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第40話
目を覚まし身体を起こそうとした俺を襲う強烈な頭痛に息が詰まり固まったように動けなくなる。
こめかみを押さえ目だけを動かして周りを確認すると隣で佑真さんが眠っている。
ここ……佑真さんの部屋……?昨日は確か慎吾のバイト先で飲んでて……。
ガンガンと鳴り響くような頭痛に記憶が掻き消されるようで思い出せない。
でも佑真さんは怒っていたはずじゃ……。
俺に向けられていた冷たい目は閉じていて、怒っているのかもわからない。
どうして佑真さんといるのかも思い出せない俺に昨日の佑真さんの冷たい表情が蘇り怖くなる。
「起きたのか」
ベッドから抜け出そうとする俺に目を覚ました佑真さんの声が聞こえる。
「佑真さん俺……迷惑かけましたか……」
佑真さんの顔を見るのが怖くて、背を向けたまま痛む頭を押さえながらベッドに腰掛けた。
「俺より江角の方が――二日酔いか?」
ふっと笑う佑真さんの声は優しいのに振り向く勇気が俺にはない。
「すいません、俺、憶えてなくて……」
小さく話す俺を背後から抱きしめる佑真さんに身体がぴくりと跳ね、強張ってしまう。
「不安にさせて悪かった」
「怒ってないんですか……?」
耳元で聞こえた透き通るような優しい声に小さく訊ねる俺を抱きしめる腕に力がこもった。
「あー……怒っていた、というより……」
珍しく口ごもる佑真さんを振り向き見上げると、きまりが悪そうな顔は赤く染まり、いつも涼しげな目元は戸惑うように視線を泳がせている。
「佑真さん……?」
初めてみる佑真さんの表情に、あんなに痛かった頭痛も忘れてしまうほどだ。
「お前の事になると冷静じゃいられなくなるんだよ。お前が悪いわけじゃないとわかっていても嫉妬してしまうくらいにはな」
「嫉妬?佑真さんが?」
信じられないというように佑真さんを見つめる俺に苦笑を返した。
「俺も驚いている。誰と付き合っても嫉妬なんてした事もなかったし、俺はあまり人に興味がなくて、そういうものかと思っていたんだけどな」
「そう、なんですか……」
いつも俺の事を考えてくれている佑真さんが人に興味がないなんて意外だ。
そんな佑真さんが嫉妬してくれるなんて俺はそれだけ好かれているって事なのか、そう考えると自然に頬が緩んでしまう。
「嬉しそうだな」
佑真さんの顔が近付き柔らかい唇が俺の唇に軽く触れる。ほんの数秒の短いキスに物足りなさを感じてしまう。
「佑真さん、俺、だめなとこいっぱいあるし、佑真さんに嫌な思いさせる事もあると思うんですけど、それでも俺……佑真さんのそばに……いたい」
段々小さな声になっていく俺を包み込むような眼差しで佑真さんが見つめていた。
「俺だってだめな所はたくさんある。それに今は翔がいなくなることが一番怖い。不安な事があるなら言えよ、酔っぱらったお前もかわいかったけどな?」
ふっと口元に笑みを浮かべた佑真さんがこれからは俺の前だけにしておけよと付け足した。
「かわっ……!」
か、かわいいって……酔っぱらった俺は何をしでかしたんだ。
だめだ、全然思い出せない。気になるけど、知りたくないような……。
とりあえず慎吾には迷惑かけて悪かったとLINEを送ると『酒を飲んで俺の所に来るのだけはやめてくれ』と返ってきた。
本当に俺はどんな醜態を晒したんだ……。
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