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第35話

 静まり返るリビングで何をどう考えればいいのかもわからず、どうしようだけが俺の頭を支配していた。 月も見えない窓の外の暗闇が俺を不安にさせていく。 あれから随分時間がたっても帰ってこない佑真さんにもう帰ってこないんじゃないかと不安が募っていく。 出て行った時の佑真さんの冷たい表情を思い出すと怖くて足元から震えだしそうで勢いよくソファから立ち上がった。 「違う、佑真さんは兄さんとは違う」 言い聞かせるように呟いた言葉に突然冷たくなった兄さんを思い出して苦しくなる。 兄さんが俺を嫌悪するようになって水沢の家に俺の居場所はどこにもなくなってしまった。 佑真さんに嫌われてしまったらここにも俺の居場所はなくなってしまう。 佑真さんのいない部屋の空気が重く息苦しくてここにいたくない。 早くなる鼓動に震えだしそうな手を強く握りしめ逃げるように部屋を飛び出した。  家を飛び出した所で俺に行く場所なんかどこにもないとあらためて思い知らされる。 突きつけられる現実から逃げるようにあてもなく足早に歩き出した。  駅に着くと電車が到着したばかりなのか、改札を出て家路を急ぐ人々の中、俺だけが取り残されているような気分になる。 慎吾の家にでも行こうとLINEを送るとすぐに来たバイト中という短い返信を眺めながら慎吾のバイト先が居酒屋だった事を思い出していた。 食欲はないけど、酔って嫌な事全部忘れられたらいいのにと考えながら電車に乗り込んだ。

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