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第25話

「今日、授業が終わる頃車で迎えに行くから、駅へは行かず門の所でそのまま待っていなさい」 朝霧原が紡に言った。連れていきたい所があるから、と。以前であれば、何の用なのか、どこへ連れて行かれるのか、と不安を覚えたものだったが、紡はただぼんやりと機械的に、はいと返事して頷いただけだった。 何も感じられない――霧原さんが、感じていいと許す場合以外には。 霧原は言った通り授業の後迎えに来て、紡を車へ乗せた。 着いたのは海の近くのリゾートマンションだった。ホテルのように豪華で大きい。裏は砂浜のビーチに続いていて、プールもある。 「今は泳ぐには寒いからね、夏になったらまた連れてきてあげる」 霧原は言いながら紡を上階にある一室へと連れて行った。 ノックをし、ドアを開けると、中に品良さげな初老の紳士と、紡と同じくらいの年格好の、やはり同じように高校の制服を着た少年がいた。 「おお、その子が――君の傑作品か」 紳士が言う。霧原に求められている気がして紡は彼に向かい、深くお辞儀した。 「さすが躾ができているね。ほら、お前もご挨拶しなさい」 紳士の後ろに少し隠れるようにして立っていた少年が、二人に向かってぺこりと頭を下げる。 「また新しい子ですか」 霧原が尋ねた。 「そうなんだ。私は飽きっぽくてね。前の子は相応の謝礼を渡して解放してやった」 「そうですか。辻井さんから離れて――今後満足できるものですかね?」 「まあ大丈夫だろう。さほど反応の強くない子だったし。だから飽きてしまったというのもあってね」 何の話だろう……紡はぼんやりと聞いていた。 「ねえ……早くやろ」 向かいに立つ少年が、甘えるように紳士の腰に手を回して囁いた。目が潤んでいる。 「全くお前は……ここに連れてきただけでそう興奮するもんじゃない」 紳士はたしなめたがどことなく嬉しそうだ。 「だってここ……すごいんだもん」 少年がさらに甘えた声を出す。なんだろう。何のことなんだろう。 紡が黙ったまま考えていると、少年が手を引いた。 「ね、ここ初めて?見せたげる。すごいんだから」 彼は紡の腕に柔らかく自分の腕を絡ませた。女の子みたいな事するんだな、と紡は思った。そう言えば、顔立ちも仕草も女性めいていて、随分と可愛い雰囲気の子だ。 彼に手を引かれて紡は隣の部屋へ入った。窓に豪華なカーテンの下げられた広い部屋で、中央には大きくて重そうなベッドがある。天蓋が付いていて、そこから――革ベルトが付いた細い鎖が何本も下がっていた。 紡はぎょっとして目を見開いた。あれって―― 「怖がらなくていい。君には使わないから」 いつの間にか背後にいた霧原が囁く。 「今日は、ということだがね」 続いて寝室へ来た紳士が言った。

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