃない!」 「あれじゃ対価にもならぬであろう? だから請求するならば払うから、見てくれ!」 「ボクは気に入ったのならば、それが他の人から見たらタダ同然でも構わないのよ! それが対価となるからね! なら、珈琲飲み終わったら見に行くわ!」 「夕飯は奢ってやる!昼は蒼佑が奢ってくれる!夜は儂の家に来い!兄者に連絡入れておく!」 そう言い鷹司は携帯を触ってラインを送信 烈は「家出中なのに…………」と哀しく呟いた 阿賀屋は「まぁまぁ、そんな日もたまにはええではないか!」と笑う 珈琲を飲み終わると、烈は支払いをして珈琲屋を後にした 鷹司に連れられてやって来たのは、繁華街から少し離れたビルだった 見るからに………闇に染まっていた 思わず烈は「うわぁ!」と叫んだ 鷹司は「どうした?烈!」と問い掛けた 「闇に染まりまくってるわよ! 負の連鎖が巻き起こって不思議じゃないし……… これじゃ生きてるのか嫌になる場になり、部屋で自殺したり、飛び降りても不思議じゃない建物だわ!」 「まだ何の説明もしてないのに………流石宗右衛門!」 「吐きそうに………嫌だわ、この場…… この建物何だったの?」 「此処はタレントの養成スクールだったり、寮として使ったり様々だったな で、決定打となったのが、ホストの独身寮として使ってて、その部屋に客を連れ込み回し… 犯ってる最中に女がパニックになり………持ってたカッターナイフでその場にいた奴を次々に切り刻み……… 命は助かったけど、男達は顔を刻まれ2度とホストには戻れなくなった………ってニュースになった現場だ! で、このビルの浄霊の依頼が来たって訳よ!」 「人の欲望 絶望 羨望 嫉妬 嫌悪 憎悪 色んな想いが呪詛となりビルにこびり付いてるわね その上居心地良いから霊も居着いて、此れは一度では祓えないし、壊してもどす黒いのは残るから次のビルが犠牲になるわね!」 「だから宗右衛門、力を貸してくれ!」 「ボク祓い屋じゃないわよ! しかも家出中なのに……」 そうボヤきつつも、烈はビルの下に魔法陣を出した そして首に吊り下げられた八咫鏡の欠片を手にすると 「えんちゃん、かなり大きい霊の集合体を無間地獄に落とすけど大丈夫?」と話し掛けた 『無間地獄ですか、ならば素戔鳴殿に見に行って貰います!頼みます素戔鳴殿! 此れで何かあれば対処も出来ます! 何時落としても大丈夫です!』 と閻魔の許可を取り、魔法陣はグルグルと回り出した 「獅童、あの魔法陣通れる様にしてあげるから、建物の中へ入って、その錫杖でへばり付いてるの落として来なさいよ!」 「えー!自動的に落ちないのかよ?」 「縋り付いてるのは落ちないのよ!」 「では行って参る!」 渋々 鷹司はビルの中へと向かう 魔法陣の上を歩いてビルの中へ入り、狡賢い霊を魔法陣の中へと突き落としていた 阿賀屋は「毘沙、外側の手伝ってやれよ!そしたら夜は良い酒飲めるぞ!」と話しかけると、神威と毘沙門天が姿を現した 神威は「おぉ!倅よ!」と言い烈を抱き締めていた 毘沙門天はビルにへばり付いてる霊を魔法陣の中へ突き落としていた 暫くして毘沙門天が「外側いなくなったぞ!」と謂うと、ビルの中の鷹司も「此方もいなくなった!」と叫んだ 烈は魔法陣を消した そして八咫鏡で「かなり無間地獄に堕ちたわ! トータルで百体近いの堕ちたかしら? 霊が霊を呼び塊になってたからね!」と問い掛けた 『…………無間地獄を出て魂の修練場へ向かう頃、閻魔帳との摺合せをします! その時は手伝って下さいね!烈!』 「解ってるわ!近い内に行くから!」 『待ってます!』 閻魔との通信を終えると烈は 「このビルの浄化はボクは無理だわ! ボクは浄化の力はないのよ! 此処まで闇に染まってると、緑道でも持て余すわね………レイたんか、母しゃんに頼むと良いわよ! それまで封印はしておくわ!」と言い呪文を唱えた 呪文を終えると「お腹減ったわ!真央たんの奢りよ!」と謂う 毘沙門天と神威は大喜びで着いて行く気満々だった 烈は「家出中なのに……何で何時もと変わらない顔触れなのよ!」とボヤいた 其処へ神野が烈を見掛けてやって来た 声を掛けようと想ったが、呪文唱えているから、離れて見てたのだった 終わったから「烈!珍しいなニックも連れずにいるなんて!」と声を掛けて来た 烈は「当たり前じゃない!ボクは今 家出中なのよ!ニック連れていたら家出にならないじゃない!」とボヤく 神野は「家出!!何かあったんだ!!」と深刻そうに呟くと須賀や柘植 相賀にグループラインを慌てて開いて 「大変だ!烈が家出中だ!」