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第13話

「よかったのか」 「別にあいつが勝手について来ただけですから」 玄関で靴を脱ぎながらおさまらない苛立ちに口調が強くなる。 「何を怒っているんだ」 そんなこと聞かれてもわからない。ただもやもやしてしょうがない。 答えようがなくて風呂に入ってきますと浴室に直行した。 風呂から出てリビングに行くと佑真さんがソファで本を読んでいた。 「何かあったのか?」 キッチンで水を飲む俺に佑真さんの優しい声が聞こえた。 「何もないですよ」 あったと言えばあったけど、自分でもわからない事をどう説明していいかわからない。 心配をかけるだけなら言わない方がいい。 「あいつ、でかかったな」 思い出したのか佑真さんの口元に笑みが広がる。 「永徳でしょ、最初見たとき人間じゃないと思いましたよ」 「お前それは言い過ぎだろ」 楽しそうに笑う佑真さんを見て俺も嬉しくなった。 こんな風に笑う佑真さんを見るのは久しぶりな気がする。 「あいつたまにうざいけど、何か大型犬みたいなんですよねぇ」 「翔は動物に好かれそうだからな。」 楽しそうに笑う佑真さんを見ながらソファに身体を沈めた。 「佑真さん……」 「あいつ、いい奴そうだから仲良くしろよ」 佑真さんの腕を掴む俺の手をそっとはずして頭を一度撫でると困ったように笑った。 その表情に寂しさが込み上げてくる。 ソファで寝るなよと言うと佑真さんは部屋に行ってしまった。 俺も部屋に戻りベッドに倒れ込んだ。 俺の好きは佑真さんを困らせるのかな。でもだからって諦める事なんてできない。 スマホで過呼吸を検索しながら溜息が漏らした。 「精神的ストレスと身体的ストレスか……」 検索結果を小さな声で読み上げた。 今日の原因は身体的の方かもなぁ。最近寝不足で疲れていた自覚はある。 でも急に過呼吸になると焦るし周りにも迷惑かけそうで困る。 気は進まないけど病院に行ってみたほうがいいのかな。 今は考えても仕方ない。不安になったり考えすぎるのもよくないって書いていたしな。 スマホを机において布団に潜り込むと疲れた身体はあっという間に睡魔に襲われすぐに眠ってしまった。

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