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「お前等からしたら非日常だが、俺からしたら日常じゃん?」

   学校が終わり、放課後。  平三と木下の三人でどこかに行くわけでもなく、素直に寮へ戻って別れては自分の部屋に向かった。  そしたらすでに学校から戻っていた王司は私服でソファーに座ってはテレビをみていたんだ。よくある再放送ドラマな。 『おかえり、智志君』なんて言葉に返事をしながら俺も冬服に変わった制服を脱いで私服に着替えた。 「……」  なんか、気付いたら、俺は王司のチンコを踏んでいたわけで。  さすがに驚いた。俺自身に、驚いた。 「んっ、んっ……」  リビングに戻ろうとして振り返ったら王司がいた、ってのは覚えてるんだけどな。 「雅也、」  足で踏んでるとはいえ、俺が自主的にそうしているわけではない。  王司が俺の足に絡みついてきて、少し体重をかけて痛さを倍増させているソロプレイに等しいもの。  俺だってやりたくてやってるわけじゃねぇよ……!  チンコを踏まれているのを見ることだって苦なんだから。  でもこいつはそれが良いみたいで、むしろ痛さもなきゃ無理な体らしい。 「はやく終わらせろ」 「はっ、ぅん、ぐっ……」  グッ、と踏み潰す勢いで力を入れれば、気持ち良さからなのか俺の股間に顔を埋めてくる王司。  マジかよ、そろそろ俺のバランスも限界が近付いてきてるんだが……。でもここで倒れたってしかたがない。  そっと王司の肩に手をついて安定したバランスを取ってみるが、立ったままの前屈み。  とっととイクか、勝手に満足するかで終わらせたい俺の気持ちを誰かわかってくれ。  片足はもう王司のモノを踏んでるせいで自由ではないものの、もう片方の足はなんとか動かせる。  手で押さえられているが、なんとか。 「んぅ……智志くん、はあ、きもちいーっ……」  なんとか、動かせるが……そのタイミングがわかんねぇ……。  そんなのも気にせず王司は上がった息を吐き出しながら顔を俺の方に向けてきた。  興奮で頬が赤く染まっていて、緩みっぱなしの口端からはよだれが垂れている。  俺の股間に埋めたところを見れば少しだけジーンズにシミが出来ているから、たぶんこいつの涎なんだろうな。  目も涙が溜まっていて、溢れそうなほど。  どんなに蕩けててぐちゃぐちゃな顔でもムカつく事に、ブサイクだと思えないのがまたイラつかせるよなぁ……。 「智志くん……さとしくんも気持ち良くなろうよ、ね?」 「うわ、お前っ、待て……!」  着ていたシャツを捲られて隠れていたベルトに手を伸ばしてきた王司。  このまま流れたら絶対にこいつの思い通りで、最後までヤることになる。  流される俺……どうだ、考えろ。  考えて、考えた末、それは……ねーな。――と思うようにしなければならない。  だって、今朝もヤってるし。  珍しく目覚ましなしで起きれた朝に体を起こそうとしたら普通に俺のベッドで、隣で寝ている王司がいた。  こんな遭遇は何度も体験しているからさほど驚きはしなかったが、ついでだし起こして飯の準備を手伝わせようと思って名前を呼びながら体を揺らしたんだ。  優しいだろ、どう考えても優しい俺。  なのに王司は目を覚ましながらも手を掴んできて、さっきまで俺が使っていた枕に顔を埋めて舐められた指に、優しかった俺はいなくなり、鈍い音を響かせながらベッドから出た。  それと一言――この部屋でオナったら喋らないぞ――と口にして洗面所行き。  殴ったり蹴ったり、簡単な暴言吐いたりしたらそれこそ負けだ。  王司の思い通りになるのはわかっている。  だから一番手っ取り早い“無視する”という行動は楽で効き目のあるものだから良い。  こんな俺でも勝てて、王司の思い通りにならない言葉だから気に入ってるよ。  ただし、使い過ぎると面倒になるのは学んでいるからな。  朝飯の準備まで出来たところであとの俺は制服を着替えればいつでも出れる状態なのに、あいつはまだ俺の部屋から出てくるような気配を感じなかった。  まさか無視されてもいいぐらい溜まってて自慰行為してるわけじゃないよな……?  なんていらぬ心配に少し焦り、俺は自室のドアを開ける。 「……雅也、起きてるならさっさと来いよ。なに人の枕抱いてんだよ」  目に見えた光景は、 「……んー、」 「……」  俺の枕を抱いたまま寝転んで、口付けてるところだった。 「はぁ……」  相変わらずの行動につい頭を抱えたくなる。  まぁそのせいで溜め息は吐いてしまったが、こいつにどうこう言っても時間の無駄だ。 「さとしくん」  寝起きで掠れた低い声に、俺も俺で惹かれてる部分もあるせいか、しょうがなく王司に近付いてベッドの端に腰かけた。  時間はある。  寮から学校は徒歩5分ほどでつくから、眠ければまだ寝てればいい。――自分の部屋でな。  けど、戻らないのが王司だ。  朝からなにを求めているのかわかっちゃうあたり、俺もかなり成長したと思う。 「どうせ今日も飯いっぱい食うだろ?」  抱きかかえている枕を退けながら、白くて男のくせに綺麗な頬をつねる。  抓るといっても擬音があれば“ぷにっ”とした程度であり、そこまで強くしていないから王司からしたら痛さもなにもない、ただ撫でられてるようなもんだろうよ。 「……まぁ、お腹空いてるからね」 「パンと米、どっちがいい?