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第51話

 気が付くと兄さんの姿はなく、重い身体を起こした俺の内腿を伝い落ちる兄さんの欲望が抱かれた事実を告げてくる。 こみ上げる吐き気を抑え、のろのろと浴室へ向かい頭からシャワーを浴びた。 「痛っ……」 流れ落ちる水滴にしみる傷口に現実なんだと実感が湧いてきて涙が溢れた。 「ふっ……うああああ」 抑えられない感情に声を上げて泣いた。 俺にはもう微笑む佑真さんが見えないんだ……。  ホテルを出た俺に白みはじめた空は眩しく見え、暗い気持ちを抱えたまま歩き出した。 どこに行けばいいんだろう……帰りたい場所は佑真さんの所しかない。 だけど佑真さんに会うのが怖い。兄さんは必ず俺を抱いたと佑真さんに伝えるだろう。 もしかしたらもう伝えているのかもしれない。 たとえ兄さんが話さなかったとしても俺には隠しておく事なんてできない……できないけど知られたくない。 兄さんが言ったようにあっさり切り捨てられてしまうんだろうか、永徳を関係ないと突き放したように……。

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