12 / 20
Ⅳ 兄上②
地方領主の子として生まれた俺はΩだった。
Ωである俺は蔑まれ、戸籍を剥奪された。
戸籍のない俺にとって、画面に映っている男は、兄であって兄ではない。
『お前には苦労をかけたね。すまないと思っている。お前を蔑む一族は全員粛清したよ。これからは、私と幸せに暮らそう』
「今更、何をッ」
『そうだね。お前を悪虐帝に献上したのは私だ。だが、それも今日の再会を信じての事だよ。幼いお前には、まだ分からないだろうが、幸せになるためには権力が要るんだよ。権力で、私はお前から幸せを奪う者達の粛清を果たした』
私は……
『権力の使い方を知っている』
嘘だ。
兄上は嘘つきだ。
「だったらどうして、こんなに多くの血が流れるんだァァァァーッ!!」
『今夜の血が、世界に流れる最期の日だと約束しよう』
「信じない」
『運命のαにたぶらかされたか』
「そんなもの、俺にはいない」
『そうかい。ならば、好都合。私がお前を娶 るよ』
兄上が、俺を……
『今、この瞬間から皇帝陛下の夫は我、マティアス・ダルトだ』
ともだちにシェアしよう!