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第30話

虐待されてる?尋ねられて紡は思わず息を呑んだ。虐待?あれってもしかして――虐待なんだろうか? 霧原に受けた行為が突然目の前にいくつも蘇って血の気が引いた。いきなり呼吸が浅く、早くなり、胸が苦しくなった。紡は腰掛けていたソファに手を突いて必死に体を支えたが、耐えきれなくなり、横向きにソファへ倒れこんだ。息が――できない。 必死に空気を得ようと口を開くがうまくいかない。瀬島が紡の脇へ跳んできた。 「しっかり!大丈夫だ、落ち着いて!死にやしない。過呼吸だと思うから、おじさんが数えるのに合わせて長くゆっくり息を吐くんだぞ。ほら、いーち……にーい……」 瀬島は紡の背をゆっくりさすりながら数を数えてくれた。それに合わせて深呼吸を繰り返すうち、紡は落ち着いてきて普通に息ができるようになった。

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