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第63話 春の嵐 前哨戦 ❷
烈は「手を出して来なきゃ自己防衛を発動もしないから大丈夫よ!
でも悪意を持って来るならば、迎え撃つのは仕方ないじゃない!」と謂う
唐沢は「まぁ其れでも生かして俺等に渡してくれ!んとにな、この先は水晶玉からの映像やお前の資料を元に捜査を掛けねぇとならねぇんだ!
まぁ宮内庁職員は即座に更迭して身柄の確保する事にする!」と謂う
榊原は烈と唐沢がそんな雑談をしている間にもテキパキ動いていた
「唐沢さん、この屋敷にこの女を何時までも置いて置くのは危険です!
今直ぐに移動をお願いします!」と謂う
康太は「今動かしたら相手の思う壺ですがな……途中で殺されるかも知れねぇな…
あ、そうだ!神の道通って綺麗の研究室へ連れて行って調べるしかねぇべ!」と謂う
クーが女を止めている針を抜くと、女は暴れて逃げ出そうとした
榊原は女の鳩尾に拳を入れて気を失わせると、肩に担いで立ち上がらせ
「蒼佑、手錠の鍵持ってますか?」と問い掛けた
阿賀屋は「あ~、後で屋敷の者に持って越させるか、切ればええやん!」と簡単に言う
康太は一生に「一生は車で飛鳥井へ還れよ!
そして多分いるんだろ?神野達!
アイツ等も誰か呼びに越させて飛鳥井へ連れて行ってくれ!」と頼んだ
すると緑道が「ならばバスを出す故乗ってゆかれよ!」と詫びのつもりで言う
そして真贋と宗右衛門に深々と頭を下げ
「この詫びは必ずや!」と謝罪した
烈は「良いわよ!節ちゃんと梨紗ちゃんが幸せならばボクは後はどうでも良いのよ!」と謂う
節子は烈を抱き締めた
烈は鷹司に「梨紗ちゃんも飛鳥井へ連れて行きなさい!蒼佑 後は頼むわね!」と言うと神の道を開いた
クーは水晶玉を風呂敷に包むと手にして
「俺は崑崙山へ水晶玉を返して来るとする!」と言い姿を消した
烈が神の道を開くと、黄泉の旅路の番人に
「此れより数分だけ目を瞑られよ!
炎帝が緊急故通る事を許可されたし!」と問い掛けた
フードを被った髑髏の番人は
『緊急ならば目を瞑る………早く逝くが良い!』
と許可を出した
烈は神の道の中から
「父しゃん 許可を取ったから早く!」と謂う
榊原は女を抱えて康太と一緒に神の道へと入って消えた
緑道は配下の者にバスを動かさせ、一生は皆をバスに乗せると飛鳥井の家に向かわせた
聡一郎に電話して、此れから皆が飛鳥井へ向かうと連絡をいれた
一生は乗って来た車に乗り、綺麗の研究室を目指した
唐沢は宮内庁トップの職員と共に鷹司を後にした
やる事は果てしなくあるのだ
待機させておいた車に乗り込み、件の宮内庁職員の更迭を指示した
緑道は………ガックリと肩を落とし
「まさか………内側にこんな訳の解らぬ奴を忍び込まされていようとは………些細な不協和音埋め込まれたら瓦解するのは容易い………」と呟いた
綺堂もまさか自分の妻が謀られた存在だとは想ってなくて………ショックは計り知れなかった
緑道は一族の者を総動員して、女の私物を確保させに逝かせた
女の服や家具は総て処分させ、私物は情報提供の為蔵に放り込ませた
そして穢れた家を祓うべく封印した
綺堂は身の穢れを祓う為に、鷹司の所有する霊山に半年修行に行く事が決定した
鷹司を謀ろうとした者を、緑道は絶対に許さない!そんな想いに駆られていた
そして裏の部隊に全容解明を指示して、鷹司に仇成す輩は総て排除しろ!と指示を出した!
そしてその件に関わった者、全てを排除後ろ!と命を出した!
