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第12話

 心配だから家まで送ると言う永徳は何度断ってもマンションまでついて来た。 「永徳、ここだから」 「ここに住んでるの?翔ってお金持ち?」 マンションの入口で溜息混じりで伝える俺にすごいと呟きながらマンションを見上げた。 俺じゃなくて佑真さんが、だけどな。 「お前まさか部屋までついて来る気じゃないよな」 「え?だめ?」 そんなでかい図体で首を傾げられても可愛くはないぞ永徳。 可愛くはないが大型犬が寂しそうにしているようで罪悪感が沸いてくる。 「だめっていうか本当にもう大丈夫だから」 「でも……」 このやり取りもう何度目だよ。気付けばマンションの前じゃないか。 「あのなぁ――」 「翔?」 いい加減にしてくれと永徳に言いかけた時、透き通るような声が背後から聞こえた。 「佑真さん」 振り返ると怪訝そうな顔で俺と永徳を見る佑真さんがいた。 何この普段はすれ違っているのに、こうゆう時だけ合うみたいなドラマや漫画みたいな展開は。 ドラマや漫画みたいな波乱の展開ではないけどな。 「知り合い?」 「五十嵐佑真さん、俺が居候させてもらってる人だよ。佑真さん、俺の友達で福井永徳」 佑真さんをじっと見ながら訊ねる永徳に答えてゆっくりと歩いて来た佑真さんにも永徳を紹介した。 「大学の?」 俺に訊ねる佑真さんにうんと頷く。 「翔が面倒かけてない?」 「え、いや、そんな、そんなことないです」 佑真さんの微笑みに永徳が顔を赤くしながら答えている。 何を照れているんだ永徳、お前もイケメンに耐性がないのか。 佑真さんも佑真さんだよ永徳に愛想を振りまく必要なんかないんだよ。 「帰りましょう、佑真さん」 訳も分からず苛立ちながら佑真さんの服を引っ張った。 「あ、俺も帰ります。翔また学校で」 失礼しますと頭を下げて永徳は走っていった。

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