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Ⅳ 兄上①
『右弦 二時の方角より、敵艦接近』
「退路を開くつもりか。所詮は素人だな」
レーダーが鳴った。
「Achtung , Feuer !」
艦砲が火を噴いた。
連続射撃に敵艦が黒煙を噴き上げて、星の海に沈んでいく。
(ここは……)
司令室
指揮をとっているのはヴァールハイト中将だ。
「気がついたか。艦内に侵入した敵は掃討した。義勇軍を名乗ろうとも、戦闘においては市民の素人集団だ。間もなく決着がつくだろう」
(戦艦ロイバルトを扇の要にして、鶴翼 の陣か)
包囲は間もなく完成する。
司令室の椅子からヴァールハイトが右手をかざした。
(降伏勧告は受け入れなかったか)
敗戦が濃厚なこの状況でなぜ、まだ戦い続ける?
義勇軍………
ガッ
不意に足首を掴まれた。
撃たれた敵兵だ。
まだ生きている。だが傷が深い。これでは、もう……
「お前さえ殺せたらッ」
(命の果てに怨み言か)
「お前さえいなくなれば地球は助かる。ゆえに暗殺を」
(何を言っている?)
「お前が生きたのなら、助ける義務がある」
生きる命を、
死んだ命を生かすために。
生き続けたいなら。
生き続ける居場所を。
「どういう意味だッ?」
「Achtung, Feuer!」
宇宙が火の海に染まった。ロイバルト艦砲が敵を撃つ。
轟音を上げて、落ちていく船は夕陽のようだ。
「なぜ撃たせる?」
声が低くうめいた。仮面の下で……
「これでは、まるで……」
『道』をつくらせた
『そうだよ』
サインコード00
強制通信だ。
スクリーンが映した影は……
『久し振りだね、レイ』
体温が急激に色を失う。青ざめていくのが自分でもはっきりと分かる。
(俺を皇帝に売ったお前は……)
『地方領主の身分から、中央政府大臣まで成り上がったよ。位は伯爵だ』
唇を噛み締めた。
震えを悟られまいと……
『帰っておいで、レイ。お兄様の元に……』
金髪の下で孔雀色の眼が微笑んだ。
『私を選ぶんだ。そうでなければ……』
地球に核を放つ
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