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第4話

「俺は避けてなんかいない。避けていたのは種だろ?」 「まさか気付いてないの?」 「なにを……?」  種はクスリと笑って実の首に腕を巻き付けた。 「お兄ちゃんはオレをただの弟として見てないってこと」 「何を言って……」  そんなはずない。弟をそんな目でみるはずが。  少しワガママなところも弟だからこそ許せたし、そんなところが可愛いとも思えた。全て弟だからだ。  決して疚しい気持ちがあったわけではない。 「番だなんてなれないに決まってるだろ。兄弟なんだ。弟をそんなふうに見れないよ」  両親の離婚で心細くなって変なことを考えてしまっただけだ。少し時をおいたらきっと馬鹿なことを言ったと反省するだろう。 「ふうん……そっか。なら、それでいいよ」  もっと粘られるかと思ったが種はサラッと聞き分けて実から離れた。 「実ちゃんが番になれないなら、他を見つけなきゃね」 「他って……」 「だってオレ、Ωだもん。番がほしいのは当然でしょ?」 「……そうかもしれないけど」  けれど簡単に番が見つかるとは限らない。番は一生ものだ。一度、番えば離れることは出来ない。自分の弟の番が碌でもない相手だったら何としてでも反対するつもりだ。 「心配しなくてもちゃんとした人を選ぶよ、兄さん」  実の心を読んだみたいに種は微苦笑して言った。  その日から、種は「実ちゃん」とは呼ばなくなり、「兄さん」と呼ぶようになった。

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