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第42話

 少し肌寒さを感じるようになってきた頃、後頭部の傷もすっかりよくなり夏休みをのんびりと過ごしていた。 「来月の18日どこかへ出かけるか」 足の間に俺を座らせ、包み込むように抱きしめる佑真さんの唇が軽く首筋に触れるだけで心臓が騒ぎ出してしまう。 「どこかって……っ」 「ん~?お前誕生日だろ、その頃には時間も作れそうだからな」 「知ってたんですか?」 俺の肩に頭を乗せている佑真さんを驚いて見ると顔がぼやけてしまうほど近い。そんな俺の唇に優しくキスをしてもちろんと微笑んだ。 最近の佑真さんは距離が近いっていうか、スキンシップが激しい。酔って迷惑をかけたあの日から毎日一緒に寝ているし、目が覚めると抱きしめられている。 テレビを見る時は膝の上か足の間に俺を座らせるし、それ以外の時も隣にいろと言う。 俺のパーソナルスペースは佑真さんでいっぱいだ。軽いキスならもう何度したかわからない。 それはすごく幸せで、嬉しいんだけど……全然慣れることはなくて恥ずかしくなるし心臓は鳴りっぱなしだ。 「翔が行きたい所に行こう」 優しく微笑む佑真さんに本当に何でこんなイケメンが俺なんかを好きなんだろうかと首を捻りたくなってしまう。 顔はまぁ普通?だと思うけど……性格はわりと面倒臭い方だと思うんだよな。俺なら俺と付き合おうとはちょっと思わない。 「翔?」 眉間に皺を寄せる俺の頬に手を添え佑真さんの顔が近付き目が合うとやっぱり恥ずかしくなって目を閉じる。 重なる佑真さんの柔らかい唇の感触が気持ちよくて何も考えられなくなっていく。佑真さんとのキスは好きが溢れてくるようで幸せな気持ちになる。 「はっ……んっ」 いつもより長いキスに息をしようと少し開いた口に佑真さんの舌がそっと入ってくる。 俺の舌に絡みつくように動く佑真さんの舌に背中がざわついて力が抜けてしまう。 咥内からゆっくり去って行く佑真さんの舌を名残惜しく感じながら乱れた呼吸を整える俺の口端から零れる唾液を親指でそっと拭うと佑真さんは満足そうに目を細めた。 「俺……佑真さんといられるならどこでもいい……」 「俺もお前の誕生日に一緒にいられるなら嬉しい」 佑真さんの首に腕を回し、まだ熱の残る吐息を漏らす俺に優しく微笑んだ。

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