と叫んでラインを送信した 柘植はそのラインを見て即座に康太に電話した 『康太さん!烈、家出中なんですって!』 その電話を受け取り康太は情報が早くて 「それ、誰に聞いたのよ? あまり大事にしないでくれ! 思春期なお子様の反抗期なんだからさ!」と謂う 柘植は『家出中なのは本当なんですね!ならば私達が保護して過ごします!では!』と電話は切れた 康太は笑いながら「烈、おめぇ……家出してても腐れ縁じゃ、夜の海に叫ぶの無理そうじゃねぇかよ!」と笑った そして家族に「腐れ縁な奴に捕獲されたから大丈夫だ!心配すんな!」と告げた 家族はそれだけで安堵の息を吐いた 安堵する家族と反比例して烈は……… ゴロゴロと、ゾロゾロと増えてくの 段々……段々………増えてくの……何でよぉ〜! と、心の中で叫ぶ オカシイな、反抗期の些細な家出だったのに……… 静かに高身長のバカヤロー!縮んでしまえ!と夜の海に向かって叫んで、過ごすつもりだったのに……… 何でまたこんな高身長が傍にいるのよ! 腹が立つ! 烈は増殖する前に 「ボクは静かに過ごしたいから!」と離脱を試みる 其処へ神野の呼び掛けに須賀、柘植、相賀もやって来た 鷹司が「昼だ!烈!ほれ蒼佑、昼を用意しろ!」と烈をガッシリとホールドして謂う 阿賀屋は使用人に連絡して昼の場を用意させた 直ぐ様 ラインで場所の確保を告げて車の手配をしたと告げられた 近くまでバスが来るからそれに乗り料亭へ向かう 鷹司は「昼から料亭かよ!」とボヤく 阿賀屋は「そう言うな、烈が教えてくれた家庭の味や田舎料理が美味しい料亭だから安心しろ! あの店の煮物や料理はおふくろの味って感じで気取ってなくて、俺のお気に入りの店になってる まぁ飛鳥井程にうめぇ料理はねぇけどな!」と謂う 鷹司は「その料亭、今度から鷹司御用達にする!」と嬉しそうに謂う その料亭は悠太の友人 葛西茂樹が飛鳥井を退社して始めた料亭だった 聡一郎が烈に教えて、それ以来利用してる料亭だった 経営アドバイスをしてやると、軌道に乗り旅館まで家族の力で買い戻しが出来るまでになっていた が、今の時代、高いばかりで能のない経営してたら見向きもされないのは当たり前だった 懐かしい味を売りに出し、尚且つ高級な味も受け継がれた庶民が少し無理すれば料亭も夢じゃない!をコンセプトにする様にした料亭となっていた 阿賀屋の使用人は烈の好きな店は近辺を調べ尽くして、失礼のない様にチョイスする様に動いていた その中で其の料亭が最近のお気に入りと調べ上げ、予約入れたのだった 料亭の駐車場に車を停めると、女将が姿を現した 料亭の女将は葛西の母がなっていた 高級旅館の女将をやっていた母に頼むと、母は倅の為ならば!と協力してくれたのだった 当然 姉と兄も協力してくれ料亭と旅館を回していた 「ようこそお越し下さいまして有難う御座います!」と女将が出迎えてくれる 料亭の中へ入ると葛西が出迎えてくれた 客の集団の中に烈を見付けると葛西は笑顔で 「烈君!いらっしゃい!」と迎えてくれた 烈は「シゲ君!」と嬉しそうに謂う お座敷に通され料理が運ばれる 烈はその料理を嬉しそうに食べていた 葛西は料亭をやるに当たって、厳しい料理の修行を始めていた 悠太のリハビリも一段落して、会社に復帰出来るまでになったから、葛西はやっと自分の人生を見直して夢へと向かって歩み出していたのだった まずは小料理屋からスタートした時に、聡一郎に連れられて初めて葛西と対面した 聡一郎は葛西に「その子は宗右衛門を継ぐ者だから、経営のプロでもあるんだよ! 美味しい料理とオマケ一つでアドバイスくれるかもよ?」と話した 葛西は「………この子………【R&R】のリーダーしてる子ですよね?そんな恐れ多いです」と話す 烈は始終PCの画面から目を離さずに料理を食べていた 「母しゃんを愛しても、その想いは報われないわよ!」 突然の言葉に葛西は驚き…………烈を見た 「料亭、旅館を始めたいなら、その思いをキッパリ断ち切りなさい!話は其処からよ!」 そう言い料理を食べて帰って行った それから少しして烈が単独で来る様になった 「ねぇ此処の料理は何処を目指してるの? 高級なの?庶民の味?答えが見えない答案用紙出されても、客は困惑するだけよ?」 ズバッと真髄を突かれ言葉をなくす 葛西はこの子の前では、総て暴かれ曝け出すしかない……と観念し、心の澱を吐露した 烈は黙ってそれを聞き、アドバイスをした まずは距離を置きすぎの母親と兄弟と連絡を取りなさい!