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第54話

授業を終えた紡が帰宅すると、玄関前に来栖が立って待っていた。 「紡くん」 彼は片手を上げ、陽気に挨拶した。 「来栖先生!?どうしたんですか?早いですね」 紡が驚いて尋ねると、来栖は微笑んで答えた。 「霧原さんに頼まれてね。今日は図書館で勉強しよう。霧原さん、これから家で大事な用があるんだって。それが済むまで君には僕と外で待っててほしいそうだよ?守くんの子守も頼まれてるから、迎えに行こう」 こんなこと初めてだな、紡は内心首を傾げた。でも、いいや、先生と図書館行けるなら。だってうちで二人きりで勉強してたら……霧原さんが見ているから……またあれをやらされるもの……。 少し俯いた紡の肩に、来栖がそっと手を添えた。 守の学校に行き、部活を終えて出てきたところだった弟をつかまえ、三人は図書館へ行った。紡たちが勉強する間、守はDVDを借り出してきて視聴覚コーナーで映画を観ていた。 予定の分の勉強を終えると来栖はバーガーショップで二人に軽食をおごってくれると言った。瀬島を訪ねられなくなってから、そういう物を食べられる機会までも失っていた紡は、嬉しくなって遠慮せずにご馳走になった。向かい合って三人でハンバーガーやポテトをぱくついていると、来栖のスマホがポケットで振動した。 「ああ、どうやら終わったみたいだ。さて、じゃあ、帰ろうか。送っていくね」 立ちあがった来栖について二人は店を出た。 霧原の邸宅のある住宅街へ帰り着くとなんだか騒がしい――うちの前にパトカーが停まっている……?兄弟二人が顔を見合わせると、家の中から警官が現れ、霧原が逮捕された、と告げた――

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