特別に選ばせてやるよ」 「智志くんはどっちがいい?」  枕は退かせたが次は俺の腕をまた掴んで離さない王司に溜め息を、我慢しとく。  一瞬なら好きにさせとこうじゃねぇか。  それでちゃんと起きるならそれで良いし、まだ寝たいなら自室に戻すから。  手のひらを指でなぞるようにくすぐられながら甲に唇を付けてきた王司。  つねっていた方ではないから何気に顔との距離は近いんだよな。 「選ばせてやってるんだから、お前が選べよ」 「ん……でも俺、智志くんが食べたい方を食べたいなァ……」  まるで俺の手と会話しているかのように、俺と目を合わさず、そのまま指を咥えはじめた。  この時点ですでに呆れていた俺だが、寝起きの俺と今の俺はまた沸点が違い過ぎる。  そのため王司が今やっている事は許す範疇内として見送っているんだ。  頬を抓っていた手は離し、体を完全に王司へ向けてベッドに座り直す。  咥えられてる人差し指と中指と、さらに親指を口のナカに入れては舌を掴むように触れた。  こんなのやられたら嗚咽しそうなのに王司 雅也はこれが気持ち良いんだとか。  なるべく喜ばせるようなことはしたくないと考えてる俺だがノリに乗ってしまう性格がうまれつつあるらしい……それもどうなんだ、って話だけど。 「じゃあもうパンにするか」  消えていそうで消えていなかった話題に投げかければ小さく頷きしゃぶり続ける王司。  本当に飽きないな。  ここまででどのぐらい経ったか……時計のかわりに使っているスマホはリビングにある。  時間は確認出来ないこの空間にいつまでもいるわけにはいかない、と時間はたっぷりあるにもかかわらず謎のじれったさを感じ、俺は甘やかすのをやめようと手を引き抜きかけた。――が、 「ん、ふっ……さとしくん、智志くんのココ、舐めたい……イイ?」 「……いっ、いいわけないだろ……」  朝から発情している野郎はなかなかやめさせてくれないらしい。  しゃぶっていた指こそは抜いてくれたが、上体を起こして近付いて来た王司は俺が穿いていた寝間着の短パンのゴムに手を入れてきた。  思わず立ち上がって逃げようと考えたが、時すでに遅しとはここで使う言葉なんだろうなと実感した。 「おい……っ」  腰に回ってきた腕のせいで立つに立てねぇ……。  俺からしたら、朝からの危機。  王司からしたら、朝からの喜々な出来事になるだろうよ。  転んでもいいからこれは回避した方がいいんじゃないか?  とも考えてみるが、もうその時には下着から俺のチンコを出して握ってる王司。 「ばかやろう!俺の返事を聞けよ!」 「だって、なんか、」 「だってもなんかもなにもかもねぇよ!」  拳をつくって容赦なく頭を殴ってみるが、目をギュッとつぶっただけで効果なんぞなにもきいてない。  気にせず反応もしていない俺のモノをぺろっと感覚で舐めた王司は悲しそうな声で、 「さとしくんのミルク、飲みたい……」  と言った。……こいつの脳ミソって実はスカスカだったりして。 「なに、えーぶい、みたいな事いってんだよ……」 「さっ、智志君AVみたことあるの!?」  AVなんて単語で勢いよく顔を近付けさせてくる王司に顔を背ける俺。  もっと違うところで反応しろよ……! 「ねーよ!離れろ、ぼけ」 「……ん、でも飲みたい」  そう言ってまた俺のモノを舐める王司はなにも聞かずに咥えこんできた。  あとは力任せに王司にイカされて、脱力してるところで押し倒されて、ヤられた流れだ。  変わらない流れにそろそろ諦めた方がいいんじゃないかな、と考えてるからな。  どんなに抵抗したってこいつのゴリ押しは恐ろしい。  顔を退けても、耳を引っ張っても、木下から教わった護身術をかましても、王司 雅也は来るときはすげぇクくる男だ。……空気読む時はちゃんと読むのになぁ。 「雅也、イクの?イカねぇの?」  今朝の事を思い出しながら、次は絶対に流されないよう構えつつ髪の毛を掴んで上を向かせる。  涙目ではふはふと息を漏らしながら欲しそうなその表情は気持ち悪いはずなのにイイ顔だと思う俺もかなり毒されてると思う。  どんだけチンコが好きなんだ、そんなに咥えたいか? 「んぁぅ……っ、イ、かない……!」 「あ?イカねぇの?」  これはちょっと予想外だ。  ここまで来ればイキたいイカせてとか言うと思ったんだけどな。  なんて、そんな考えが王司に伝わってしまったのか、 「智志くんの、ナカで、イキたい……です、」 「……っ」  言葉を変えればセックスが出来ると思ったのか?  最近の王司 雅也は、調子に乗っているのかもしれない……あ、元からか。 「ふっ、バカか、雅也は」 「ぁ、うん……おれ、」  期待した瞳にまた笑いそうになりながら、俺は王司のモノを踏んでいた足を浮かせて胸元にグッと、膝を入れ込むような蹴りを入れた。  王司はこの蹴りを予想していたのかどうなのか、正直わからないが……反応的にこれは、こう来ると思ってなさそうだな。 「あぅ……ん、ケホッんっ」 「悪ぃな雅也。このあと平三と木下で用事があるんだ。夕飯は食堂。じゃあな」  咳き込む王司に力などなく、簡単にすり抜けられた。  その最後、頭にキスして平三と木下に会うべく部屋から出る俺。 「――あっぶねぇ……ちゃんと回避、出来たな……!」  犠牲は必要だが、しばらくはこんな感じで避けてみようか。  

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