と言われ連絡を取った 会いに行く時は何故か………烈も同席した 悠太と聡一郎込みでやって来たのだった 何年かぶりの母と姉と兄だった……… 家族なのに…距離を取り………近寄ろうともしなかった 烈は母親に「女将に成る気はないかしら?」と問い掛けた 葛西の兄は「この子……【R&R】のリーダー烈君だよね?」と問い掛けた 何故にこんな凄い子が……と躊躇する 母親は「今さら私に女将など務まりませんよ!」と返す 「倅の手助けしてあげてやりなさいよ! 貴方の倅は料亭と旅館を復活させる気よ? 其れ等は全ては母親である貴方の為、兄の為、姉の為よ!ならば貴方達は倅や弟を支えて上げなさいよ!家族ならば、苦しい事も哀しい事も分け合い重い荷物を持って上げなさいよ!」 母親は息子を見た 息子は知らない内に大人になり……苦労を刻んだ顔をしていた 烈は「味は悪くはないのよ、ならば後はコンセプトを決めて行くしかないのよ!」と話をさっさと進めて行く 悠太と聡一郎はニコニコと座ってるだけで、役に立ちそうもない 葛西は「別に高級旅館 高級料亭を目指している訳では無いです! でも高級を求める人も、庶民の味を求める人も、楽しんで貰える料亭であり、旅館でありたい! 其れだけです!」と本心を吐露する 烈は「あ~ならば、料金設定を打ち出して一万円コースから10万円コースまで用意して刻んで料金設定するのよ! 五万円コース以上から事前予約にして、特別な材料を用意して高級感を出したら良いわ そしたら客は選んで、それを求められるわ! 料亭の方も料金設定は必要ね! 今時 料金書いてない寿司屋に入るなら覚悟は必要となるからね お金に余裕ないと、それは中々出来ないわ! ボクとか阿賀屋とか接待される側は幾らでも好き放題飲み食いするけど、そうじゃない客は料金が気になるものよ! ボクはケチだけにお得感は最優先よ! 客が誕生日で少し贅沢しに来たんです、なんて謂うなら一品サービスして誕生日プレート入れる そしたら客はまた来たいと想うのよ! そうして固定客を増やして、色んな顧客を抱える! 一遍通りのサービスも、金持ちしか来れない店も、今の不景気な状況を鑑みたら無理なのよ 倒産ラッシュが収まらない 金持ち至上主義は崩壊の一途を辿ってるのよ 高級旅館 高級料亭なんて、たまに来る金持ちしか頼りに出来ないわよ!」 烈の言葉は葛西の根底にある何かを崩して打ちのめした 聡一郎は「この子は康太の六番目の子で宗右衛門を継ぐ者!中々宗右衛門のアドバイスは受けられないからね! 今回は僕と悠太に忖度してのアドバイスだから! 経営のプロの烈の言葉は聞いて損はないからね! また聴きたいと言っても中々多忙で聴けないし、客を選ぶ宗右衛門の言葉なんて、中々のモノなんだからね!」と謂う 葛西は「真髄突かれて息が止まりました!」と謂う 「歯に衣着せぬ物言いするからね彼は……」 「でも総てが本当の事なので………目から鱗でした」 葛西は清々しく笑っていた そして母親と姉と兄に 「俺の為に……協力してくれませんか? 給料も…ちゃんと払えるか………解りませんが、協力してくれませんか?」 と言い深々と頭を下げた 母親は「貴方の為になるなら、どんな協力も惜しみません………怪我した貴方を置き去りしにして………恨まれても仕方ないのに……」 と言い涙を流しながら言葉にする 兄は「食えないならバイトするし、お前は自分を信じて行けよ!」と言葉にしてくれた 姉も「料亭と旅館か、まぁ元々やってたから大丈夫よ!」と笑い飛ばしてくれた そうして烈の指導の元始めた料亭だった 葛西は飛鳥井の社員食堂でも仕事をしていた そして庶民の味を徹底的に叩き込まれる 昼はランチを用意して安価なランチを提供するのも良い! 兄も色んな料理の修行に行き腕を磨いていた 姉は経理の勉強の為【R&R】の事務所へ放り込まれ仕事した そうして修行の果ての料亭であり旅館だったのだ 料亭が大人気になり、旅館も始められた 無理しない様に家族で協力して軌道に乗せたのだ それも総ては烈のアドバイスがなければ成り立たなかった 葛西は大きな壁を家族と乗り越えられて………初恋を過去にやっとケリが付けられた 思い出の1頁に刻む事が出来たのだった そして嫁は烈が葛西の星を詠み見付けてやったのだ 嫁は康太には似ても似つかぬ容姿だが………姉さん女房として葛西を支えて家族と共に頑張っていた 因みに、葛西の嫁は元兵藤の許嫁 すみれだった 烈はすみれは政治家の嫁になるより、経営学を追求する研究をしている程ならば、商売をやる家の方が相応しいと星を詠み出会わせたのだった そして経営が軌道に乗れば大好きな研究だって出来る状況に身を置き、伸び伸びと暮らす方が性に合ってるのだ      葛西は付き合い始めて、グイグイ引っ張ってくれるすみれにベタ惚れした そして大切に大切に愛して共に暮らしていた 今 妊娠中なのに頑張って女将見習いをしていた 葛西の兄と姉の相手も烈は星を詠み、見つけていた 葛西の兄弟も伴侶を得て、より団結を強くして商売に力を入れていた その烈の来店なのだ すみれは大喜びして、烈にすりすりしていた 葛西はすみれから烈を取り上げ、すりすりする 烈は「何でボクは家出中なのに、デカい奴等と会わないといけないのよ!」