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第61話

 あれから佑真さんと永徳の話はしていない。佑真さんも聞かなかったし、行くなと言われても永徳を放っておけない気持ちは変わらない。 本当なら初めて好きな人と過ごせる誕生日に喜び、気持ちは晴れやかなはずだ。 窓の外の澄んだ秋晴れを眺めながら、このまま佑真さんと過ごしたいなと考えている自分に苦笑が漏れる。 永徳に会いに行くと決めたのは俺自身なのに。 「やっぱり行くのか?」 声をかける事を躊躇う俺に背を向けたまま訊ねる佑真さんの声は静かだった。 「佑真さん、あの、俺なるべく早く帰ってくるので、そしたら丸いケーキ、一緒に食べて下さい!」 思い切って言ってから振り向かない佑真さんの背中を見ると肩を震わせて笑っているようだった。 「佑真さん……?」 何を笑っているんだこのイケメンは。首を傾げる俺に笑いながら近づくと額にキスを落として優しく俺を抱きしめた。 「電話しろよ。迎えに行ってやるから」 見上げた佑真さんのいつもと変わらない優しい眼差しが嬉しくて近付くその眼差しに目を閉じ、触れ合う唇に幸せを感じていた。 「誕生日おめでとう、翔」 「ありがとうございます」 微笑む佑真さんの胸に飛び込み背中に回した腕に力を込めながら佑真さんのそばにいられる幸せを噛み締めていた。

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