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第21話

「翔?」 俺をソファに座らせ水を取りにキッチンに向かおうとする佑真さんの手を掴むと驚いたような、少し困った表情をする。 どうしていつもそんな顔をするのかそんな佑真さんの気持ちが知りたい。 「佑真さん、俺の事もう興味ないですか?」 たとえそうだとしても俺の気持ちは変わらないけど聞かずにはいられなかった。 「は?お前、何言って……」 「佑真さんには迷惑かもしれませんけど、それでも俺は佑真さんが好きです」 佑真さんの困った顔を見たくなくて俯いたまま話す俺の隣で溜息をつく佑真さんにやっぱり迷惑なのかと泣きそうになってしまう。 「迷惑だなんて思った事ないって何度も言っているだろう」 「だけど!俺が触ると困った顔するじゃないですかっ」 「触るとってお前……」 佑真さんの呆れたような声に泣き出しそうな気持ちを抑え、こうなったら言いたいことを言ってやると半ばやけくそな気持ちになる。 「佑真さんの困った顔見て俺が寂しくなるってわかってます!?」 「翔、落ち着けって熱あるんだろ」 大きな声を出したせいで痛みを感じた傷口に眉をしかめる俺を佑真さんが優しく抱き寄せた。 「好きでもないのに優しくなんかしないで下さい」 抱きしめられた腕の中は心地いいのに、誤魔化されている気がして佑真さんの胸を押して離れた。 「好きだよ」 透き通るような優しい声のその言葉を何も考えずただ信じられればどんなに楽なんだろう。 「佑真さんの好きと俺の好きは違います」 佑真さんの真剣な眼差しを見つめ返しはっきりと口にした。 「俺の気持ちを勝手に決めるな」 「だって……!佑真さんは俺に何もしないじゃないですか!」 佑真さんの怒りを含んだ声に不安になりながらそれでも止まらなかった。 「翔」 苛立つ俺を落ち着かせるように静かに俺の名前を呼ぶ佑真さんの声にも不安は消えてくれない。 「俺はもっと佑真さんに触れたい」 「翔……」 「佑真さんの髪も手も目も身体も全部、全部に触れて佑真さんを感じたい」 「おい、翔」 驚いたように少し目を見開いて俺の言葉を止めようとする佑真さんにあふれ出す俺の気持ちは止められなかった。 「俺は佑真さんの全てが欲しい……!」 「ちょっと待て、翔」 何を待つんだ。待ったって佑真さんはまた困った顔するだけだろう。 そんなのはもう嫌だ。 「待ちません!俺は佑真さんにも俺を欲しいって思ってもらいたいって――」 「お前もう、ちょっと黙れ」 そう言いながら俺の背中に回した手を引き寄せ俺の唇を塞いだ。 突然の事に驚き目を見開いた俺の視界が佑真さんの綺麗な顔でいっぱいになる。 「お前が欲しいと思っている……翔」 驚く俺に優しく微笑んだ佑真さんがちゅっと音を立てもう一度軽く口づけた。 「で、でも……」 あんなにあふれて止まらなかった俺の言葉が何も出てこない。 ずるい……佑真さんにキスなんかされたら俺の思考が止まってしまうのは当たり前だ。 「うん?」 耳まで熱くなり目を合わせられない俺に聞き返す佑真さんの声が楽しそうだ。 忘れてた、このイケメンこういう事がさらっとできるんだった。 「じゃあどうして困った顔するんですか……」 ずっと気になっていて、でも聞けなかった事を恐る恐る聞いてみる。 「初めてなんだよ。誰と付き合っても相手の気持ちが気になる事なんてなかった。だけどお前の事は気になりすぎて困る」 困惑したように髪をかきあげる佑真さんの照れたような表情におもわず笑みが浮かんでしまう。 それにしても今まで付き合った相手の気持ちが気にならなかったって……このイケメンろくでもねぇな。 それでも俺は特別だと言われているようで、今までの不安が嘘みたいに消えていく。 「佑真さん大好きです」 「ああ、俺も翔が好きだ」 嬉しくて緩む顔が制御できない俺に優しい笑顔が返ってきた。

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