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第70話 Mary Christmas
12月24日 Xmasイブ
飛鳥井は烈が禍の対策の為に開かれるXmasイベントの為に留守にしていてたから、その日は身内だけで静かに過ごすと決めていた
康太と榊原もその日は不在だった
何時から不在だったかは分からないが、一生は知っていて家族に
「康太と伊織は留守だ!
烈に頼まれて、ある場所を見届けに行ってるんだよ!」と伝えていた
ならば、留守の弟の為に、両親の為にXmasの準備をしようと決めた
イベントは盛況で盛り上がっていた
歌謡曲のイベント会場と繋ぎ、真矢と清四郎との愛の讃歌に、曲を知らない世代までもが惹き込まれていた
が、8時過ぎた頃から圧が物凄いモノに変わった
体力を貰ってなきゃ、絶対にぶっ倒れてても可笑しくないレベルだった
何とか踏ん張り乗り切る
始めたのは自分なのだから、みっともなく倒れて運ばれるなんて在ってはならないのだ
国中が禍に包まれた
暴動が起きたり、発作的に死を選んだりする子達が増えなきゃ良い…………
きっと死ぬ思いで術者は割り振られた区間を守っているに違いない
そんな思いが………烈を奮い立たせた
そんな不安と闘っていた時、鳳凰が現れた
その焔は現鳳凰とは比べ物にならない程に紅く
そして体も大きかった
性格も少しネジ曲がってらっしゃる
烈は鳳凰の姿を目にして唖然と
「鳳凰自ら禍消しに来るか?」と呟いた程だった
本当に捻くれてらっしゃる
まぁあれ程の膨大な禍ならば、術者が頑張っていたとしても、その命を落としていた可能性もある程の力だ
わざわざ消して行ってくれて助かってはいるが………
自分で消せるなら早く言って欲しかった………
なんて思った烈だった
唐沢と堂嶋には忌日者として【遺す】が死命を与えられ、一部始終を見届ける義務を授かった
特別に1日だけ目 耳 五感を貸して戴き、それに挑んだ
で、わざわざ禍を消しに来た鳳凰を目にした
堂嶋は「これってアリなのか?」と問い掛けた
唐沢は苦笑して「捻くれてらっしゃるとは聞いたけど、自ら来るとはな………」とボヤいた
取り敢えず【忌日】は遺した
今回は鳳凰と親しくしていた者との絆により禍は鳳凰自ら消し去った
が、次はそうなるとは限らない以上は次代の鳳凰誕生は相当な準備と知識が要るであろう
と締め括った
禍は鳳凰自ら消し去り、人の世は術者の努力の甲斐あり、対した混乱もなく幕を閉じた
が、ピーク時の圧により術者は鼻血を流し、耳から血を流した者もいて、即座に病院送りになったのは言うまでもない
鷹司緑道は「我等は今後、この地球の終焉を齎す事になやも知れぬモノと戦わねばならぬ!
こんな所で躓いてなどおれぬのじゃ!
我等は更なる高みへと逝かねばならぬ!
日々精進して功徳を高め法力を鍛え上げて逝かねばならぬ!」と、今後を語った
そして今回 浮き彫りになった問題
新年札を貼るイベントを通じて、如何に世間が繋がりを持たなく生活している者の多さに驚いた
孤独な生活をして誰も助けを求められなかった人や、敏感な人の何人かは……部屋に貼る新年札も貼ってなくて衝動的に飛び降りたり、手首や首を切り自殺したと伝わって来た
史上最悪の魔のXmasと呼ばれた程のニュースになった
皆を守る
そんなつもりで禍から皆を守るつもりだったのに………
烈は少なからずショックを受けていた
が、康太は敢えてそんな我が子に
「それが現実なんだよ!万人を救おうとしても、救われる気のねぇ奴までは手がまわらねぇんだよ
こっちが必死に救おうとしても、救われる気のねぇ奴までは助けられねぇ!