とボヤいた 神野は「烈!本当に家出してるかい?」と心配して問い掛けた 「そうよ、ボクは今日は静かに過ごそうと想っていたのに…………」 阿賀屋は「そう言うなよ!」と烈の肩に腕回してい言う 鷹司は阿賀屋が烈を見つけ、強引に珈琲屋へ入った下りから話した 相賀は「あぁそれ康太と同じではないか………」と笑った 神野は「あ~あの兄弟もデカいから、康太はオレは養子だと想ったとボヤいてたな」と笑いながら話す それを聞いた葛西は「康太さん身長が悩みでしたね………悠太と話す時見上げると首が痛くなるからしゃがめ!と何時も謂われてるって言ってたもんな………」と過去を思い出し話した 烈は「皆デカいから………ちっこちのの気持ちが分からないのよ!」とボヤいた 柘植は「そう言えば最近 レイ君達の成長は目まぐるしいね!」と話す 烈はブスッとした 須賀は「烈は烈だよ、気にしなくても大丈夫だから!」と話す 「凛も椋もレイたんも………成長速度凄いのよ にーに達はDNAが良いから、育つ育つ! もぉね嫌になる程にね! だから今日は一人静かに過ごし、夕方に山下公園の海に向かって、デカい身長の奴なんて大嫌いだぁぁぁ〜!縮んでしまえ!と叫ぶ予定だったのよ! 蒼佑に会ったのが運の尽きだったわ!」 神威は「主はどんな姿になろうとも儂の倅じゃ! なに、身長なんぞ気にしなくても伸びる時には伸びる!伸びなきゃそれなりに生きるだけじゃ!」と気休めを口にする 「んとに、デカい奴等はちっこちヤツの気持ちが解らないわね! 満員電車……吊り革に掴まれないヤツの気持ち解る? 商品棚に隠れて、あ!烈が消えた!謂われるボクの気持ち解る? 解らないわよね………」 皆 言葉もなかった……… そして笑ったら悪いと思いつつ……肩をプルプル震わせた 阿賀屋は「身長が人より少し小さくともお前は誰よりもバリバリ存在感あるから、気にしなくても大丈夫だって!」と慰める 「少しはデカいのから離れてリフレッシュしたかったのよ………」 鷹司は「諦めよ!儂とお主は別に身長差が有ろが無かろうが関係ない絆があるではないか!」と口にして乾杯して飲む そして「儂の家に高下駄あるから履くか?」と謂う 「嫌よ!それ緑道の高下駄じゃない! そんな烏天狗みたいな高下駄要らないわよ!」 阿賀屋は笑って「なら神頼みだな、さぁ俺に祈ってみろよ!」と謂う 「………あのさ、かなり前に恵比寿連れて宝くじ買いに逝かせたのよ! 恵比寿の効力50万しかなかったのよ! だから蒼佑に祈ってもそれ以下じゃない?」 「失礼な!俺は祈れば効力アップだって!」 「弁財天に祈った方が効力ありそうだから、そっちに祈るわ!」 「いーや!俺だ!」 阿賀屋はプンプン怒って訴えた 鷹司は「蒼佑、そこら辺にしとけ!お前は企業秘密なんだろ?なら黙っとけ!」と釘を差した 阿賀屋は「うっ!」と黙った 葛西の料亭で昼を楽しみ、夜は鷹司の屋敷へ向かう 凄く広い屋敷で母屋の本宅の豪邸を中心に獅童を継ぐ者の屋敷 海堂の屋敷 綺堂の屋敷、そして使用人の屋敷、鷹司緑翠の政治塾が並ぶ壮大な豪邸だった 因みに鷹司緑翠の政治塾の書生は、政治塾の2階で寝泊まりして暮らす事になっていた 烈達は母屋 本宅へと招かれた 本家当主 鷹司緑道と妻節子とが出迎えてくれた 緑道は「宗右衛門!阿賀屋!他の方々もようこそ鷹司の家へ!」と言い歓迎ムードだった 座敷に通されご挨拶した 鷹司は「兄者、宗右衛門殿が銀座近くにあったビルの除霊をして下さった! 対価は一千万円故 お支払いをお願い致す!」と告げる 緑道は「承知いたした!しかし宗右衛門を引き摺り出して一千万とか、安すぎるではないか! 獅童、主は友達価格で値切ったのか?」と問い掛けた 「いいえ、兄者、本人が一千万請求するわよ!と申されたのです!」 この兄弟の会話にも頭痛がする 「あ~、付けといて!その内回収するから!」 烈はもう面倒で謂う 鷹司は「そう言う事で儂の屋敷に行くとするわ!」