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第53話
霧原はホテルへ着くと足早にロビーを横切り、エレベーターへ乗り込んで5階へ上がった。
5階の廊下へ出た所で、前方に、見覚えのある男がこちらへ背を向けて歩いていくのに気づき、はっとして霧原は壁へ身体を寄せた――あれは……瀬島ではないか!
では紡は――来栖と逃げたのではなく、瀬島と?来栖は瀬島に協力したのか?
きっとそうなのだろう。来栖は気弱そうで大胆なことをやるタイプではない。紡もそうだ。彼だってこんな風に自分を裏切れるはずがないのだから――瀬島が強要したに違いない。
あのいかにも乱暴そうな男ならやりかねない。紡にしゃぶらせて、それが気に入ったのだ――怒りが湧き上がる。瀬島――僕が手をかけてあそこまで完成に近づけたあの子を、横からさらう気か!?
思った通り瀬島は505号室の前で立ち止まり、解錠している。霧原はバッグから用意してきたスタンガンを取り出して構え、素早く瀬島の背後へ近づいた。瀬島がドアを開けて中へ足を踏み入れると同時に、スタンガンをぐっと彼の首に押し当てる。
その場で昏倒した瀬島の身体を霧原は部屋の中へ引きずり込み、ドアを閉めた。瀬島を素早く後ろ手にし、これも用意してあった手錠を嵌め、ロープで両脚を縛り上げた――来栖一人なら楽に倒す自信があったが、万が一を考えて準備しておいた。それが良かった。
霧原がその瀬島の上着を掴み、更に引きずって部屋へ入ると、そこにはベッドがあり、その上に――紡が両手足を縛り付けられ、拘束されているのが見えた。
「おや」
霧原は目を細めた。あれは――紡がねだってしてもらったのだろうか?それとも瀬島がムリヤリに?どちらにしても好都合だ。これは楽しめる。
霧原は瀬島の身体を壁へもたれかけさせると、ベッドの上の紡に近づいた。目隠しと猿ぐつわで顔が殆ど覆われている。着衣のままだが脱がせる楽しみがあるからその方がいい。僕がこの子を存分に嬲って煽り、悶えさせるところを、瀬島にたっぷりと見せつけてやろう――
霧原はベッドに片膝を付いて身を乗り出し、紡の首筋に触れた。その指で服の上から身体をゆっくりと撫で回し、性器を柔らかく揉みしだいた。ン、というくぐもった声を発して紡が身を捩る。霧原は猿ぐつわに手をかけて押し下げた。この子のよがる声は最高なのだ。口をふさいでは楽しめないではないか――
紡が甘えるように唇を開いた。
「ん……僕、もう待てないよ……早くしてェ……」
それを聞いて霧原はギョッとした。紡の声ではない!?
慌てて顔を半分覆っている目隠しを取り払うと、そこへ現れたのは――全く知らない少年の顔だった。
霧原は一瞬、混乱してその顔を見つめた。着ているものは確かに自分が買い与えた紡の衣服だ。体格や髪型もそっくりだ。しかし――!?
「ぎゃあッ!誰だよテメエ!?何しやがる!?さ……触んじゃねえよ!誰か!助けてェ!」
少年が金切り声を上げ、騒ぎ始めた。霧原は面食らい、状況が全く理解できないままホテルの部屋を飛び出した――
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