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第39話

霧原は、紡の変化に気付いていた。成績もほんのわずかだが落ちてきているようだ。 しかしはっきりとした理由がわからない。普段の紡の生活に変わったところは特になく、いつも通り霧原の命に従順に従っている。しかし――何かが違う。 霧原に責められ穿(つらぬ)かれている時、紡は良く感じてたまらない風に身を(よじ)り、立て続けに甘い声を上げる――その反応は霧原の満足のいくものではあったが、以前ほど自分――霧原を見ていないような――そんな気がしてならない。 怯え方も足りない。紡は常に全身の神経を霧原の一挙手一投足に集中させ、霧原の、ほんのわずかな声音(こわね)の変化にも縮み上がるような様子を見せていた。霧原はそれを愛らしく思い、気に入っていたのだ。だがこのところの紡は、そこまで敏感な様子を見せない。嬲りすぎて慣れてしまった可能性もあるが―― 気に入らんな、と霧原は思った。 紡は身も心もその全てが、この自分のためだけに在らねばならない。あの子はそのために手をかけ、金をかけて作り上げているのだし、慎重に育ててきたはずなのだが―― そういえば、と霧原は思い当たった。 紡は時々、級友の家へ勉強会をすると言って出かけていく。その友人は霧原も認めた名門の家の息子だったが、ひどく甘やかされているとも聞く。もしかすると彼になにかおかしな遊び――例えば異性との――そんなものを教わっている可能性はないだろうか? 霧原は、その友人の家を訪ねる時の紡の行動を、人を雇って探らせることにした――

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