と言い獅童の屋敷へと向かう 渡り廊下で繋がる家はデカくて機能的ではない まぁ、本宅通らずとも外にも道は作られているが、面倒くさいのは間違いなかった 母にこんな家に過ごすわよ!なんて言ったら 『あ~歩くのメンドイわ!』と絶対に謂われる! 5階建ての5階に住まわせるのにしてもエレベーターなきゃ、『ダルぅ!』『部屋が来てくれねぇかな?』と絶対に言うに決まってるのだ 烈は「本当に無駄にデカくて嫌になるわ!」とボヤく 鷹司は「そう申すな由緒正しき家なのじゃからな!」と言う 獅童の屋敷に入ると妻の梨紗子がお出迎えしてくれた 梨紗子は「お料理はご用意しております!どうぞ!」と言い客間へお通しする 烈は客間へ行き座卓に座ると 「鷹司にいると足腰丈夫になるわね!」と無駄にデカい屋敷にボヤいた 神野達は鷹司の屋敷は始めてで、ドキドキしていた 相賀は「今時 ドームより大きい敷地面積を要す御屋敷が存在するとは想ってもいませんでした!」と言葉にした 烈は「鷹司は摂家 五家に入る名家だからね そりゃ広大な敷地に家を持つわよ! そしてそれは受け継がれし家業を生業として生きるしかない家なのよ!」と謂う 鷹司は「今世は儂の獅童と綺堂が存在しておる そろそろ鷹司も入れ替えの時期であるから、宗右衛門 次代の選出を兄者と共にお願い致す!」と謂う 「飛鳥井は来世で総入れ替えするからね 鷹司もそろそろなのかもね………」 「儂は来世は烈と魔界へ行き過ごすと決めておる!やっと………何千年の転生を終えられるわい!」 阿賀屋は「ならば、俺も次代に託さねぇとな! 烈、おめぇ誰かチョイスしてくんない?」と謂う 「そうね、葛飾柴又に祀られている神あたりに声かけちゃおうかしら?」 「へぇ………それは迷惑するんじゃねぇか? 他の奴にしてやれよ!」 「まぁ声掛けるだけするわね!」 「まぁ良いんじゃねぇか?」 烈は笑っていた 鷹司は「さぁ飲むぞ!」と謂う 後は楽しく飲兵衛の時間に突入する 騒がしい喧騒をよそに烈はジュースを飲む 梨紗子が烈に「今度着物がご入用でしたら、私にもお声掛けて下さいね、私もお着物好きで持ってますから!」と謂う 「ばぁたん達と歌舞伎座にでも行ってくれたら嬉しいわ! ばぁたんも良い着物持ってるのよ! それを出して着ないとなのよ! 着物着る機会を増やしてあげたいのよね!」 烈が謂うと阿賀屋が 「よし!俺が一肌脱いでやるよ!」と妙齢の婦女子のエスコートを買ってくれた 前にも何度か妙齢の御婦人のエスコートを買って出てくれた阿賀屋だった 神威は「この家 肩凝るからな!儂はガード下に行きたいわ!」と言い出した 神野が「なら飛鳥井へ行って良いか聞くよ!」と謂う 鷹司は「あ~神威は堅苦しいの大嫌いだからな!」とボヤく 烈は「梨紗ちゃん、獅童は不器用な男だけど、妻を愛して大切にしてるわよ! 梨紗ちゃんに惚れたのは新宿御苑での茶会の時 桜の下で始めて出逢い一目惚れしたんだからね!」と告げる 「烈………」 「まぁ堅苦しい家に嫁ぐのは大変なのよ! だから綺堂の妻が出しゃばり過ぎなら、痛い目見させてやるわよ!」 「……っ!」 梨紗子は息を飲んだ 「出自ならば梨紗ちゃんの右に出る者などいないわ! そして位としたならば、緑道の次は獅童、綺堂と海堂はその補佐!それを頭に叩き込まれないピーマン頭の女を妻にするから勘違いしちゃうのよ!」 烈はそう言うとスクっと立ち上がり母屋の方へ歩いて行った 阿賀屋と鷹司と妻の梨紗子は気になり烈の後を追った 緑道は応接間で休んでいると、烈が行き成りやって来て驚いていた 「どうされた?烈?」 烈は敢えて宗右衛門の声で 「緑道よ、主の家は何時から獅童が妻を軽視する様になったのじゃ?」と問い掛けた 緑道は「え?そんな事は御座いません!」と答えた 「本当にそうか?」 烈は携帯を取り出すと動画を再生して緑道に渡した 其処には綺堂の妻が獅童の妻に嫌がらせをしていた ある時は梨紗子に水をふっかけたり、着物の裾をわざと土足で踏み付けたり… 日々 少しずつ嫌がらせをする 手紙類は切り刻まれ、私書箱に変更して届かない様にして貰った 「この女、銀座のクラブの女なのじゃろ? 鷹司も地に落ちたな………水の女を妻に据えるとは…」 「え?皇族の繋がりのある者ではない………と?」 「平民の出のクラブの女よ! 皇族、とんでもない! 上手に身分を偽ってるけど、やはり下品な女はやる事も下劣ね!」 緑道は顔色を変えた 「それは確証が有っての事ですか?」 「当たり前の事じゃない! ボクの息の掛かった書生を育てさせているのは、何の為だと思っているの? 