お前が気にする必要なんてねぇ!」と告げた
「そうよね………其れでも時間も準備も足らなかった事と、世間と繋がってない人がこんなに沢山いたんだなって………理解してる様でしてなかったボクのミスでもあると受け止めてるわ!」
まぁ時間は足らなかった
生まれるのは1年前から解っていたのに手を打ったのは、生まれる数カ月前………
卵にヒビが入り、垂れ流しの圧が時空を歪めて行くまで対処さえされなかった
その前に鳳凰の誕生は告げたのだが………忌日さえ遺ってないから対処の仕方さえ分からず動かなかった、ってのか現実だった
その禍もほんの一部の人間に影響を及ぼしただけで幕を閉じられたのだ
康太と榊原は禍を見届け、魔界の住民を家に帰しゲートを閉めた
その後に慰霊塔の下へ天照大御神と建御雷神と共に向かい、赤子を見届けた
康太は女神となるべく赤子を視て
「鳳凰と時を同じくして誕生した女神こそが、今後の魔界を導く存在となる…………か!」と呟いた
閻魔は「我が子は元気に育ってくれれば、其れだけで良いです!」と親バカ発言をする
豊乃姫も笑って我が子を抱き締めていた
康太と榊原が護衛する中、豊乃姫と赤子は閻魔の邸宅へと居を移した
それを見届け、康太と榊原は魔界を後にした
家に帰る前に桜の里に顔を出した
桜の里は前に来た時より…………倍に大きくなり活気付いていた
烈の鬼のクロウが康太を見掛けると
「孔明さんですか?
あの方は屋敷の方にいます!」と伝えた
康太は「お前、桜の里の子だったのか?」と問い掛けた
クロウは「はい!俺は魔界の鬼と、この里にいた母との間の子です!」と答えた
「此処に住んでるのか?」
「いいえ、俺は鬼達の宿舎があり、其処に兄弟で住んでます!
両親は家族向けの部屋を貰って其処に、ちっちゃい子と住んでます
ですが、我が家はこの里が故郷なので、数日おきには顔を出して手伝う事はないか?来てます!」
と言い孔明の屋敷に康太と榊原を連れて行く
玄関から入り廊下を歩くと
「痛え!」と何やらに打つかった
クロウは「廊下に立つな!と烈が言ってたでしょ!」とぬりかべを避けさせた
康太は「あんでぬりかべいるのよ?」とボヤいた
クロウはそれには答えずに襖を開けた
孔明は掘り炬燵なのか?に足を突っ込んで猫又を抱っこして笑っていた
「あ、康太、伊織もどうしたのです?」
「禍の影響、受けてねぇか見に来たんだよ!」
孔明は笑顔で「受けてませんよ!敏感な子は少し怯えたりしましたが、其処まではないです
烈が色々と対策して行ってくれたからね!」と答えた
「烈、来たりしてるのか?」
「はい!この猫は烈がくれました!
ぬりかべ君と一端匁、小豆洗いと牛に似た子は烈がくれたのです!
まだまだ沢山いたのですが、隠世の方に知り合いがいたとかで移りました
後 魔界の方が暮らしに合ってると魔界へ行った子達もいます!
この子達は里に残ってくれたのです!」
康太は掘り炬燵に足を突っ込み座ると
「ぬくてぇやんか!」と驚いていた
榊原も康太の隣に座り足を突っ込むと、その温かさに驚いていた
「あんでこんなにぬくいのよ?」と思わず問い掛けた
「妖怪達が住まわせてくれてる恩を返してくれてるんですよ!
上質な石炭と上質な枯れ木を差し入れしてくれるので、それを使い暖を取っています!
家には薪ストーブも入れてあります!
そして何よりも驚くのは、この石炭の灰で食器を洗える事です!
物凄く綺麗に落ちるんですよ!
後 石灰として畑に撒いたり、工夫次第で豊かな土地になるのよ!と烈は教えてくれているのです
なので土地を広げ家を増やし、田畑も広げました
この里も広くなり、最初にこの地に来た時の子も結婚して家族を増やしました
そして皆でこの里を育てて行ってくれてるんです!」
康太は我が子を思い
「何もねぇ世界から何かを生み出すのは烈の得意とする所だからな!」と口にした
孔明は嬉しそうに笑っていた
そんな師匠と逢って人の世に戻って来ると、相当時間を遡って飛んでくれたのか?
