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第49話

 引き摺られるように連れていかれたホテルのベッドに投げ飛ばされようやく解放された俺の手首は冷たく感覚がない。 「聞かせてもらおうか、どうしてお前が五十嵐を知っている?」 ネクタイを緩め訊ねてはいるけど、俺には答えないという選択肢なんてない。 あの頃から何も変わらない兄さんに逆らうなんて俺にはできないのだと思い知る。 「大学の先輩……」 「それで?その先輩とどんな関係なんだ?」 多分兄さんは俺と佑真さんの関係に気付いているはずだ。 気付いていてそれでも俺に言わせようとしている。 「答えられないのか?」 俯く俺の髪は乱暴に掴み上げられ、冷たく見下ろす兄さんの目に捕らわれてしまう。 「俺……が、佑真さんを好きなだけ……」 「恋人、だろう?他人に関心を持たないあいつを、ましてや男のお前がどうやって落とした?」 俺を見下したままの兄さんの頬に歪んだ笑いが浮かんでいた。 「お前が俺に抱かれていた事を五十嵐は知っているのか?」 「兄さん……」 もうやめてと目で訴えてみても俺の意思など関係ないと拒絶する兄さんの冷たい眼差しに小さく頷くしかなかった。 「はっ、あの五十嵐が知っていてお前を恋人にしているのか」 兄さんの口元に浮かぶ氷のような嘲笑には侮蔑が含まれていた。 「佑真さんはすごい人だよ!兄さんなんかより……ずっと……!」 俺がどれだけ蔑まされようがどうでもいい、だけど佑真さんが馬鹿にされるのだけは嫌だ。 「何……だと!」 「痛っ……」 顔色を変えた兄さんに力任せに突き飛ばされた身体はベッドの上で大きく跳ねた。 「そんなに五十嵐が好きか?」 「佑真さんは……誰よりも大事な人だ!」 「その大事な人はお前が俺に抱かれたと知ったらどんな顔をするんだろうな?」 冷たく笑う兄さんの言葉に背筋から冷たいものが流れた。

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