後 確証に変わったのは、辻が花を借りに来た時 梨紗ちゃんは困った顔してたのよ で話に聞けば、保管庫の鍵が破られてて、大切な親から戴いた貴金属が無くなったと言ったのよ 調べたら……あの女、梨紗ちゃんの貴金属勝手に売りに出してるわよ! 国宝級の貴金属なのよ! 即座に売りに来た奴を逮捕させて、貴金属は取り戻したわ! 売られたならばに二度と手に入らぬ逸材 10億は下らない! それを盗んだのよ!」 「それは捨て置けませんな!」 緑道は即座に鷹司を護る裏の部隊を呼び出して 「綺堂が妻を此処へ連れて来なさい!」と命令した 烈は背筋が凍る程の冷たい笑みを浮かべていた 緑道は烈が、嫌 宗右衛門がその笑みをする時、情け容赦のない裁きをする時だと理解していた 綺堂の妻が強引に裏の部隊の奴等に連れて来られる かなり暴れて無礼な振る舞いをするな!と怒り狂って叫んでいた 宗右衛門は「無礼?何方が無礼な行いをしておったのか解らぬ愚か者よ!黙るがよい!」と吐き捨てた 綺堂は妻の後を追い母屋に姿を現した が、其処には………緑道と飛鳥井宗右衛門がいた 綺堂は「宗右衛門………お越しでしたか………」と賢まった 宗右衛門は「なぁ綺堂よ、クラブの女を皇室の関係者と嘘を付いて鷹司に入れた真意は何処にある?」と問い掛けた 綺堂は「え?妻は皇室の関係者なのではないのですか?」と問い掛けた 烈は「この縁談、何処から持ち上がったのかしら?」と問い掛けた 綺堂は「宮内庁トップの職員と申す者です!」と答えた 烈は「ならば本家のご当主様からお逢いしたいと申してると言い呼びなさい!」と言う 緑道は「直ぐ様 呼べ!」と命令した 綺堂は即座に携帯で縁談を持ち掛けた宮内庁トップの職員に連絡を取った が、電話は繋がらながった 何度も何度も電話したが繋がらながった 宗右衛門は其れを横目に見て綺堂の妻に 「有馬梨紗子は摂津有馬氏の子孫となるお家柄なのじゃ! 戦時下では有栖院家と並ぶ華族の出となられるお家柄! クラブ上がりの女が並べる家ではない! 恥をしれ!」と吐き捨てた 烈はサコッシュから携帯を取り出すと、唐沢に電話を掛けた ワンコールで出た唐沢は 『お~!どうした?』と問い掛けた 「唐ちゃん、今直ぐに宮内庁のトップ職員を連れて、摂家 五家 鷹司の家まで来てくれる? 下手したら宮内庁を語る奴等から、政治屋とつるんで悪さしようとしてるのゴロゴロ出て来るかもよ?」と告げた 堂嶋から聞かされていた事が現実になると謂うのだ………うんざりとした日々を想い 『あ~また仕事増やしやがって! 了解した、此れから宮内庁トップの職員を連れて鷹司の家に行けば良いんだな!』とボヤく 「そう、お願いね!」 烈は電話を切ると「ボク、家出中なのに………鷹司の御家騒動に駆り出されちゃうのね………」とボヤいた 緑道は「烈!お主は家出中であったのか?」と意外だと言わんばかりの顔をした 「そーよ!なのに、何故鷹司は経歴も調べない嫁貰ってるのよ! その内 節ちゃんの貴金属とかもガッポリ盗まれちゃうわよ!」とボヤく 節子は「それは嫌に御座います!烈が貸してと申した時に盗まれていたら貸せぬでは無いか!」と真面目な顔で言う 女は「家柄がナンボのモノよ!」と吐き捨てる様に叫んだ 烈は能面の様な顔をして女を見ると 「別に家柄なんてどうでも良いのよ! でもね、受け継がれなきゃならない家はあるのよ!そしてそんな家は家も血も総てが穢れぬように、まやかしを排除する! 嘘で塗り固めた経歴なんて、直ぐに剥がれるのよ! お前より、お前を動かしていたバックが気になるわね! クーたん、動けなくして体の軸にピンを刺しといて!」と謂う クーは「了解した!」と言い自分の毛を1本抜くと鋭い長い針にして女の頭からズボッと針を指した 女は針を刺された瞬間………身動きが取れなくなり焦っていた 暫く待つと唐沢が宮内庁のトップの職員を連れて鷹司の家へとやって来た 烈は綺堂に「貴方に縁談を持ちかけた人かしら?」と問い掛けた 綺堂は「この方は何方何ですか?」と問い掛けた 唐沢は「この方は宮内庁トップの職員の方です!」と答えた 綺堂は信じられない顔をした 烈は携帯を取り出すと一生に電話を入れた ワンコールで出た一生に烈は 「カズ、お願いあるのよ!」と頼んだ 『おい!烈!お前家出したなんて聞いて俺は凄く心配したやんか!』と叫ぶ 「カズ、そんな事より頼みがあるのよ!」 『何だ?』 「崑崙山のボクの家の水晶玉持って来くれるか? 皆を乗せて崑崙山へ連れて行ってくれるか?  どっちかをお願いしたいのよ!」 『水晶玉は落としたら怖いから、お前を連れて崑崙山へ行くとするわ!』 