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Ⅳ 兄上②

地方領主の子として生まれた俺はΩだった。 Ωである俺は蔑まれ、戸籍を剥奪された。 戸籍のない俺にとって、画面に映っている男は、兄であって兄ではない。 『お前には苦労をかけたね。すまないと思っている。お前を蔑む一族は全員粛清したよ。これからは、私と幸せに暮らそう』 「今更、何をッ」 『そうだね。お前を悪虐帝に献上したのは私だ。だが、それも今日の再会を信じての事だよ。幼いお前には、まだ分からないだろうが、幸せになるためには権力が要るんだよ。権力で、私はお前から幸せを奪う者達の粛清を果たした』 私は…… 『権力の使い方を知っている』 嘘だ。 兄上は嘘つきだ。 「だったらどうして、こんなに多くの血が流れるんだァァァァーッ!!」 『今夜の血が、世界に流れる最期の日だと約束しよう』 「信じない」 『運命のαにたぶらかされたか』 「そんなもの、俺にはいない」 『そうかい。ならば、好都合。私がお前を(めと)るよ』 兄上が、俺を…… 『今、この瞬間から皇帝陛下の夫は我、マティアス・ダルトだ』

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