裏の部隊は主の命を受け、即座に姿を消した
女を抱えた榊原と康太と烈は、綺麗の研究室へ到着すると、神の道を出た
厳重な扉を鍵を取り出してドアを開けると、榊原は女を抱えて入った
康太も入ると烈も入りドアを閉めた
ドアは自動的に閉まり施錠された
奥から施設のスタッフが出て来ると烈は
「この女を妨害が一切入らない部屋へ運び込んで、薬で眠らせ低体温にして眠らせ続けて!」
と指示を出した
スタッフは女を捕縛用の布に包むと、奥へと連れて行った
康太は「此れで様子見だな、後は鷹司の家の事だから緑道が動くだろ?」と謂う
他の家の事に口を挟むな!と暗に謂う
「解ってるわ、ボクは梨紗ちゃんに意地悪するこの女さえ排除出来れば良いのよ!
しかし、今回はアツとノリとミとトが本当に予想以上の仕事してくれて役に立ったわ!
嗅覚も冴えて、瞬時の判断で動けれる様になってて、本当に証拠集めに協力して貰えて助かったわ!与えたミッション以上の動きで先が楽しみになったわ!」と感心して謂う
康太はそれを聞いて嬉しそうに笑った
榊原は研究室の外に出ると
「足がないです………どうしますかね?」と謂う
其処へ丁度一生が迎えに来てくれた
烈は助手席に乗ると、康太と榊原は後部座席に乗り込んだ
康太は一生に「赤レンガ倉庫の駐車場に止まってくれ!」と頼む
烈は「母しゃん……」と名を呼んだ
「家出の目的果たしてから家に帰ろうぜ!」
烈は何度も頷いた
烈は赤レンガ倉庫の駐車場に車を停めて貰うと、海に向かって歩き出した
康太は笑って窓を開けた
海の前まで歩いていくと立ち止まり
烈はすぅ~と息を吐くと
「高身長なんて嫌いだぁぁぁぁぁ〜!
縮んじまえぇぇぇぇぇ!!」と叫んだ
康太はそれを聞いてクスクス笑った
榊原も「大人になりつつあるんですね」と感慨深く呟く
烈はスッキリした顔で車にやって来ると、助手席に乗り込んだ
そして飛鳥井の家へと向かう
飛鳥井の家に着くと客間から楽しい声が響いていた
烈は「お腹減ったわ……」と呟いた
客間から翔が「母さん 父さん お帰り」と顔を出して烈を見て走って弟を抱き締めた
烈は「にーに……お腹減ったのよ……」と謂うと客間に連れて行き、お皿に料理を取り分けて渡した
慎一は山盛りサラダを持って来ると烈に渡した
玲香は「烈、お帰り、其れより、此の方は何方様じゃ?」と、始めて目にする梨紗子が誰なのか?と問い掛けた
「彼女はね、鷹司梨紗子、鷹司緑翠の奥さんよ!」
家族はええええ!!!!こんな飲兵衛に、こんな美しい姫みたいな奥さんいたのね!!!と想った
「皆 梨紗ちゃんの事、お姫様みたいに綺麗だと想ったでしょ?
そりゃそうよ、時が昔ならば梨紗ちゃんは姫様だもの!
摂津有馬氏の子孫の家の出だからね!
でも今は獅童の嫁の梨紗ちゃんよ!
ばぁしゃん、梨紗ちゃんと、歌舞伎座とか着物着て観に行ったら?」
烈が謂うと玲香は瞳を輝かせ
「それはよいわいな!」と言った
梨紗子は「歌舞伎役者の吾妻勘十郎は母方の従兄弟に当たります!
烈からお聞きしました、海老様がお好きだとか!
私は欣様が好きで御座います!」と謂う
「おぉぉ!欣様かえ!良い趣味しておるな!
我も欣様は大好きじゃぞ!」
「まぁ!!こんな話が出来るなんて!!」
と梨紗子は嬉しそうに話していた
烈はいつの間にか寝てしまっていた
一生が背負って部屋に連れて行き、着替えさせて寝させてやる
烈は少しだけ目を開けて
「カズ 準備出来てる?」と問い掛けた
一生は烈のベッドの横に座って
「あぁ、北斗のパスポートも貰い受けに行った
荷造りもしてるから、準備万端だ!」と答えてやった
「なら大丈夫ね、レベルの高い馬術競技の本場を見て来なさいよ!