「なら摂家 五家 鷹司の家に来てくれないかしら?」 『また………家出してるのに難儀な家にいたりするんだな………』 「蒼佑に会ったのが運の尽きなのよ! ボクは静かに夜が更けるのを待ち、海に向かって 『高身長なんて嫌いだぁ〜!縮んでしまえ!』と叫ぶつもりでいたのよ!なのに!!」と怒っていた 一生は安堵の息を吐き出して笑った そして『今から鷹司の家に向かうとするわ!』と約束してくれた 暫くすると一生が鷹司にやって来た その隣には康太と榊原もいた 康太は「烈、家出してるのに、難儀な事に巻き込まれてるやんか!」と笑って話し掛けた 烈は「母しゃん!!」と言い嬉しそうに笑った そして鷹司緑道と、綺堂の妻を黙ってじっと視ていた 「この女の縁談を持ち掛けた宮内庁関係者は………派閥の勢力を着けたい浅野派の息が掛かってんぞ! もっとを洗えば、大仏と何らかの因縁あるかもよ?」と謂う 唐沢は顔色を変えて「詳しく話しして貰えませんか?」と問い掛けた 康太は「まぁ待て、伊織、崑崙山の烈の屋敷の水晶玉を赤いのに乗って持って来てやってくれ! そしたら女からの情報は全部抜き取れる!」と謂う 榊原は節子に「風呂敷貸してください!」と謂うと節子は奥へ行って風呂敷を取って来て榊原に渡した そして一生と榊原は鷹司の庭に出ると、一生は龍になり榊原を乗せて崑崙山を目指した 康太は節子に「梨紗子が虐められてるの知ってるのか?」と問い掛けた 節子は「いいえ………私は存じませんでした………」と答えた 「流石と緑道を継ぐ者の妻には言えぬか……… が、随分と下に見積もられたな………獅童の縁談を取り纏めたのは我が祖父 源右衛門だ! 梨紗子を理不尽に迫害したって事は、飛鳥井を敵に回したって事だぜ?」 康太の言葉に緑道は「我が一族は飛鳥井を謀った事などない!その関係性は飛鳥井が斯波の世から続く!我等が飛鳥井の敵に回る日など来ぬ!」と一蹴した そして錫杖を手にして「烈には光輪セットの錫杖貰っておるし、我が弟との腐れ縁は健在 我が弟は宗右衛門と阿賀屋の為に、宗右衛門は弟と阿賀屋の為に、阿賀屋は我が弟と宗右衛門の為に命を賭しても護れる絆が在る! そうではないのか?真贋!」と言葉にした 康太は笑って「だな!家出中なのに、その腐れ縁に捕まり、この機会に梨紗子の件も片付けようと一石二鳥狙ったんだかんな!」と謂う 緑道は「家出中と申されていたが……本当に家出されていたのか?」と問う 康太は「最近 オレんちの子供は成長期でな、それに比べて今世の烈は母親の胎内から栄養不足で超未熟児として生まれたってのもあり、伸び悩み中なんだよ! だから夜に海に『高身長なんか嫌いだぁー!縮んじまえ!』と叫ぶ気で家出したんだよ!」と笑って話す 緑道はそれは………返答に困るやんか!と内心思った 其処へ崑崙山の烈の屋敷から大きな水晶玉を持って来た榊原と一生が家の中へ入って来た 烈は着ていた黒のジャージの上着を脱ぐとその上に水晶玉を置いて貰った 康太は「電気を消してくれ!」と謂うと節子はリモコンを手にして電気を消した 烈は女の手を取り呪文を唱えた すると水晶玉がピカッと光り、其処には女がクラブで仕事してる様が映し出された 榊原は携帯を取り出すと、その映像を記録を始めた 女は客の一人と親密になり、身も心も男に骨抜きにされ情人の言いなりになる駒へと成り下がり、クラブを辞め、マナーの勉強や教養を身に着け、皇室の身内であるかのような仕草を叩き込まれていた そして宮内庁トップの職員が縁談を持ちかけ、綺堂との見合いの場が持たれた 宮内庁トップの職員は裏献金で摘発された議員と繋がりがあり、唐沢は目を光らせてその映像に映る奴等を写メしていた そして偽の釣書で偽の身分で綺堂と婚姻 婚家に嫁いでからは憂さ晴らしで梨紗子にネチネチ虐めをしたり、習い事と称して男の呼び出しがあると会いに行き、謂われるままに何人もの男と不倫していた 鷹司の家では淑女として過ごしていなければならないからか? 外に出ればアバズレが如く男との乱痴気騒ぎだった 緑道は怒り狂っていた 緑道、若かりし春に結婚を決めた女に裏切られ寝取られた苦い思い出がある それ以来……軽薄な女には虫酸が走る程の嫌悪感を抱くのだった その寝取られた女が、この女の様に何人もの男と関係を持ち、一番釣書の良い高収入な男に乗り換えられたのだった 緑道は「もう良い!これ以上は不要!」と吐き出した 烈は女の手を離した 節子は電気を点けた 宮内庁トップの職員が「その女を鷹司に勧めた男、宮内庁の職員ではあります! トップではありませんが、職員として働いてます!」