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第18話 変化した匂い
うわわ。僕は何を言ってるんだ。
先輩もほらポカンてなってる。穴があったら入りたい!
でも先輩はポカンのあと、すっごく嬉しそうな顔で笑ってくれた。
「嬉しい。ちゃんと自分の意志で言ってくれたんだ。本当に僕のこと好きなんだ」
「当たり前ですよ。ずっと大好きだったんです。もう隠しません」
「ああ!日野くん!ほんと?本当に好きなんだ。嬉しい!番 になってくれるんだ!」
「……っ、はい、よろしくお願いします……」
「あぁ……嬉しい……ねえ、晶馬って呼んでいい?僕のことは李玖 って呼んで」
「ええっ、無理です、そんな恐れ多い……」
「よ・ん・で。お願い晶馬」
「ううっ」
このパターン知ってる。呼ばないと許してもらえないやつだ。
「り、李玖先輩……無理、やっぱ無理っ」
「ええーっ。ま、お互い徐々にね」
何この羞恥プレイ……
「ねえ、晶馬くん、もう体は辛くないよね。頭痛や吐き気も大丈夫?」
そういえば、あれ程酷かった吐き気も発熱もなくなっていた。思考も霧が晴れてさっぱりしている。強いて言えば漁火のような微かな熱が、体の奥にくすぶってるかな。この熱は先輩の…わわ、だめだ、考えちゃダメ!
「だ、大丈夫です。先輩にもらったお陰で良くなりました!」
「せ ん ぱ い ?」
「!」
「……ねえ、晶馬、僕きみに何かあげたかなあ。教えて。一体何をあげたって?」
何って、ナニで……だから……あれだよ……
僕は真っ赤になった。
いやだー、この人無理やり言わせようとしてる!エロおやじだ!!
「りくさん李玖さんごめんなさいぃ」
「あはははは。なんでそんなに可愛いの。僕、ドSに目覚めそうだよ」
涙目の僕の額にキスの嵐が降ってきた。からかわれてる……
先輩は僕をギュッと抱きしめて息を大きく吸い込んだ。
「晶馬くん、君の匂いが変わったよ。今までと違う。僕と出逢った頃の爽やかな匂いに、甘い果実の匂いが混じったような……とてもいい匂いがする……ずっと嗅いでいたい……」
「そうなんですか?」
腕の辺りを嗅いでみたけど自分では分からなかった。
でも先輩からもそんな感じの凄くいい匂いがしてる。
李玖先輩が僕を抱きしめて髪に鼻を埋めているので、僕は目の前の胸元の匂いを大きく吸い込む。
ああ、いい匂い……うっとりする……
しばらくお互いの匂いに酔いしれていると、髪の中の、耳のすぐそばから甘い声が聞こえ、背筋にゾクゾクと痺れが走った。
「ねえ、しよっか。たまらない。凄く抱きたい」
「……っ、はい。……抱いてください」
恥ずかしかったけど、僕も凄くたまらない気持ちになっていた。
これがフェロモンなのかぁ。
高村さんの時はねっとり甘く濃厚で、すぐに酔って朦朧となったので分からなかったな。
先輩は僕にそっと唇を合わせるだけのキスをしてすぐに離し、僕の様子をうかがうように目を合わせた。僕はうっとりとなり、
「先輩……」
甘えるような声が出てしまい、先輩は蕩けるように笑った。
顔が近づいてきてまた唇が重なった。先輩の唇は柔らかく、しっとりしていた。歯列を割り、舌が捕らえられた。
「んぅ、う……」
先輩の舌は弾力があって力強かった。僕の舌を絡めとり、歯の裏を撫で、上顎をくすぐって糸を引いて口から出て行った。僕はキスだけで息が上がって、顔が赤くなった。
繋がった唾液の糸を舌で舐め取る先輩の色気と、獲物を狙う獰猛な眼差しにゴクリと唾を飲み込む。
離れた先輩の唇は耳朶を甘噛みし、そのまま噛み跡のある首筋を舐め、喰み、吸った。
「痛くない?首、結構強く噛んじゃったけど」
「……っ、……っ、い、痛くないです、そこ駄目、ひゃ、」
こそばゆいような電気が走ったような感じがして、ビクッ、ビクッと背がのけ反った。。
「ふふ、晶馬くん、敏感」
ベッドに仰向けに押し倒され、上から先輩が覆いかぶさってきた。陰になった先輩の瞳が光を反射して光って見える。
「あ、あの、先輩、僕汚れてるからお風呂入りたい」
「まだ言うかい?全部舐めて綺麗にしてあげるってば」
それを聞いて先輩が来た時のことを思い出す。
「ち、違、いや違わないけどそうじゃなくって、ヒャッ」
「往生際が悪い。後で一緒に入るから今は抱かせて」
「ぅわあ、ああぁ」
首の真ん中あたりを吸われ、鎖骨を下り、胸の頂を舐められて大きな声が出た。
「うわっ、わ、わ」
「…晶馬、胸初めて?キスも初めてって言ってたし、お尻の穴以外は全部されたことないの?」
「は、はい。高村さんは男は専門外らしくて、下のモノを握るのも嫌って」
「そうなんだ。じゃあ、何でも初体験か。ふふ、頑張らなくっちゃ」
「えっ、もう充分です、お手柔らかにお願いします」
焦ってお願いしたけど笑って流されてしまった。えええ。
先輩は指で左胸を捏ね、右胸を唇で舐め、甘噛みを繰り返した。
「っ、……っ、んんっ」
胸が尖った感じがして、腰が甘く痺れた。先輩がいつの間にか勃っていた下をそっと握り、上下に緩く扱いた。
「!……っ、」
ビクッとなり、思わず握られた手を押さえていた。
「晶馬、怖いの?」
「……」
怖いのだろうか。あれだけ何度もヒートを経験してきたのに。
初めてもたらされる感覚が怖い?それもあるけど、少し違う気がする。
溺れる快楽が怖い?制御できなくなるから?そうなのかな。
違う、分かった。快楽そのものじゃなくて、それで嬌態を演じ、先輩に軽蔑された目を向けられるのが怖いんだ。
――高村さんの時みたいに
「三回目」
急に降ってきた声にハッとして上を向くと、先輩の冷たい瞳が僕を見ていた。
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