倭の国も海外の調教師を招いて技術の底上げしてる所が多いからね、かなり練度の高い馬が此れからは名を馳せる事になるわ
それに置いて逝かれたならば、もう後はないのよ
飛鳥井の長きに渡る馬主は足を洗わねばならないわ………」
「俺も北斗も頑張って吸収して来るから、大丈夫だ!力哉も今月一杯で飛鳥井退社するんだな……
それって本人は納得してるのか?」
「納得してるわよ!リキちゃんは一つの仕事をコツコツとやり遂げる方が肌に合ってるのよ
でも今は秘書課が出来て、仕事の割り振りしてるからね
誰の秘書と固定されないから、回される仕事を熟さなきゃならないのよ!
仕事はジャンルを問わずに来るからね、どうしてもリキちゃんの苦手分野も出て来るのよ
其れよりは一つの仕事を調整しながらやる方が合ってるのよ!」
「あぁ………今の秘書課は秘書が結構いるからな……康太のみの秘書と謂う訳には逝かねぇよな……」
「そうなのよ、元は母しゃんの秘書と謂うより、父しゃんの秘書みたいなものだったからね!
だから今 結構 リキちゃんは苦痛な顔して仕事してる時とか見掛けたのよ」
「ならば、俺等と共に馬を育てるのに尽力して貰うとする!」
「そうね、その方がリキちゃんは幸せなのよ!
そしてカズはリキちゃんから来世の話とか聞いてる?」
「来世の話?そんなのされてねぇよ………」
「そう………なら答えはまだ出してないのね………」
「何の話だ?」
「それは本人から聞いてよ
ボクが口にする事じゃないし、本人が話さないのに、無理強いして聞いちゃ駄目よ!」
「解ってるよ!」
「ならおやすみ!」
烈はそう言い眠りに着いた
きっと一生の心の内を占いで知って話してくれたのだろう………
一生は烈の頭を撫でて
「ありがとうな烈!」と言い部屋を出て行った
烈は「運命ってどうしてこうも………残酷なのかしら?…………」と呟いた
そして静かな闇に飲まれ…………眠りに着いた
翌朝 ゆっくり過ごしていると唐沢から御自宅へ伺う旨の連絡を貰った
飛鳥井の家にやって来ると!唐沢は不機嫌な顔をしてソファーにドサッと座った
唐沢は「宮内庁で爆破騒ぎあったのは御存知か?」と尋ねた
康太は「知らねぇよ、でもタイミング的に宮内庁トップの職員と嘯いた奴が自爆でもしたのかよ?」と口にした
唐沢は「知っていたのか?」と非公開な情報なのに、何故知ってる?と想った
烈は「ニュースに流してないのなんて知る訳ないじゃない!
でも自爆なら音も凄ければ、焔も煙も凄いからバレるのも時間の問題ね
宮内庁辺りならば、劣化した家電から出火して爆発して火の手が上がった………とか報道するしかなさそうね 自爆したなんで流せないもんね?」と謂う
「だから知っていたのかよ?」
「知らないわよ、でも更迭しただけなら、自爆も可能性に入れとかないと………って想ったのよ!」
烈が謂うと康太が「だな!」と答えた
「で、宮内庁の職員から黒幕を聞き出すのは不可能になった!」
と唐沢はボヤいた
烈は「あれは噛ませ犬みたいな位置だったから構わないのよ!
それに自爆しなきゃ、緑道に消されていたわ!
唐ちゃんは鷹司の家の事……何処まで知ってる?」と問い掛けた
「鷹司……あんまり俺と接点ない家だから見えて来ねぇから何も知らねぇよ!」
「あの家も古いからね、転生者が転生して名を継ぎ、仕事をしてるのよ!
それは飛鳥井と変わらないけどね、あの家は未だに裏の部隊が存在するのよ
国家も法律もルールもあの家には通用しないのよ!治外法権なのよ、だから当主が決めた事には絶対に逆らえはしない!