と言葉にした 烈はサコッシュから書類を取り出すと 「その様ね!そして浅野派の奴等が絵図を描き、強固たる繋がりを持ち、頭一つ突き抜けよう画策し、その名声をいい事に、天羽派と清水派を上手く削り合わせようと操作中みたいよ? その内 共倒れになったら増渕派とか旧二階堂派とかが矢面に躍り出る算段なのが見え見えなのよね!」とボヤく 緑道は「宗右衛門は総て知ってて真贋を担ぎ出されたのか?」と問い掛けた 「総ては知ってるけど、母しゃんを担ぎ出す気は皆無だったわ! なんたってボクは家出中だからね! でもね機会さえあれば、粛清に乗り出すつもりで情報は集めていたのよ! この世は総て確たる証拠がモノを言うのよ! 証拠もなしにモノを言えば、嘘つき呼ばわりされて糾弾されるのは此方側になる! そんな事を延々と思い知らされて今に至るボクが、何の証拠もなしに動く理由がない! まぁ今日、この場で出す気はなかったけど、折角鷹司にいるんだし、この際梨紗ちゃんの悩みは解決してあげようと想ったのよ! 不器用な獅童の初恋なのよ! 梨紗ちゃんの心が弱り実家に帰られちゃったりしたら、獅童はショックで命でも断ちかねないわ! ねぇ!真央たんもそう思うわよね!」 烈がそう言うと阿賀屋は 「あぁ、獅童は梨紗子命で初恋の相手故、ショックで自害しかねないわな! 我等が仲間を傷付けられるならば、それは命で償ったとしても足りぬ! 生きるのが嫌になり、死んでるのが嫌になる程に取り立てねばならぬ!」 と、何時ものチャラい雰囲気は微塵も感じさせず、絶対の君主然とした恐ろしさを垣間見せていた 阿賀屋の当主として甘い顔など見せはしない それは親でも兄弟であったとしても、主従関係は絶対的にあり、阿賀屋はその頂点にいるお館様だと言うのが伺えられる絶対的な力を見せていた 烈は「獅童の恋を実らせる為に、2歳のボクはそれはそれは頑張ったのよ! 真央たんも一緒に梨紗ちゃんの懐に飛び込み、獅童はええ奴なんや!アピールしまくり、その恋を成就させたのよ! それを阿賀屋の方から源右衛門へ話を持って行き結婚を取り纏めさせた 凄い苦労したのよ! なのに、そんなイジメで梨紗ちゃんが実家に帰っちゃったら…………ボク達は毎日毎日泣き暮らす獅童の相手しなきゃいけなくなるじゃない!」とその面倒臭さを口にする 阿賀屋も「そうだ!そんな日がきたなら、それはそれは面倒で裸足で逃げ出したくなるやんか! めそめそ泣く獅童だぞ! 暑苦しいわ、むさ苦しいわ、鬱陶しいわ、本当に勘弁だわ! 梨紗子と結婚させる為に俺と宗右衛門も持てる限りのコネを使い結婚させたんだ! その苦労は緑道、お主も知っているじゃねぇか!」とボヤく 緑道は「うっ!そうであったな、奥手な獅童は、ぽぼぼぼぼくは、と自己紹介も儘ならなかった…… 梨紗子、頼むから弟から離れないでやってはくれぬか? 主を虐めておったこの女は家から追放してやる! そして死しても楽になどさせぬ! 極楽浄土の道へなど行かせはしない! この鷹司を侮るなど………絶対にあってはならぬ!」と吐き捨てた 女は震えていた……… 梨紗子はそんな烈や阿賀屋の想いが嬉しくて泣いていた 康太は動けぬ女を見て「烈、この女、何かしたのか?」と問い掛けた 「暴れるし、自害でされたら大変だからピンで止めたのよ!」と謂う 阿賀屋は女に猿轡を施すとポケットから手錠を取り出して、女の両手に手錠をした 烈は冷たい視線を阿賀屋に向けた 「またアブノーマルな遊びしてたのね……」 「違う!今回は断じて違う! 此れは屋敷の者から、俺の周りを変なのが彷徨いているから、何かあったらこの手錠で!って渡されてるんだ!」 「まぁそう言う事で良いわ………」 と冷たく言う それを聞いた唐沢が「あ!阿賀屋蒼佑氏には殺害予告出てたわ!」と思い出して謂う 烈は眉を顰め「殺害予告?」と問い掛けた 「あぁ、飛鳥井烈 兵藤貴史 阿賀屋蒼佑 其れ等は有名掲示板で殺害予告が出されていた で、俺も慌ててお前の居場所を確かめねば!と想ってたらお前から電話きたから一石二鳥狙ってみたんだよ!」と笑い飛ばしていた 康太は「え?烈は前々から出てたし、殺し屋まで雇われた経緯があるから驚かねぇけど、貴史と蒼佑………もなのか?」と呟いた 烈は「殺害予告出てたのね……まぁ目の前に来たならば、一巻の終わりにしてやるのに!」とボヤいた 唐沢は「おいおい、生かして俺等に引き渡してくれよ!」とその危ない考えに止めた

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