時間は25日の朝だった
「青龍、頑張ってくれたんだな!」
「家族で迎えるXmasパーティーが終わってました………なんて許せないですからね!」
「青龍………」
「炎帝………」
抱き合う二人に
「あ〜そう言うの後でやって貰えるか?」
と冷たい声が飛んで来た
振り返ると一生と聡一郎が立っていた
「ほらほら、料理に行け!」と一生が発破をかける
「康太は飾りつけですから!」と聡一郎が早く客間に行け!と無言で圧をかける
康太は客間に行くと、翔達が客間を彩って飾り付けをしていた
レイも凛も椋もお手伝いしていた
北斗が帰国していた
久し振りの飛鳥井の家での生活に、笑顔で過ごしていた
あれから烈から何故北斗をイギリスへ行かせたかの………理由を聞かされた
海坊主の件も確かにあったが、海坊主が北斗に手を出す事はない
不思議に思っていた
北斗はレイプされそうになった恐怖で言葉を話せなくなった
それ程の精神的な衝撃でケアしていて、イギリスへ行くまでは入院していた事も話した
そして北斗を私欲で汚そうとした奴は、キッチリとカタを取り、二度と表通りを歩けはしないだろう!と告げた
康太は「何唱えたのよ?」と問い掛けた
「命の灯の章、限界を!」
「そんなの唱える奴いるんだな………」
と逆に感心した
「対価は取られるわよ!絶対にね!」
烈は言うだけ言ってその場を離れた
烈がその場を離れると榊原は
「それはどんな呪文なんですか?」と問い掛けた
「生きれば生きるだけ、命の灯は削れて行くって呪文なんだよ!
命の灯は年齢や寿命に合わせて緩やかに燃えて行くんだよ!
が、命の灯の章、限界ってのはな、生きれば生きる程にその命の灯が削れて逝くんだよ
寿命80歳あるとする、その呪文を唱えられたら2年もあれば尽きるんじゃねぇか?
あ!だから2年の留学か、納得だわ!
帰国した北斗がクソ野郎目にする事は永遠にねぇって事だ!」
榊原は我が子の陰湿で根深い闇を感じていた
「そんな呪文があるなんて誰も知りませんよね?」
「魔界図書館にそんなちまちました呪文の本在ったんだよ………
それらは聖神が人の世に堕ちる前に全て消し去り処分した
今 彼奴は魔界図書館の本を増やしている最中だと閻魔から聞いた
総て燃やして灰にした本の復活、そして児童図書を基盤とした本を神々に依頼して増やしている
阿弥陀なんか絵を描いて、妻が文を書いてっての聞いたばかりだ!
多分だが、そんなちっちぇー呪文なんかは図書館の本だったんだろうな………
そして烈は北斗の男の尊厳傷付け様とした輩を許せなかった…………
彼奴は男も女も好き放題、金を払えば性欲の処理は出来る!って愛抜きの処理してたやんか!
だから力ずくてってのが許せなかったんだろうな
無理矢理、愛もへったくれもない行為なんて、ただの暴力よ!と言っちゃえる奴だからな
まぁ何にせよ!自業自得だ!仕方ねぇ!」
ニヤッと嗤う顔は同じだった
似た者親子だった
血が繋がらないのに本当に良く似ていた
烈の兄弟達は、Xmasパーティーの準備に余念がなかった
今年はケーキを家族用と、菩提寺用と作った
菩提寺用はショートケーキにして人数分作った
ケーキの材料費は慎一が生活費のやり繰りした分で賄って出してくれていた
が、菩提寺用の分までは全然足らなくて、阿賀屋が出してくれたのだ
「聖夜を楽しむのはどの子も等しく平等に幸多かれと祈って出そう!」
とカンパしてくれたのだった
年末年始は流石とお館様は忙しいらしくて、烈の仲間は不在の日の方が多かった
烈、竜馬、【R&R】のメンバーは無論不在
が、冬至の日とかにはちゃんと帰ってくれていた
慎一と一生は飛鳥井の家の事もやってはいるが、桜町商店街の新春初売り出しセールの準備に行ったり、牧場の仕事をしたりと忙しそうだった
冬休みに入り北斗が帰国して来た
北斗は家が変わっていて驚いていたが、ちゃんと自分の部屋があり安心していた
北斗は飛鳥井に帰って来た日から、響と奏、一希に本を読んてあげ寝させていた
嫌な想いや恐怖は中々抜けない…………
今も悪夢で飛び起きる時がある……
でも環境を変えてくれ、全く違う国で生活を始められて………落ち着きは取り戻している………
でもこうして飛鳥井の家に帰り暮らしていると、帰りたいと思ってしまうのだ…………
夕刻に近付くと神野達も飛鳥井の家にやって来た
珍しくこの日は神威は来なかった………
何時もの顔ぶれでXmasの夜を楽しむ
ご馳走を食べ楽しげな会話に花を咲かせて、皆楽しそうだった
美緒もやって来て玲香は嬉しそう
真矢と清四郎も来ていて、女性陣は着物のリメイクの話で花を咲かせていた
竜馬は「ねぇ烈、俺正月は家に帰らなきゃ駄目なの?」と問い掛けた
「そうよ、三が日は帰っちゃ駄目よ!