そんな独裁的な家だから、飛鳥井は目を光らせ、あの家が常軌を外れたならば、制裁を下させる唯一無二の存在として繋がっているのよ!
あの家だとて飛鳥井家真贋には何も言えない!
言えば即座に禍根も残さず消されるのを知っているからね!」
烈が謂うと康太は
「まぁ軌道を逸れねぇならば、何も謂う気もねぇよ!それにあの家にトドメを刺せるのはオレだけじゃねぇぞ!
飛鳥井家 宗右衛門も同列で物申せるんだよ!」と説明
唐沢は「まぁ俺はしがない宮仕えだから、何も言わねぇけどな、俺の仕事は減らしてくれ!」とボヤく
「で、宮内庁職員と繋がっていたバックが、解らなくなったって訳なのね?」
「そうだ!」
「裏の繋がりなら政治屋絡みで利益還元祭受けたい派閥の仕業よ!
まぁ政治屋は放っておいても何れ自滅するから、互いで互いを削っている間は、放っておいて構わないのよ!
其れより………ボクと兵藤きゅんと蒼佑の暗殺計画立てやった奴が誰か?なのよね………」
「想像つかないのか?」
「ボクはこの世から消したい順位一位取れそうだけど、蒼佑はね……予想は付かないわ
そもそも御館様はあまり外には出ない存在!
まぁボク関係で表に引っ張り出してしまったけどね、あの家も旧くから在る家でね
転生者が御館様になる一族なのよ!
オギャーと生まれた瞬間、御館様になり以来芸道の為に骨身を惜しんで生きるが定めなのよ
そんな阿賀屋をターゲットにされる訳がないのよね!」
「貴史は?」
「アレはイギリスと倭の国の両国から煙たい存在として、目は付けられてるけど………殺害予告は出る程じゃないのよね
ならば、政治屋になられるのが嫌な奴の仕業かしら?」
「それ………セコくねぇか?」
唐沢がボヤくと康太は爆笑した
そして真顔になると唐沢を射抜き
「緑道が怒り狂ってるから………下手したら死者がゴロゴロ出るかもな………
アイツ等は怒らせちゃあならねぇ奴を怒らせちまった!」と告げた
「緑道氏が何かなさるのですか?」
唐沢は問い掛けた
「裏の部隊を動かせば………緑道が動かずとも当主の意のまま動く兵隊がいるんだよ!」
「其れは俺はノータッチで構わねぇか?」
止めるのも無理なら、予測するのも無理なのだ
烈は「ええ、唐ちゃんは静観決めてて大丈夫よ!
例え緑道だとて、唐ちゃんには手は出させはしないから!
まぁ手を出したならば………それなりの覚悟は必要となるわね!」と呟く
康太も「だな、唐沢に手を出すならオレも許しておかねぇから大丈夫だ!烈!!」と謂う
「其れより母しゃん………何故阿賀屋が狙われるのかしら?」
「其れな………視えて来ねぇんだよ、何かまた気持悪い感じだな………」
「兵藤きゅん まだ狙われていたのね
今は昭ちゃん達は大丈夫なのかしら?」
「匣でも置くか?
でも倭の国で作れる家、いねぇだろ?」
「母しゃん 忘れてない?
道教の真相の傀儡いるじゃない!
その傀儡なら部屋で蠱毒だって作りかねないわよ!」
「あぁ………最強なのいたな……んとに面倒クセェな!」
「本当にね、でも兵藤きゅんには式神授けてあるから何かあれば解るのよ!」
唐沢は「その貴史はイギリスか?」と問い掛けた
「兵藤きゅんとりゅーまは裏取りに動いてるのよ
何の裏取りかは?解らないが、面倒だから聞くのは辞めた
唐沢は「取り敢えず振り出しに戻った……と謂う事だけ伝えとく!」と謂うと慌ただしく帰って行った
康太は「取り敢えずお前はケントを連れて歩け!」と言った
「解ってるわ、でも家出にケント連れてたら家出にならないじゃない!
