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第27話
「それにしても……仕方がないとはいえお前の中の水沢の大きさに腹が立つな」
眉間に皺を寄せ不機嫌そうな声をしている佑真さんの俺を抱きしめる手はそれでも優しかった。
佑真さんに抱かれたいと思っても、誰かに恐怖を感じても、俺の中に兄さんが現れて俺を苦しめる。
もしかしたら俺のトラウマは兄さんにされた事じゃなくて兄さんそのものなのかもれしない。
亡霊のように現れる兄さんから逃れられないのは俺が弱いからなんだろうか。
「佑真さんでいっぱいになればいいのに……」
佑真さんの膝に頭を乗せ腰に手を回して呟いた。
「翔……」
「俺の中を佑真さんでいっぱいにして」
しがみつくように佑真さんの腰に回した手に力を込めた。
「お前それ、わざとじゃないよな」
「それって?」
上半身を起こし首を傾げる俺に佑真さんが大きく溜息をつく。
「お前を抱きたいと思っている俺に煽るような事を言うな。理性が保てなくなる」
困ったように頭を掻く佑真さんにそういう対象として意識されていることが嬉しくて笑いながら佑真さんの胸に飛び込んだ。
「俺、佑真さんになら何されたっていいですよ」
「お前なぁ……」
俺を受け止める佑真さんの脱力したような声がおかしくて笑いを抑える事ができなかった。
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