敦美にもそう言い聞かせてあるから!
4日の夜にでも帰って来たら良いわよ!」
「敦美………喜怒哀楽出来たのは良いけど、容赦のねぇ性格は治らねぇかな?」
「変わらなくていいのよ!
其れ等総てが敦美なんだから!
可愛くて素直な敦っちゃんじゃない!
ユキよりマシだとボクは思うわよ!」
「その台詞言えちゃうのは烈位だよ!
しかし今も敦之はユキ呼びか、なら貴教はノリ呼びなんだね!」
「そうよ、ミとトよりマシじゃない!」
「そう言えはい弟の敦之、年始4日は着物着て鷹司で年始の行事だって言ってたな
年始の行事って何やるのさ?」
「数時間正座して鷹司の神への感謝を込めて祈祷、祈祷、ひたすら祈祷、そして年始の行事の始まり!来客が兎に角多いのよ、あの家は!
書生は獅童と共に並んで来客の送り迎えよ!
物凄く綺麗な所作をしないと駄目なのよ!
5日の夜にでも連れて行って上げようか?」
「嫌……良いです………」
「鷹司は正月の三が日は自分の持ってる山で新年の修練の儀をやるからね
毎年恒例 山籠もりで山伏並みの修練が始まるのよ!そして山を降りたら新年の訪問の儀
来客がわんさか新年のご挨拶に来るのよ!」
「何か………凄い家って面倒臭いんだね……」
「まぁ家って面倒臭いモノじゃない
仕来りや風習ある家だと尚更ね!
飛鳥井だって一族詣であるじゃない!
古い家ってそんなモノよ!」
「俺は家を早くに出てるから解らないけど、三木の家だって昔は………面倒臭い感じだったんだって言ってたな………」
「あぁ、三木の家は多分だけど母ぁーさんがぶっ潰しているからね!」
「え?…………」
「濁って腐った家に成り果てたから仕方ないわよ
まぁ三木敦夫の名前にへばり付いたヘドロみたいモノだったのよ!
ボクは生まれてもいないから知らないけどね!」
烈と竜馬と話していると阿賀屋が
「おい!そこ!酒が不味くなる話は止めてくれ!」と怒った
「そうね、今日はサンタさんがプレゼント持ってきてくれる日よ!」
阿賀屋は「お前にプレゼントは持って来ねぇってサンタは言ってたぜ!」と呆れて言う
「何でよ!ボクは死命を果たしたよゐこじゃない!」
「そもそもお前、欲しいのあるのかよ?」
「あるわよ!失礼ね!」
「因みに何か欲しいのよ?」
「九条葱の苗!年末年始で食べ尽くしちゃうからね!また新しい苗を買って育てないとなのよ
あ~その前に薬味用の葱かしら?
春になれば青紫蘇でしょ?楽しい事は沢山あるわよ、欲しいのも沢山あるのよ!」
「野菜好きだよな?
デカベツだっけ?食いに行かねぇとならねぇんだよ!お前何処でも野菜作ってるよな?」
「そう?最近は菩提寺の家族向け住宅の花壇の花を半分にして野菜育ててるわよ!
子供が増えた分、自給自足でやらないとね!」
「ならよゐこなお前にサンタが苗でもくれるさ!」
そう言い阿賀屋は楽しげに鷹司と紫園と共にグラスをカチンッと鳴らし「「「友の為に!!!」」」と乾杯して酒を飲んだ
大義名分は必要らしい悪友は何時だって友の為に飲むのだった
そんな烈を気遣って兄達が世話を焼く
楽しい何時もの飛鳥井の日常の風景だった
愛する人の為に
家族の為に
愛しい時間を刻んで下さい
MerryXmas
らんらんらん
らんらんらん
らららんらら
今日は楽しいXmas
皆様の元にも優しい時間が訪れます様に!
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