でも夜の海で叫べたからスッキリしたから大丈夫よ!」
「阿賀屋は大丈夫なのか?」
「あの家は元は忍びの家系だからね
本当の隠密がいたりするのよ
江戸城 徳川家御用達の御庭番今もいたりするのよ、だから気配とか隠して御館様を護衛したりしてるわ!でも心配だから【目】を配置したわ
何かあればお師匠直伝の【目】をルーとスーが感知して動いてくれるわ!」
「なら大丈夫か………んとに気の抜けねぇ日々になりつつあるな………」
「仕方ないわよ、まだ海坊主にすら辿り着けてないんだから!」
「だな、其れを言えば神取にすら辿り着けてねぇんだよな………」
「…………そうよ、その人ボクは知らないからな………」
「写真一枚残さず痕跡消しやがったかんな……
でもよぉ………蓮も消息不明にしやがって!
妻と子まで跡形もなく痕跡消しやがっていた……
間違いなく飛鳥井へ仕掛けた株価操作は………蓮なんだよな………
何故……蓮までって想いもあるんだよ!」
康太は烈に言われて、蓮に会いに行った
が、その時には既に………家はもぬけの殻で誰も住んではいなかった
やられた!と、想った時には遅かった………
「でも何故蓮が?妻子も無関係じゃねぇか!」
「其れはボクにも解らないけど、海坊主に縁のある者は総て消えたわ!
で、ボクね海坊主に一番縁のある…………北斗をイギリスに逝かせる事にしたのよ!
まずは一ヶ月、そして慣れたら北斗だけ留学させようと考えているのよ………」
「今の魔界に海坊主は入り込めねぇんだよな?」
「そうね、テスカトリポカ本体だとて無傷では入り込めはしないわ!」
「なら雪は無事なんだな………」
「井筒屋のおばちゃんや食堂のおばちゃん達に可愛がられて日々過ごしているわよ!」
「なら良い!北斗か………北斗の日常は絶対に守らねぇとな!
そうか………力哉を退職させた辺りから何かあるとは想っていたんだよ!」
「リキちゃんはね、今の秘書課は辛いのよ
リキちゃん程に頭の良い者はそんなにいないわよ
仕事も難なく卒なく仕上げられるわよ
でもリキちゃんは母しゃんが引き抜いた秘書だから、寄り添い仕事がしたかった………ってのが強いのよ………」
「それはオレも気付いていた
だが会社の明日のレールを敷くのは宗右衛門だかんな、オレは何も謂う気もねぇよ!」
「リキちゃんの中では色々と悩む事が多かったのよ
だから日々苦悩の顔をして仕事をしていた!
で、占ったら彼は変革期の真っ只中だったわ
母しゃんも………其の眼で視えたんじゃない?」
「視えてたけど、オレがどうこう言える領域じゃねぇから、おめぇが何とかするかと想って動く気は皆無だった!」
「やっぱりね………なら其の眼で視えてる?」
「……………其れを決めるのはオレじゃねぇよ!
だからオレは何も言わねぇよ!
おめぇも何も謂うんじゃねぇぞ!……って言う気は皆無か………」
「そうね、でも………母しゃんの大切な仲間だから、出来る事ならば何でもしてあげたいわ!」
「烈…………」
「それにね、飛鳥井が馬主でいられるか?手放すか?の分かれ道だからね、イギリスで吸収して立派な馬育てて欲しいわね!」
「ショウオーカイザーも順調なんだろ?」
「翔にーの馬も頑張ってくれてるから、次はリュセイオーを立派に育てて欲しいものだわ
そして六兄弟幸せな老後をふれあい牧場で過ごして欲しいものだわ!
それにはやはり馬術の本場の飼育方法を知る事こら始めないとね!
倭の国の馬主の殆どが海外の飼育員を雇い始めたわ、この先は如何に優れた飼育員に育てられたか?で変わってくる世界となるわ!
出遅れたならば、飛鳥井は馬主を辞めねばならないわよ!」
「変革期だかんな………パドック見れば明らかに海外の調教師や飼育員抱えてるかんな!
