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第21話

霧原は紡の身体で様々なことを試み、どういった行為にどのように反応するかをつぶさに観察していた。弟のことがあるから、何をさせても逃げ出さず耐えるに違いない、そう感じた霧原の勘は当たっていたのだ。 紡は意外に芯が強く、泣きはするが、見苦しく思うほどの取り乱し方をする事はなく、霧原の要求を従順に受け入れ、尽くす――じっくりと教え育てている成果だろう。ここまでは順調だ。今後はもう少し違う事を試し、資質を見極めたい。そうして紡を、心身共に完璧に自分好みに仕立て上げるのだ。その頃にはもう、紡は霧原なしでは生きられなくなっているはずだ―― ある日の夕食時、守が、明日部活の友人たちをうちへ呼んでもいいですか?と尋ねてきた。守は今、中学で空手部に所属している。 「俺んちじゃないから……騒がしくしたらまずいから、駄目って言ったんだけど――」 霧原の邸宅はこの辺りでも大きくて目立つ。中学生たちは中が見てみたいと言うのだという。 「もちろんかまわないよ」 霧原が笑って答える。 「君のうちじゃないって――そんな悲しいこと言わないで欲しいなあ。自分ちと思ってくれていいんだから」 「うーん、でもそう言っとかないと、あいつら平気で暴れるから……」 「じゃあ君は友達のうちに行った時、暴れてるのかい?」 目を丸くして尋ねる霧原に 「うん……えへへ……」 と守がきまり悪げに笑ったのを見て紡も思わず笑い、釘をさした。 「あきれた奴だなぁ……ひとんちでなんか壊したりしてないだろうな?」 「そんなことしないよお」 守は抗議し、霧原に向き直って礼を言った。 「ありがとうございます。明日、部活終わったら連れてきます」 守は嬉しそうだ――紡も、友人と仲良く楽しそうにやっているらしい弟の笑顔を見て、もういじめられていないんだと再確認し、嬉しかった。 ……その時紡は、この事が自分に災難を呼び込むとは――思いもしなかった……

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