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第1話

ご両親が自動車事故にあったらしい。すぐに病院へ行こう。車で送るから―― 高校に入学して間もないある時――(つむぐ)は授業中、沈痛な面持ちの担任教師に廊下へ呼ばれてそう伝えられた。 なにが起きたのかよく理解できないまま、その教師に連れられ、紡は市の外れにある大きな病院へ行った。付き添ってくれている教師に付いて廊下を歩いて行くその先に、自分と同じように教師らしい女性に付き添われ、連れられて来ていた中一の弟、(まもる)の姿がある。近くへ行くと、弟はひどく心細げな表情で紡の顔を見た。 やがて病室の扉が開けられた。白衣の医師が現れて紡達に重い口調で話し始める。 残念です、医師はそう言った。ここに運ばれた時にはもう、二人とも手の施しようがなかった、と。紡は話している医師の顔を見てはいたが、現実感がない。この人は何を言っているのだろう――じゃあ自分たちの父さんと母さんは――死んだということなのか? その後安置室へ案内された。弟と二人、顔に白い布のかけられた両親の亡骸の前に立つ。本当に?これはほんとに……いつも通り今朝別れたばかりの両親なんだろうか? 隣で守が声を上げて泣きだした。 慰めないと。紡はそう思ったが、身体が動かなかった。 事故を検分した警察官もそこに来ていた。彼の話だと、両親の乗った軽トラックは隣の市へ向かう山の中を走る県道で、カーブを曲がりきれずガードレールを突き破って崖下へ転落したそうだ。どうしてそんなにスピードを出していたのか。父はいつも……安全運転だったはずなのに。 警官の話を聞く間に紡は漸く動けるようになり、震える手で、傍らで泣いている弟の手を握った。

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