古臭い飼育方法じゃ先なんかねぇのは理解してるさ!」
「エミリア王女が貸し出してくれてる皇室御用達の馬術師も帰国も近いからね
その馬術師と共にイギリスに行き本場を知る良い機会となるわ!
そして馬術師が何人か倭の国へ行くスタッフを見繕ってくれると言うから、初日はボクもイギリスに同行するわ!」
「帰ったら……会社のテコ入れか?」
「そうなのよ、母しゃんの誕生日前から不穏な動きしやがって!
本当ならは、もっと早くやりたかったのに、ドゥバイの件を片付けないと流れ弾あるかもだったから遅れてるのよね!」
「頭痛いな………何度も何度も正しても……腐ったのはいなくならねぇかんな……」
「それは魔界も人の世も同じよ!
其れでも正して行かないと果てには逝けない
面倒でもちまちま頑張るしかないのよね……」
「…………んとに面倒くせぇよな……
でもお前が動くならばオレも動くとする!
其れより最近飛鳥井の家に竜馬と貴史いねぇけど、なにやってますの?」
「あ~、それも込みで、その内解るわよ!」
もう既に動き出していると言う事か…………と康太は理解する
「でもさ、母しゃん……世界会議でめちゃくそ忙しかったから、今は静かに過ごしたいわ
少しでも穏やかな日々を過ごしたいわ……」
「でもその前に桜見ねぇと散るぞ!」
「なら今は散りゆく桜を惜しむ時間を作りたいわ」
「だな、それで良い!」
悩みは尽きない
問題も尽きない
皆が幸せに………なんてのは綺麗事でしかない
でも、それでも願う
どうか、家族が笑って過ごせます様に……と。
静かな日々はまだまだ無理だ
ドゥバイにもまだ関わらねばならない
柚の修行も始まったばかりだ
会社の件
そして鷹司緑道が巻き起こす嵐に………巻き込まれそうな勢いではあるが…………
後少しで終わる春休みを利用して花見へ逝かねは!
後日談
烈は約束通り 兵藤一家と花見の約束を果たした
場所は白馬
元 土御門孔明の歹が埋まった桜の在った場所へとやって来たのだ
二階堂悠一と三鶴兄弟が管理する神社は今日も参拝客が沢山いた
イケメン宮司とニュースで取り上げられ話題となったのもある
烈はこの地で撮影が出来ないか?
竜馬と尋ねて兄弟と始めて対面した
【R&R】の事を知ってくれていたが、まさか烈が康太の子だとは知らなかった兄弟は驚いていた
それでも快く了承してくれ、撮影が出来た
そのついでに兵藤家族と飛鳥井の家族の花見も狙ってみたのだった
桜並木は壮絶な程に美しく………
その日 撮影の為に参拝客は入れずに誰もいない桜の風景は独り占め状態だった
大きなシートの上に料理を並べ花見をする
二階堂悠一と三鶴兄弟もその中に入り酒を飲んでいた
何時もの顔触れも其処にいた
撮影は昼の美しい風景に夜の魂まで持って行かれそうに壮絶な美しさの夜桜まで撮影する
そして撮影が終わると生配信した
二階堂悠一と三鶴兄弟がゲストとして参加してくれた
美しい夜桜の前での生配信に、ファンの皆は大喜びだった
「今日は白馬櫻堂神社の神主さんが特別ゲストです!宜しくお願いします!」
と軽快に始まり熱く語る兄弟のトークにスッカリ場を奪われ終わった
きっと人気のスポットになる事 間違いなしだった
「今日のスパチャはこの神社に賽銭として渡します!」
と烈が言うと賽銭ならば、と小銭が投げられた
竜馬は「後で賽銭は集計して、必ずや皆の想いを込めて賽銭箱へ入れさせて貰います!」と約束した
ヘンリーが「その様子も生配信するよ!」と言う
メンバーは頷いていた
そして烈は「この桜の映像は此処の桜が葉桜になる頃 此処でやると沢山人が詰めかけると迷惑になるから球場でイベントやる事にするね!
