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第64話【微R-18】

 薬のせいなのか重く力の入らない両手で永徳を押し返そうとする俺に、だめだよと冷たく笑いながら外したネクタイで俺の両手を縛りあげ押さえつけると永徳の顔が近付いてきた。 避けるように背けた頬を強く掴まれると嫌でも口は開き、はっはっと浅い呼吸が漏れる。 そんな俺を見てわずかに口角をあげた永徳の唇が重なりぬるりと舌が入ってくる。 嫌だ……気持ち悪い!佑真さん以外となんて嫌だ。 「んうっ……!!」 絡めとろうと蠢く永徳の舌から逃れようとする俺の舌は永徳の中へと吸い込まれる。 がりっと強く噛まれ電流に貫かれたような痛みが走り血の味が咥内に広がった。 「翔が悪いんだよ……」 口端を伝う血が混じる唾液を拭い、首筋から鎖骨へとシャツのボタンを外しながら永徳は唇を押し当てていく。 『全部お前のせいだ!お前が悪いんだからな!』 兄さんの怒鳴る声が永徳の言葉と重なる。 永徳を怖いと感じていたのは永徳の中にあの頃の兄さんが見えたからなのか。 いくら俺がもういいんだと思っても、あの頃の凍り付くような冷たい兄さんが消えてくれない。 慎吾の言っていた俺の直感ってこれか……。 慎吾、佑真さんごめん、いつだって俺は大事なことに後から気付くんだ。 「やめ……こんなこと……したって……意味ない……だろっ……」 おさまってきた過呼吸に俺は必死で絞り出すように声を出した。 「そんなことわかってる!」 悲痛な声で叫んだ永徳は俺の肩に力まかせに噛みついた。 「いっ……ああ!!」 肩の痛みと頭痛で意識が朦朧とする中、兄さんと同じだと感じていた。 苛立つまま俺を責めながら傷つける兄さんも辛そうな顔をしていた気がする。 今ならわかる。 自分じゃどうにもならない、やり場のない気持ちをどこに持っていけばいいのかわからないんだ。

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