一晩限りのイベント、春の思い出に遺したいからね!」と言う
竜馬も「この美しさは丸々は再現出来ないけど、皆の中に春の思い出と共に刻めたら良いと想ってるよ!
この近くにアマリーグの球場あるから一晩だけなら、と言う事で借りれる様に皆が協力してくれたんだよ!一番の功労者は悠一 三鶴兄弟の助力があればこそです!
本当にありがとう御座います!」と伝えると、メンバーも烈も深々と頭を下げた
オリヴァーが「こんな美しい時間をありがとう!」と兄弟の手を握り礼を伝える
兄弟は始終笑顔でリラックスしていた
この日の投げ銭は、賽銭と言う名目があったからか?
かなりの投げ銭が投げられた
後日 烈と竜馬はスタッフと集計し、その金額を賽銭箱へ………とはいかず、兄弟に手渡しする映像を流した
烈は「想ったより金額が大き過ぎて、賽銭箱へは入れられなかったけど、皆の幸せを祈祷して貰うからね!」と言い
悠一 三鶴兄弟は賽銭を持った烈と竜馬を祈祷した
その様子を兵藤が撮影し配信した
悠一 三鶴兄弟は皆にありがとう!と伝え
「皆様にご多幸が有ります様に!」と大麻を左右に振って祝詞を上げた
「其れでは、賽銭の報告を此処にしました!」
烈が謂うと竜馬が「ではまた!」と手を振り終わりを告げた
撮影が終わると悠一 三鶴兄弟は
「「こんな大金、受け取れないよぉ〜!」」と嘆いた
烈は「仕方ないじゃない、投げ銭総て賽銭として扱うと言ったら投げたんだもの、全部納めないと罰当たりじゃない!」と言う
竜馬も「そうだよ!賽銭なんだから!」と言う
兵藤は「小銭を賽銭としてと投げた、でもかなりの量になると小銭は札と変換され束になる
って訳だ、賽銭だから受け取るしかねぇよ!
【R&R】は言った事は必ずや、やる!
それに置いて不正は絶対に許さない!
キッチリ集計し、その金額を賽銭として払ってるんだよ!」と謂れやっと兄弟は受け取る事にした
烈は「茶屋を甘味処にすると、それ目的に来るかもね!春は桜、夏は涼みに、秋は紅葉、冬は雪景色、春夏秋冬楽しめる様に大きな硝子を入れて座席も入れてカフェっぽくすれば良いわ!
中へ入れない客の為に外にベンチを増やすのも手よ!」とアドバイスをする
その為の賽銭なのだ!
竜馬は「XとかインスタとかYouTubeを利用して、イベントも増やしたらどうっすか?
愛される土地に根強くなる為に、そう言うツールを使うのも手です!」と言う
兄弟は前向きに検討を始めた
母しゃん………母しゃんのお師匠の愛した土地を、幾年月重ねようとも愛して受け継がれる土地にしたいわね
皆が来て良かったと思える土地にしたいわね!
烈は母を想い………蒼い空を見上げる
忌嫌われた土地が生まれ変わり、皆に愛される土地になる
それはきっと皆の心に何時までも美しい桜の風景が刻まれ受け継がれる明日へとなっていく未来と続くから……
散り行く桜の花弁がヒラヒラと風に流される
見事な程に天晴な程にヒラヒラと散り行く
烈は風に飛ばされた花弁を手にすると
「来年も再来年も…………ずっとずっと………綺麗に咲き見事に散り行く花ね………」と呟いた
兵藤は「だからこそ美しいんだよ、この花は!」と言う
烈は嬉しそうに笑った
「さぁ賽銭も渡したし帰ろうかしら?」
「だな、帰りに何か食って帰ろうぜ!」
「それ良いっすね!」
三人は宮司に深々と頭を下げると、清々しく背を向け歩き出した
悠一は「やはり彼は康太の子であるな……」と呟くと
三鶴も「だね、こんなに忙しくしてくれるんだからね!」とボヤく
散り行く桜の中で二人は笑っていた
春の嵐が来る前触れの様な穏やかな日の出来事だった
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